第134話 野末の岸

やがて、見覚えのある湖水に出た。

気づかないうちに、アマリリスの普段の行動範囲の内側に入り込んでいたのだ。

ここからなら、臨海実験所までの道が分かる。



とうとう、終わってしまった。

最後の一歩を踏むのが惜しくて、アマリリスはしばらく、にわか雨の露をまとい、低い太陽の光に輝く岸辺の草原を見つめていた。


やがて湖水の向こう側の岸に、オオカミが現れた。

ベガかデネブかアルタイル。

3兄弟のうちの2頭と、アフロジオンもいる。

こちらを見て、水面を隔てて臭いを嗅ぎとろうとするかのように、鼻先を上げて空気を嗅いだ。


しかし、警戒心の強い兄弟2頭も、粗暴で他者に無関心なアフロジオンも、こちらにやってくる気配はない。

しばらく待ってみたが、サンスポットは出てこなかった。


アマリリスは軽くため息をついて振り返り、山を背後に立つアマロックを見た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る