第121話 魔物の目
「じゃぁまた明日」
アマロックは行きかけた。
アマリリスは無言で、上着の裾を引っ張った。
「? 何」
その言葉がひどく冷たく感じられ、心底傷ついた。
「・・・
一緒にいて。
寒くて死んじゃう」
アマロックはじっとアマリリスを見つめた。
アマリリスも負けじとアマロックを見返した。
アマロックの背後の深い藍色の空には、わずかな残照が映り込んだちぎれ雲が浮かび、アマロックの姿は半ばシルエットになって見える。
そうすると、金色のその瞳は余計に人間ばなれして見えた。
魔族の目、心の底の知れない、無慈悲な獣の目だ。
このまま立ち去ってしまうだろうか。
ひょっとするとアマロックは、実はオオカミよりもずっと恐ろしい姿に変身して、
夜な夜な生き血を求めてトワトワトじゅうを飛び回っている魔物なのかもしれない。
それを邪魔したら、怒って殺されてしまうだろうか。
けれどそれならもうそれで。。。
どっちみち、このまま朝まで生きていられるとは思えない。
あぁ、何てバカだったんだろう。
一体どうして魔族なんか信じたんだろう。
悲痛な思いでアマロックを見上げていたとき、
右脇腹でなにかごそごそ動く感じがした。
「ちょっ、どこ触って」
「あー、なるほど。」
アマロックは上着の下の肌着と肌を軽く撫でてから、めくれた衣服を直し、ついておいで、と言ってアマリリスの手を取った。
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