第100話 キュムロニバス#2
手足は思うように動かず、雪渓の上で幾度となく、もどかしく滑った。
息が上がり、心臓が破裂しそうなのも構わず、アマリリスは尾根の上まで駆け上がった。
視界が大きく開けた。
西の空、あかがね色と、深い藤色、炭色の影に塗り分けられた雲の峰に、太陽が沈もうとしていた。
雲下に広がる本物の山々は、とりとめもない隆起と沈降を繰り返して、どこまでも続いている。
まるで大地の大海原のようなその光景の中、何体ものキュムロニバスが点々と散らばり、
海原をわたる船のように、光りの射す方角へ、ゆっくりと進んでいた。
いつのまにか、アマロックが斜面を登ってきて、隣に立っていた。
やがて太陽が雲の峰に隠れ、あたりが薄暮の
「さてと、そろそろメシにするかい。」
アマリリスは無言でうなずき、アマロックのあとについて、谷間の沼の方へ下っていった。
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