第76話 この石はどちらで?

やがてペントステモンはクリプトメリアの視線に気づき、すこし赤面して言った。


「コンボルブルス教授にお聞きした通りです。

閃緑岩質の巨晶花崗岩ですね。

表面から見える範囲でも10個以上、青色コンドライトの斑晶が確認できる他、内部に晶洞を作出しているようです。

このような岩石を見るのは私達も初めてです、実に興味深い。

一体どのような変成過程で形成されたものか、議論していた次第でして。」


「それはそれは。。。

時に、コンボルブルスのやつは元気にやっとりますか。」


「はい、すこぶるお達者で。

あーと、クリプトメリア先生によろしくと、お言付けを預かっております。すみません。

お噂はかねがね、色々と伺っております。」


ペントステモンはそう言って、また赤面した。


「きっとろくでもない、酒席での醜態ばかりでしたろう。」


「いえいえ、とんでもございません、大変参考になる武勇伝ばかりで、、、」


しきりに恐縮する慇懃な男が、可笑しくもあり、次第にうっとおしくもなってきた。


「あのぅ、時に、、、」


「――はい。」


自分でもどきっとするほど冷たい声がした。

一方、ペントステモンは意外に気にする様子なく訊ねてきた。


「このサンプルは、どちらで採取されましたか?」



さて、どう答えたものだろう。

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