第15話 考えたところで。
アマリリスは基本的に楽天家で、直情的だが、物事に対するこだわりが薄く、
本当は利発な娘ではあったが、何かを深く突き詰めて考えるたちでもなかった。
父親が生きていないとは考えたくなかったが、これ以上探し続けるのは、もう会えないことを確認するためにそうしているようで、かえって辛かった。
考えてみればこの1年でようやく、ゆっくりと落ち着ける場所にいた。
トワトワトは、絶句するほど何もないところだが、かわりに、明日の生命を心配したり、次に移し替えられる場所のことで気を揉んだりする必要もない。
「好きなだけここにいなさい。
君たちさえよければ、ずっとここに住めばいい。
トワトワトは、今でも魔物がうろついているような原始の世界だが、なかなか悪くない所だよ。
本土に戻ったところで、今は世の中がメチャクチャだ。
我々も、何年か後にはマグノリアに戻る。
さすがに戦争も終わっているだろう、
その時に、一緒に帰ればいいじゃないか。」
アマリリスは丁重に感謝の言葉を述べた上で、でも、(ヘリアンサスと)二人でこれからのことを考える、いつまでも好意に甘えるわけにはいから、と答えた。
クリプトメリアは優しげにうなづいて、それについても何も言わなかった。
とはいえ、考えたところで自分達は難民、そして未成年。
どこにも行くあてなんてなかった。
クリプトメリア父娘はとても親切で、温かかった。
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