第9話 父の名にかけて

アマロックはあの時と同じように、

ふてぶてしい、あるじに対して親しもうという姿勢のまるで感じられない態度で、3人がけのソファーを一人でほぼ占領している。


「というわけでだ、」


向かい合ったソファーの上で、クリプトメリア博士は居ずまいを正し、並んで腰かけているアマリリスとヘリアンサスを手で示した。


「このバーリシュナ・アマリリス・ウェルウィチアと、ガスパジン・ヘリアンサス・ウェルウィチアは、ウチの大事なお客様だ。

当分滞在して頂くことになるから、くれぐれも粗相はならん。

指一本触れようものなら、お前を山に叩き帰して、

2度とこの施設のドアはくぐらせんからそう思え。」


「わかった。」


「わかったなら、お前の父の名にかけて誓え」


「ちかいだとか、おれに人間の流儀を押しつけるな。

大体、おれのおやじに名前なんてあるのか?」


「それもそうだったな」


アマリリスは吹き出しそうになった。


食堂から、ファーベルがお茶のセットを乗せた盆を手に現れた。


「お父さんも、そういう言い方ないじゃない。

アマロックが、何か悪いことしたことある?」


「うーん。。。

まぁ、お前の前ではな。」


「仲良くしてくれるわよね? アマロック。

わたし、お客さんがきてくれて楽しいの。

アマリリスお姉ちゃんとヘリアンサス君に、嫌な気持ちにさせることしちゃダメよ。

わかった??」


ファーベルがアマロックの横に腰を下ろす。

長椅子に半ばねそべっていたアマロックは、クリプトメリア博士の言葉にはそっぽを向いたままだったというのに、ファーベルの顔を見上げて答えた。


「わかった。おまえが望むならね。

この人達に危害は加えないよ。」

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