第6話 どうするの?

告げられた能力を反芻してみたが、大人になって使えそうなものはなく、実はうなだれる。

「能力把握できたな?動物の声はもう聞けてるから、他の能力も使ってみるか?」

実は首を横にふる。

猫はにらんできた。

「なんで?」

50を過ぎてこんな勢いで叱られるとは思わなかった。しかも相手は黒猫。正直ここまでファンタジーを受け入れてきたが、こちらの気持ち全無視なことに

温厚な実も苛立ちを覚えた。

「正直に申しますと、今の生活に必要のない能力だからです」

苛立ったところで、丁寧な言葉は変わらない。

「動物の声が聞こえたり、風と話せたり、空を飛べたところで、特にメリットを感じないのです」

猫は体をゴロゴロとさせていた。

「メリットか。通勤電車に乗らなくても空を飛んでいけるぞ」

「あなた、正気ですか?あなたほどの方が気づかないはずないですよね?

人間が空を飛んでいたら、少なくとも大騒ぎです。空にも範囲があり、その範囲を越せばひどければ攻撃されますよね?酷くなくても、SNSやら怪しいテレビ番組のネタにされて」

実の長台詞に、猫は少し驚いたようで、背中を丸め、尻尾をピンとのばし、ぴょんっと飛んだ。

「ふむ。だが、風と話をできると雨とか回避できるぞ。うまくコミュニケーションを取れれば、台風を他にやることだってできる」

実は静かにいう。

「確かにそれはすごいですね」

猫は実が食いついたことに喜んで喉を鳴らした。

「それってどうやるんですか?」

「風よー!って話しかけるだけだ!」

猫は胸を張って実に伝えるが、実は先程の食い付きよりも、随分低いテンションになっている。

「あなたたちの認識がどうだかわからないですけど、僕、もう50歳なんです。外で猫に話しかけるとか

風よーとか言ってるの他の人に見られたらどうなると思います?」

猫はわからないのか、実に腹を見せてきた。多分降参のポーズだ。

「そんなことしていたら、最悪通報されます。通報されなくても、ご近所さんにあそこの家の旦那さん頭がおかしくなったと噂され、うちは近所の笑い者になる。仕事まで失うかもしれない。

猫はコロコロ転がりながら伝える。

「修行をすれば心で念じるだけで、動物と会話もできるし、風も操れる。どうする?」

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