第3話 マジか。
いつもより早いが、家を出ることにした。
「ちょっとちょっとちょっと踏まないでくれる??」
どこかから、聞きなれない声がする。
「なになになに?なんなのー?ちょっといつもより、早くない-?」
耳に響くきんきんしたこえで、
またも声がする。二つの声とも違う声だかしゃべり方はすごく似ていて、とても忙しない。
「確かにいつもより随分早いよね。こんなに早く出るならもうちょっとあとにすればよかった」
辺りを見回しても誰もいないのに、声ばかりが聞こえてくる。
変な夢を見たことと言い、仕事しすぎで、疲れているのかもしれない。
ばっと靴の下を見ると二匹の蟻が歩いている。
「何かこっちみてきてるんですけど!」
「何なの?何なの?何なの?」
……まさかの蟻の方からその声が聞こえてくる。
頭を二回降るが、間違いなく、蟻は話していた。
まさかと思う反面、時間は待ってくれない。
早めに出たはずだったが、玄関先で謎の時間に捕らわれたせいで、急がないといつもの電車に間に合わない。
小走りで歩きながらも散歩中の犬や塀の上の猫や電線の雀やごみ置き場のカラスの言葉を無意識に拾っている。
テレビの音のように慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
どうにかこうにかして、満員電車に乗り込む。
あの夢は本当のことなのではないかと実は受け入れはじめていた。
その瞬間、色んな能力をくれるといった言葉を急に思い出した。
もしかして瞬間移動があるんじゃないかと、目を閉じてみる。会社につけ会社につけと念じてみる。
静かに目を開けると、そこはいつもの混雑した電車内だった。
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