第2話 これは夢なの?

周りの明るさに思わず目を開いた。

まばゆいひかりの中で、断崖絶壁にたっている。

何でこんなところにいるのだっけと

考えていたら、頭の上から声が聞こえた。

「ささきみのる、ちょっと待たせてごめんなぁ」

声は中性的だが、どこかで聞いたことのある声だった。

「やっと君の望み叶えてあげられるぞ、

やっと君の番だ」

よく考えてみたらこのやり取りを随分前にしたことがある。

あれは、40年前のことだ。

毎年毎年、誕生日と七夕とクリスマスの日に、

願い事を願っていた。

小さな子供が考えがちな、超能力を手に入れたいとかそういう類いの。

10歳になったとき、今と同じようなすごく大きな光に包まれて、声をかけられたのだ。

「ささきみのる、君の願いは毎年毎年聞かせてもらった!君の願いを叶えよう。ただし、君の願いが叶うのは少し先の未来だ。必ず君の願いは叶える」

そして子供の実は少し先の未来を待つことにしたのだ。

一瞬にして40年前の出来事と今の出来事が一致した。「やっと思い出したか?君の願いは、風と話をする能力を手に入れる、動物と話せる…あとは」

少し先の未来と言われていたのに、

5年待ってもそんな能力は開花しなかった。

そして実はそのやり取りを夢だと思うことにしたのだ。

それが何故今?

夢の中のこととはいえ、丁寧な言葉で返す。

「大変ありがたいお話ですが、辞退させてください」

大音量が急にひびく。

「なんで??」

「もう、僕も50になります」

「だから??君たちの寿命で考えてもまだ

30年から40年はその能力を使えるのに?」

「と言いましても、その」

声の主は納得する空気を出していなかった。

「まぁ思慮深いなぁ、君は。それではこちらで適当に組み合わせてプレゼントするね」

こちらが言葉を伝えるより先に勝手に結論づけて、

そのあと、声は聞こえなくなり、今までにないくらい大きな光に包まれる。



ゴホゴホと咳き込みながら目を覚ました。

額には脂汗をかいている。

なんという悪夢だ。

話の着地点がないうえに、

得たいの知れないものをみてしまった。

まだ、目を覚ますには早い時間だが、もう目を瞑る気分になれなかったので、起きることにした。

リビングに向かうと珍しく、妻が目を覚ましていた。

「おはよ」

付き合った当初から、何故、実と付き合ってくれたのか、実も実の友人も疑問に思うほどの美人な妻が朝の挨拶をしてくる。

「おはよう」

と返すと、ほんのり微笑みながら妻は言葉を紡いだ。

「誕生日おめでとう」

クールなタイプと怖がられたりしているが、妻の中身は意外と可愛らしい。

「ありがとう」

少し前まで微笑んでいた妻が怪訝な目でこちらをみてきた。

「何か調子悪そうだけど大丈夫?」

顔色だけで何かばれている。

「夢見が悪くてね。変な夢をみたんだ」

先程までの夢の話をすると、リアリストの妻は怪訝な顔をしていた。

とりあえず妻に話を聞いてもらうと随分心は落ち着いてきた。

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