第15話 パーティー
体の変化やマスター、岩井さんの正体、紫黒さんの登場などあったものの、
それからは平穏な日々を過ごしていた。
私の体もその後、変化はなかった。
そんな中、翡翠から
「瑠璃、来週会社のパーティーがある。瑠璃にも婚約者として来てほしいんだけど」
「私がそんな会社のパーティーなんて、出ていいの?」
「瑠璃は俺の婚約者なんだから、出てほしい。皆に紹介したいんだ」
「うん、分かった。でも、私なにも分からないから、一緒にいてね」
「もちろん、それに当日は瑠璃の護衛に鴇トキも呼んだから」
「え!鴇くん、久しぶりだね。嬉しい!」
「は~、俺より鴇かよ。」
「そんなことないよ。私の好きなのは翡翠、鴇くんは弟なの」
「まぁ、いいか。パーティー頼むな」
「はい!」
パーティーなんて今まで行ったこともないし、ドキドキするけど婚約者なのだから
今後も時々あるかもしれない。
頑張らないと・・・。
パーティー当日になった。
私は今、鏡に映る自分の姿にビックリしていた。
朝から菖蒲さんがマンションに来て、翡翠が止めるのも聞かず連れ出された。
連れてこられたのは、パーティーが行われる有名な高級ホテル。
そのまま、エステに連行!?され頭から足の先までピカピカに磨きあげられた。
それから、メイクとヘアーセット。
できたところで、先日翡翠に選んでもらった瑠璃色のドレスに袖をとおした。
「仕上げは翡翠にしてもらいましょうね」
菖蒲さんがそう言うと翡翠が後ろから綺麗なダイヤのネックレスを首につけて
くれた。
「綺麗だ瑠璃。」
そう言うと右手の薬指に、いつもネックレスにしていた指輪を嵌めてそこにキス
を落とした。
「ありがとう、翡翠。菖蒲さん。」
そう言ってから、鏡を見たのだった。
鏡の中の私は、白銀の髪をアップにし目もエメラルドグリーンのまま
綺麗にお化粧をしてもらった姿は、別人のように綺麗になった自分だった。
パーティー会場の扉が開き、翡翠の腕に手を絡ませ二人並んで歩く。
翡翠には羨望の眼差しが向けられ、隣の私には探るような訝し気な眼差しが
向けられる。
思わず翡翠の腕を掴む手に力が入る。
「瑠璃、大丈夫だ。俺がいるだろ」
そんな私の気持ちを落ち着かせるように、頭上から優しい眼差しと声が落とされる。
「うん、ありがとう」
真直ぐ前を見て、お父さんと菖蒲さんが立つ壇上に向かった。
私達が壇上に上がると、お父さんが挨拶した。
「今日は、私共フォキシーコーポレーションの創立パーティーに参加頂き
ありがとうございます。
皆様のおかげでここまで事業を進めて 来ることができました。
本日は、皆様への感謝をこのような形で開催いたいました。
また、本日は私共の息子、翡翠の婚約披露も兼ねております。
若い二人ですが、どうぞ暖かい目で見守っていただければと思っております。」
お父さんの挨拶が終わると、立食での歓談となった。
壇上から降りると、
「瑠璃様、お久しぶりです。」
「鴇くん!久しぶり、珊瑚さんも元気にしてる?」
「母さんは元気ですよ。瑠璃様に会いたいといっております。」
「私もあいたいなぁ。翡翠、近いうちにあっちにも行こう。」
「あぁ、そうだな。行ってみるか」
「母さんも喜びます。」
久しぶりの再会に私の頬も上がりっぱなしだった。
そんな私を翡翠は嬉しそうに見てくれていた。
パーティーでは挨拶におわれた。
翡翠は私を婚約者として皆に紹介してくれて、慣れないながらも婚約者として
挨拶をした。
そんな中、私達に声を掛ける親子がいた。
「翡翠君!」
「あ、これは湯川社長。今日はお出で頂きありがとうございます。」
現れたのは恰幅のいい年配の男の人と、綺麗に着飾ったスレンダーな女の人だった。
「桜、今日は翡翠さんに会いたくて、パパに頼んで連れてきてもらったの」
そういうと桜さんという女の人は、私の反対側に周り翡翠の腕を掴んだ
エッっと思っていると、上目遣いに翡翠を見ながら
「桜、翡翠さんと結婚したくてパパにお願いしてたのに・・・」
「こらこら桜、翡翠君には婚約者さんがいるんだから辞めないか」
「だって~、翡翠さん今度、桜の相談にのってくれませんか?」
「そうですね、考えておきます。では、湯川社長ゆっくり楽しんで行ってください。
私達はこれで失礼します。」
「うちの桜がすまないね~。では、またゆっくり会おう」
そういうと親子は離れて行った。
「もう、さっきのは何!」
「湯川財閥の社長とお嬢さんの桜さんだ、嫌な思いをさせてゴメンな」
「翡翠も、直ぐ手を払えば良かったのに・・・」
「あのお嬢様は、厄介なんだよ。
今までも何度か会社に押しかけられて逃げてたんだ。
仕事の絡みもあるから、無下にもできなくてな」
「そうなんだ・・・でも、あんなに翡翠に触るなんてちょっとヤダ」
「ヤキモチ焼いてくれるのか?」
「もう!」
翡翠はニコニコしながら、私をからかっていた。
翡翠にその気がなくても、あのお嬢様には良い気はしなかった。
「翡翠、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「あぁ、気をつけろよ」
「もう、子供じゃないんだから大丈夫です」
会場を出て、お手洗いに向かう、用を足して出るとそこにはさっきの桜さんが
立っていた。
「あなた、本当に翡翠さんと婚約したの?」
「はい、そうですが」
「あなたと翡翠さんじゃ釣り合わないでしょ。
会社のマイナスにはなってもプラスにはならないわ。
その点、私なら会社の助けになるの。
あなた、邪魔よ。いなくなってくれない。」
「なんで、そんな言われないといけないんですか?」
「元々は私が婚約者になる予定だったのを、あなたが急に割り込んできたの。
ホント、身の程知らずな子ね」
「私は何と言われようと、翡翠の側から離れませんから」
バシッ!
は!?私の左頬がジンジンする。
「いい、早く翡翠さんの側から離れなさい。
じゃないと、タダじゃすまないんだから」
そう言って、桜さんはその場を去っていった。
鏡を見ると、左の頬が赤く染まっていて、思わず目から涙がこぼれてきた。
少し気持ちを落ち着かせて、お手洗いから出ると翡翠が立っていた。
「遅いぞ。・・おい、その頬はどうした?」
「・・・殴られた。」
「ハッ!誰にやられた!」
「桜さんていう人に・・・翡翠と別れろって・・・」
「許せね・・・。瑠璃、今日はもう帰ろう。」
「うん、ゴメン。私も帰りたい」
翡翠は鴇君を呼んで先に帰ることを伝えると、呼んでいた車に私を乗せマンションに戻った。
「湯川の桜さんは、どうにかするから心配するな」
「・・・うん」
「なんか他にも心配することがあるのか?」
「桜さんは、私は会社にプラスにならないマイナスだって・・・」
「馬鹿だな・・。会社は大丈夫だ。俺は、瑠璃と一緒にいたくて妖狐にまで
させたんだぞ。俺を信じろ。」
「うん、そうだよね。」
「ただ、あの桜さんは何かしてくるかもしれないから、くれぐれも用心してほしい。
心配なら、鴇をつけるか?」
「そこまでは大丈夫だよ。気をつけるから、心配しないで」
「分かった。でも、何かあれば直ぐ連絡しろよ」
「うん」
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