第4話 ヒスイの瞳との再会
最悪な実習も終わり明日から夏休み
一度ゆっくりしようと考え、デュパンのバイトも2週間休みを頂いた。
「明日からるーちゃんは休みかぁ~、どっか行くの?」
「どこにも行きませんよ。今回はゆっくり休もうと思って・・」
「そっか~、そういうのも良いかもね」
「はい」
バイトも終わり家への道を歩く・・・
「あ、あの公園だ・・・」
目の前には翡翠と出会った公園、視線は自然と翡翠に会った楓の木に向いてしまう。
「エッ!嘘・・・」
私の目には楓の木の下にいる白い狐を捉えていた。
翡翠はゆっくりと公園を横切り道路に出ようとしていた。
すると後ろから車の音が近づいてくるのが聞こえた。
“翡翠、車に気づいてないの!?”
考えるよりも体が先に動いていた・・・
ドン!! ガシャン! ドサッ! キキキー!
痛みが体中にはしる中、悲しそうに私を見つめている深いエメラルドグリーンの
翡翠の瞳と目が合った。
「・・あ、良かった・・・。大丈夫・・だったのね・・・。」
微笑みながら言ったような気がしたが、意識はすいこまれるように暗い闇の中に
沈んでいった。
瑠璃が意識を失うと側には腰まである白髪の男がいた。
瑠璃は翡翠を庇うように車の前に出て、轢かれてしまったのだ、ひき逃げだった。
白髪の男は瑠璃の状態を確認すると顔を顰めた。
男は己の指先を噛むと呼吸も浅く意識のない瑠璃の口元に指先をもっていき指先から滴る紅い血をポタポタと口に落とした。
瑠璃の喉がコクッと動き、滴り落ちた紅い血をその体に取り込むと先程より呼吸が
安定してきたようだった。
白髪の男はその様子を確認するとホッと息をつき、瑠璃を抱き抱え公園の楓の木
まで歩いていった。
男が楓の木に右手をかざすとそこにポッカリと黒い穴があらわれた。
男は歩みを進め楓の木に開いた黒い穴の中に瑠璃と共に入って行った。
二人の体が穴に入ると、一瞬にして穴は閉じ、その場には何事もなかったかの
ように楓の木があるだけだった。
不思議な夢を見ていた。
幼い頃に事故で亡くなったはずの両親と綺麗な花畑の中にいた
「瑠璃、大きくなったわね。大人になった瑠璃と会えるなんて
こんな嬉しい事はないわ」
「ママ・・・」
「瑠璃がこんなに素敵な女の子になってパパは嬉しいよ」
「パパ・・・」
「もっとゆっくり一緒にいたいが、そうもいかないようだ。
パパとママは瑠璃の側にいてやれないが、どうやら瑠璃を任せられる人が
表れてくれたみたいだ。
瑠璃、これから何があろうとも自分の心に素直に生きなさい。
そして、心にいる人を信じなさい。
幸せになるんだよ・・・」
「エッ、どういうこと・・・」
「瑠璃、私達とはここでお別れなの。
瑠璃には聞こえるかしら、あなたの名前を呼ぶ声が・・・。」
そう言われ耳をすますと、確かに私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる
その声は、悲しそうで私の胸をギュッとさせた
初めて聞く声のはずなのに、何故か懐かしく感じる
「瑠璃、あの光の中に向かっていきなさい。
私達はいつも瑠璃を見ているから、また、いつか会いましょう。
元気でね。愛してるわ、瑠璃・・・」
「パパ、ママ、私も愛してる。またいつか会おうね・・・」
私は両親と離れたくないと思いながらも名前を呼ぶ声に導かれるように
光の中に進んでいった。
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