第54話 入会フィーバー!?モテ期がきた気分?

——これ、サギじゃないよね?——-


プロフィールが整い次第、私が婚活サイトに載った途端に申し込みが殺到したので、喜ぶより先に疑ってしまう。


お相手を見つけるため重い腰をあげ検索サイトを開いたら、申し込みがたくさんきていたのでビックリした。

自分が探すよりも先に検索されたのは、受け身なタイプの私にはありがたい。

…のだけど…

今までモテたことがなかったのと、警戒しやすい性格のため、素直に喜べない。

全部で14件申し込みがきていたのが信じられなかった。



——これ、永沢ナガサワさんだったら、全員と会ってみると言いそうだよな——



最近は永沢ナガサワ藤子フジコと話す機会が増えてきていて、彼女がおとなしそうな外見とは裏腹に目的のために積極的に行動できる人物と判り、意外に感じてる。


多分私には全員と会うのは精神的なエネルギー的にムリ。

なので、一人一人プロフィールをみることに。


当然ながらざっと見たかんじでは、イケメンと呼べるような人は一人もいない。

自分だって美人じゃない上に若くはないから、人のことが言えない。

面食いなほうではないので、それは問題なかったけれど…。



——いくらなんでも、おじいさんはイヤだなぁ…——



60歳以上が5人もいた、私は枯れ専ではないし、なにより年上すぎは苦手だったので、パスすることにした。

中には60歳以上に見えないほど若々しい外見を持った人もいたのだけど、年上すぎることには変わらない。

年齢で弾くのもおこがましい気もしたけど、

14人全員と会う気力はない。

残り9人のうち誰がいいのか絞れる気がしなかったので、永沢ナガサワ藤子フジコに相談することにした。



翌朝、あらかじめ一緒にお昼休憩のタイミングがかぶるよう社内連絡メールしたところ、即OKの返事をもらった。



「私だったら全員とお会いするけどね」



やっぱり。

でも、そこから先のセリフは予想外だった。



「60歳以上断るなんて、もったいないじゃなーい!しかも全員まだ現役で働いていたり、それなりにお金には困らない方々でしょう?」



他人事だからそんなこと言えるのかと思いきや、



「あ、私ね、実は年上好きなのよね、現にダンナ様になった人もだいぶ年上だし」



そうなのか…。

そういえば彼女の結婚相手は、十くらい上だと噂に聞いたような気がする…。



「あの、永沢ナガサワさんだったら、この中から選ぶならどなたにしますか?」




私は自宅から重たい思いをして持参したパソコンを開いて見せた。

…よくよく考えたら他人の個人的な情報を第三者に見せてしまうのはアウトだろうとわかってはいたけれど、そんなの気にしてられなかった。

永沢ナガサワ藤子フジコは私が持ち込んだパソコンを覗こうともせずに、



「私だったら絞らずに全員会ってみるかな」



これまたやっぱりな回答。



「え、でも全員と会う気力がないんですけど」



私は正直に伝える。

するとそれまで優しげな口調だった永沢ナガサワ藤子フジコの物言いが突然厳しくなる。



「あのね宮坂ミヤサカさん、あなた本気で結婚したいのよね?それなら悠長になんかしてられないのよ」



「でも…」



私にしては珍しく反論の言葉が出かかる。



「短い期間に全員とどうやって会うのかという問題もね、一日に複数とお見合い組むようにすれば解決するわよ?現に私もそうしてきたの」



えっ、なんだって!?



「午前中にAさんと会ったら、午後にはちがう場所へ移動してBさんと会う、こういうのザラだったわよ?」



なんてパワフルな!



「今、私にはムリって思ったでしょう?でもね、現実を見たほうがいいのよ?今の入会フィーバーでたくさん申し込みきてるかもしれないけれど、それは長くは続かないわよ?」



それは、頭では理解してる。



「私なんてね、入会フィーバーがなかったから、そんなにたくさん申し込みきたら、ありがたくてしかたないわ。あ、私の話はいいわね!とにかく、どうしてもムリな60歳以上以外の人達とは、とりあえず全員とお会いしてみては?」



相談するんじゃなかったかしら?



「入会した時の冊子に、占術でお見合いするのに良い日にちが、むこう3ヶ月間載っていたでしょう?それを利用しない手はないわよ?あら、ここにちゃんと入ってるじゃない!」




永沢ナガサワ藤子フジコはそう言うと私のパソコンケースの中に入れていた婚活冊子を引っ張り出した。

パラパラとページをめくり、『お見合いするのに良い日』『お見合いするのを避けたほうが良い日』『なにをするにもうまくいかない日』が、3ヶ月分記されていた。

3ヶ月なのは、この相談所の規約の活動期間なのだろう。



——3ヶ月で決まればいいれど、難しいだろうな——



私はボンヤリと冊子を眺める。



「宮坂さんは会社に週5日毎日こなければならない契約ではないから、普通の人より多くお見合い組めると思うわよ?例えばこの日、午前と午後一人ずつ組んでみるとか、ね?」



こうして何やかやと流されるように、その場の勢いで日にちを分けて9人全員の申し込みを受けた形になってしまった。



——うわぁ、大変だ!——



どうにも止まらなさそうな気配…。

戦いの幕が切って落とされた、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

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