第52話 お見合いトレーニング、まずは身なりから
今、私は月2回開催されるセミナーに参加している。
参加者は私を含めて3人で、一人は私より少し年上な感じで背が高くスーツをビシッと着こなしている女性、もう一人は年齢不詳(もしかして私より若いのか同じくらいか?)で、カバンや小物に服装まで、全身黒づくめの女性だった。
今日は効果的なお見合いのため、ヘアスタイルにファッションのアドバイスを受けたり、開運メイクを教わったりする日で、人によってはダイエット指導もあるようだった。
私はおかげさまで10キロ以上痩せたのよ…と、
会話練習とか内面磨くためのセミナーはまた後日にあり、今日の講習会でいけそうな人はそのままお見合い写真撮影があると説明された。
——やだどうしよう、お見合い写真だなんて心の準備が…——
写真撮られるのは好きじゃない。
それでも一応はヘアメイクにファッションは、元モデルで女子力の高い
「同じ白い服を着るにしても、こちらの柔らかめの白をチョイスしてくださいね」
今日は私のパーソナルカラーであるブルベ夏向けと言われたオフホワイトのトップスにネイビーのフレアスカートを履いていたが、いきなりダメ出しをされた感じだ。
オススメされたのは、クリーム色に近いような柔らかめのホワイトのブラウスでいわゆるシフォン素材と呼ばれるもの、襟元にはフリルがついていた。
——なんだか恥ずかしいな…——
気に入ればその場で買い取り、気に入ったわけではなかったけれど嫌いなデザインでもない、問題あるとすれば女性らしい雰囲気なのが気が引けたくらいだ。
——こういうのも着てみようかな——
ひとまずトップスは買い取ることにした。
スカートは無地より小花柄を勧められたのだけど、あいにく長さが身長の低い私には合わなかったので、買い取りはトップスのみとなった。
「ええっ、黒は最高にオシャレでオンナを美しく見せるっていってたのにぃ、ダメなんですかー?」
年齢不詳な黒づくめの女性は淡いピンクのワンピースを勧められている。
「黒は相手に威圧感を与えることもありますからね、それに色彩心理学者によると黒は女性を老けさせて見せてしまう効果もあると言われているので、あまりオススメはできませんね」
アドバイザーの
「えーっ、ウソー!あたし黒好きなのにー」
黒づくめ女性は不満そうだった。
一方、背の高いスーツ姿の女性は、柔らかめの白いブラウスで胸元にリボンのついたデザインのものをオススメされ、戸惑っていた。
私とは反対に背が高いゆえにスカートの買い取りはしていなかったが、「お見合いのときは、なるたけふんわりとした女性らしさを意識させるようなデザインのスカートを履いてくださいね」と、アドバイスを受けていた。
次に開運メイクアドバイスが始まった。
レクチャー通りにメイクをすると、思っていたより甘めな感じに仕上がった。
元々私のパーソナルカラーはブルベ夏なので、メイク下地にピンクをチョイスするのはアリなのは知ってはいても、何だか恥ずかしくて買えずにいた。
やはり婚活では、ピンクが有効なのか?
ポイントメイクだけでなく、メイク下地に仕上げパウダーといったベースメイクまでピンクを勧められたのにはビックリした。
「紫じゃダメなんですかー?」
黒づくめ女性が質問を投げかける。
「紫のお下地は肌の透明感を演出しますが、人によっては顔映りが悪くなる可能性がらありますからね」
黒づくめ女性の好みがわかったような気がする、黒以外の色を選ぶとすれば恐らく紫、
それはメイクにも反映されていて紫のアイシャドウが印象的だったのが、レクチャーで違った雰囲気に変わっていた。
ワインレッドだかボルドー色の口紅がピンクに変わり、本人はそれも好みではない様子だった。
次にヘアスタイルのアドバイスを受ける。
服装は
「そのままでも悪くないですが、できるならゆるフワ感出したほうがいいですねー」
と、毛先を軽く内側にアイロンで巻かれた。
他のメンバーで背の高い女性は、
「もう少し色を軽くしたほうが望ましいですが、抵抗がおありでしたら、顔回りをすっきり見せたほうがいいですねー」
長い黒髪はハーフアップにされ、仕上がりは『良家のお嬢様風』になった。
スーツをビシッと決めている時はカッコよく見えたけど、こうして柔らかめの色味の白ブラウス着てこの髪型だと、申し込みがたくさん来そうな人に見えた。
一方で黒づくめの女性は、
「あなたは縮毛矯正をしたほうがいいですね」
とアドバイスを受けていた。
言われみれば黒づくめの女性は肩より長い髪でチリチリなパーマをかけているように見えたが、癖が強いとのことだった。
「さっきから黒はダメ出しされちゃうし、この髪型までケチつけられちゃうなんて」
なんだか不穏な空気になりそうな予感…。
けれども
「いち早く幸せに一歩近づくためのアドバイスですからね。
にこやかに返す。
ひとまず
そのまま帰ることになった。
撮影もこれまた大変だった。
「はーい、にっこり笑ってー、あ、顎引きすぎですねー、もうちょい上げてもらえますかー?首をもう少し意識して右に傾ける感じにしてくださいねー、そうそう、その調子!」
カメラマンさんの要求どおりにするのは、なかなかに大変だった。
顔の角度だけでなく立ち姿や手の置き方まで指導され、撮影が終わる頃にはドッと疲れが出てしまった。
「はーい、お疲れ様でーす」
その日のうちに撮影できたのはラッキーだったかもしれない。
背の高い女性…
「それではお疲れ様でーす、次回はコミュニケーションに関するセミナーがありますので、是非参加してくださいね」
「ありがとうございました」
エレベーターに乗るとき、初対面の女性と一緒で緊張したが、
「あの、このあとお時間大丈夫ですか?実は
誘われて一気に打ち解けられるような気がした。
「はい…あの、
素朴な疑問を口にした。
「私実は
そういうことか、占いから婚活に入る人もいるのね…。
そもそも占いと結婚相談所が同じというのがありそうで聞いたことがなかったから驚きの連続で、今日のメイクも開運メイクとのことでそれもビックリだったし、手渡された冊子にも私に対するオススメファッションだけでなく、
ラッキーカラーやラッキーアイテムまで掲載されていて、至れり尽くせりに感じた。
事務所のあるマンションを出た後、私は
わりとすぐ近くにある大手飲食チェーン店へと入って行った。
すでに
「お疲れ〜」
にこやかに出迎えてくれた。
とりあえず3人ともドリンクバーを注文する。
時間的にもう遅く、あと30分でラストオーダーであることを告げられる。
「ごめんねー、本当はこの近くに美味しいパンケーキのお店あったのだけど、このご時世20時閉店で」
2022年現在、遅くまで空いてる飲食店は限られていた。
「あら?
彼女も占い学んでいたのかな?
「ここだけの話、彼女またこの婚活部に戻ってきたのよね」
「えっ、そうなんですか!?」
私が何か言う前に
「彼女こだわりが強いのか、今回のようなセミナーに参加することまずなかったのだけど…どうだった?素直にアドバイス受けてたかな?」
「いえ…なんか不満そうでした」
「やっぱりね…彼女ゴスロリとは違ったタイプのいつも黒ばかりで、確かにファッションは個人の自由かもしれないけれど、選ばれるにはそれなりにしないとね…」
そうだったのか…。
「なにか問題を起こさないといいのだけど…」
と、
「なにかあったのですか?」
「とりあえず、彼女に連絡先やお見合い相手を教えたりしないほうがいいわよ、色々トラブル起こして、一度強制退会させられてるから」
「えっ!?」
この話に
「なんでまたそんな人を
なんと、すごい人もいるもんだ。
どんなトラブル起こしたかわからないけれど、先程のセミナーでのやりとりで、ほんの少しわかるような気がした。
「それより今日どうでした?」
「あ、私やっぱダイエット勧められました」
会話は
「そうなんだ〜、私は女性専用のパーソナルジムを利用したのだけど結構良かったよ、興味あるなら紹介するよ?」
「ありがとう」
私はとくにダイエットは勧められてない(かと言って痩せているというわけでもない)
それもあって、なんとなく話に入れずにいて、ひたすらソーダ水を飲んでいた。
「
突然話を振られたもんだから、ソーダ水を吹きそうになる。
「あ、ありがとうございます」
「ゆるく内側に巻くだけでも、だいぶ印象変わるんだね」
「私なんて、ハーフアップですよー」
「いいじゃない
そういえば私が入社したばかりのころの
「そういえば
「やっぱね…前回入会してたときは一度もセミナーには参加してなかったけど、今回の参加で言われるだろうなって思ってたわ」
「あの…」
ここで私は疑問に感じたことを訊いてみることにした。
「一度もセミナーに参加しない人とでも交流はするんですか?」
人見知りな私は、気になる。
「ああ、コロナ前はね、まず無料相談会の時に割とたくさんの人来てたし、その後も食事会とか色々イベントはあったのよね。
そういうことなのか。
自分のときの無料相談会は私一人だけだったけど、やっぱりコロナ前はたくさん来ていたんだな…。
その後は婚活成功者である
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