第51話 婚活準備、スタート!


「ご入会ありがとうございます」



婚活無料相談会から約2週間後、まさか入会のため再び足を運ぶとは思ってもいなかった。

心の準備があるためもう少し先延ばしにしたかったのだけど、永沢ナガサワ藤子フジコが「契約するならこの日がとてもいい日だから」と、半ば強引にセッティングされたのが今日だった。


入会キャンペーンか何かで、特別プレゼントとして織本オリモトさんのミニ鑑定がついてきた。

内容は永沢ナガサワ藤子フジコと同様に結婚のチャンスが巡ってきてるとあり、さらにラッキーカラーやラッキーグッズなど、内容がきめ細やかだった。 


事前に『独身証明書』が必要とのことで、戸惑った。

そういうものがあるなんて、知らなかった。

調べてみると役所で発行しているとのことだったので、平日の休みの日に区役所へ取りに行った。


独身証明書に必要な書類として請求書があり、住んでいる地域の市役所ホームページを閲覧したら「結婚相談業者から入手してください」とあったので一瞬焦ったけど、次の項目に「業者から入手できない場合は、各区役所の戸籍課で請求書を受け取って記入してください」とあったので、ホッとした。

他に必要なのは運転免許証にマイナンバーカードに印鑑だったので、それらをバッグに入れて市役所へと足を運んだ。


女性の場合は年収を証明する書類の提出は求められないと永沢ナガサワ藤子フジコから聞き、少し安堵する。

今時は正社員でそれなりに稼いでいる女性が婚活に有利と情報を得ていたので、ただでさえ不利しかない自分には有り難い話だった。



「パソコンはお持ちですか?」



「はい」


「かんたんに説明しますね」



織本オリモトさんはそう言って自分のパソコンを見せながら説明をしてくれた。



「こちらの婚活部では、ご自分で検索サイトで見つけたお相手にお見合いの申込みをして、お相手からOKでればお見合いしてく…そういったシステムです。逆に検索サイト経由でお見合いの申し込みがくることもあります」



「はい…」



自分は検索されてお見合い申し込みなんてされないのだろうな…。

なんだか妙に自信がない。


「プロフィール交換会によるお見合いで、相談所スタッフが他の相談所スタッフと会って婚活中の会員のプロフィールを見せあい、お見合いできないかマッチングしてく、そういったこともしています」



ということは、こちらが検索してスルーした相手でも、スタッフさん同士で合いそうならお見合いセッティングされる、ってことかな?

そもそもひとつの結婚相談所に入ったなら、

同じ相談所内の人しか紹介されないと思っていたので、これには少し驚いた。



「お見合いをしたあとは、相談所にまた会いたいかどうか伝えてくださいね。相手もまた会いたいとなれば仮交際、このときファーストコールと言われるものがあります。お見合いした3日以内くらいに男性から女性に電話がありまして、次回会う予定決めていただきます。ファーストコールの日時は相談所が教えてくれることになっています」



んんん?

なんだか一度にシステム覚えきれないわ…。

そんな私の胸中を察したかのように、織本オリモトさんはパンフレットらしき冊子を差し出してくれた。



「詳細はそちらに書かれてますが、なにかわからないことがあればいつでもご相談くださいね」



私は渡された冊子に目を落とした、製本にはなっておらずクリアファイルにA4サイズの書類が入っているかんじだったが、パラパラ目を通した限りでは、見やすい印象を受けた。



「あ、最後に伝えておきますが、うちはお見合いは何件までとか制限はありませんので、ご安心くださいね」



この言葉に私は思わず「えっ?」と、声を挙げてしまった。



「紹介所によっては、何人までと制限ある所もありますので」



これは衝撃的な話だ、大手結婚相談所に勤めていた義兄のとこはどうだったのだろう?

改めて普通の相談所に入らなくて良かった、

永沢ナガサワ藤子フジコには感謝しかない。



「入会おめでとう!これから婚活がんばってね!」



手続きを終えてから永沢ナガサワ藤子フジコに色々励まされた。

普通は入会フィーバーといってプロフィールを提出した途端に申し込みが殺到するらしいが、なんと永沢ナガサワ藤子フジコのところには、一件もなかったと教えられた。



「それでも結婚できたのだから、行動あるのみ!」



私だったら、めちゃへこむだろうな…。

改めて彼女はすごい人だと思った。



「本当はこの後一緒にお茶でもと思ってたけどごめんなさいね、先約があるの」



永沢ナガサワ藤子フジコはそう言って頬を蒸気させたので、恐らく婚約者に逢うのだろうなと察せられた。



——いいなぁ、私も早くいい人見つけて安心したい——



こうして私は期待と不安の入り混じったスタートを切ったのだった。






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