第50話 えっ、結婚できる星回り?ついに決心か!?

永沢ナガサワ藤子フジコが利用した相談所の無料相談会へ行ってから、一週間が経ってしまった。


占術を使った相談所と聞いていたような気がしたけれど結局占いはしなかったし、それらしき占い師もいなかった。

と、思っていたら、なんと相談員の織本オリモトさん自身がとてもよく当たる占い師だと永沢ナガサワ藤子フジコから聞かされ、かなりビックリした。

そういえば最初の自己紹介で風水鑑定士と言ってたような?

改めて手渡された名刺を確認すると、しっかり『風水鑑定士・婚活部長』と印刷されていた。

それにしても、風水といえば家の方角とかだよね?

住んでいる家の方角のせいで結婚できないとか、言われるのかなぁ?

あるいは風水って家だけじゃなく、人も占えるんだろうか??



「無理な勧誘はしないのよね、占いも必要に応じてだし…あ、織本オリモト先生が使う占術って、風水だけでなく四柱推命シチュウスイメイとか易経エキケとか、色々あるのよ」



最近お昼休みは永沢ナガサワ藤子フジコと被ることが多い。

ここのところ食堂で並んで座ってお弁当を食べるのが日課になっているといってもよいくらいだった。



「でね、私、宮坂ミヤサカさんの命式めいしき、出してきたよ?」



命式めいしきなにそれ!?

そう思っているとバッグから紙を取り出した。



「実は私ね、四柱推命しちゅうすいめいの勉強をしているの」


えっ、永沢ナガサワ藤子フジコが占いの勉強!?

現実的に見える彼女が占いを信じているだけでなく、勉強までしていること自体が驚きだ。

紙には難しい漢字がたくさん入力されていた。

私にわかる漢字は干支くらいかな?



「今年は壬寅みずのえとらの年で、宮坂ミヤサカさんにとって…」



なんだかとても難しい話で頭に入ってこなかったのだけど、とりあえず現在の自分にはチャンスが巡ってきていて、婚活に良いタイミングなのだそう。



「前にも話したかもしれないけれど、私、織本オリモト先生に出会うまで、どの占い師にも一生結婚できないなんて言われていたのよね」



以前一緒にご飯食べに行ったときに、そんな話を聞いたような気がする。



「それがね、織本オリモト先生にはご縁はありますよ!って言われてね、その後四柱推命講座が開催され学んでくうちにね、私一生この先生についていこうと思ったの」



ここまでくるともはや心酔だ、けれども私も同じような境遇だったら、そうなるだろうな。

そもそも一度でも占いで「一生結婚できない」なんて言われたら、落ち込んで二度と占ってもらおうとは思わないだろう。



「確かにね、私の命式めいしきはパッと見た目結婚には縁がなさげなんだけどね、星のめぐりによってチャンスを掴むことができるって講座学んでいくうちにわかったの」



占いのことは正直よくわからないけれど、どうやら織本オリモトさんは星読みがうまいらしく、なんだか私も鑑定してもらいたくなってきてるから、不思議だ。



宮坂ミヤサカさんは私と違って官星カンボシあるから大丈夫よ」



官星カンボシ?なんですか、それ?

と思ってたが、どうやら夫を現す星らしく、全ての人が持って生まれているわけではないとのこと、ちなみに永沢ナガサワ藤子フジコにはなく、私にはあるとのことだった。



3ヶ月で30万というのには、正直抵抗がある。

けれども永沢ナガサワ藤子フジコの話を聞いているうちに段々その気になってきてる。



「これまでの会員さんで3ヶ月で結果出せた人もいれば出せてない人もいるけど、きめ細かなアドバイスやフォローがある上に他の相談所みたく成果重視のあまり強引な手段取られないから、信用できるのよね」



一部の大手相談所のヤバさは義理の兄を通じてよく知っている。

他の相談所を知る永沢ナガサワ藤子フジコが太鼓判を押すくらいだから、思い切って入会してみたほうがいいのかもしれない。



現実に、もう知り合いの紹介は打ち止めって感じで、期待はできない。

マッチングアプリとか怖くてできないし、やっぱり相談所入って婚活するしかない。

だったら身近で婚活成功した人が利用した相談所に入りたい。

現在身近で婚活中なのは佐和子サワコで、彼女は国際結婚相談所に登録をしている。

もうすでに何人かお見合いをしているが、なかなか苦戦しているようだった。



「ぶっちゃけ外国人のほうがシビアよー!日本人女性と結婚したがってる外国人いまだにたくさんいるんだけどね、二言目には子供が欲しい、そうなるとアラフォーの私なんてお呼びじゃないんだよねー」



美人の佐和子サワコが婚活に苦戦してるなんて!

彼女の場合、普通にどこかで出会ったほうが早い気がする…。

国際結婚相談所を経営しているタチアナさんの合コン料理教室や婚活ドライブへまた参加することも考えたのだけど、一緒に参加してほしい佐和子サワコは忙しくなかなか実現できそうになく、かと言って一人参加は勇気が出そうにない。

同じ勇気を出すのであれば、永沢ナガサワ藤子フジコが利用した相談所に登録しようかな…?

そうだ、そうしよう!

結婚したいなら、もうこうするより他はない!


後から思い出すと、なぜこのときの私は永沢ナガサワ藤子フジコ以外誰にも相談せず入会を決心できたのか、不思議でたまらなかった。

そして、こんなに早い決断をしたのは、人生で初めてだった。

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