第27話 小畑一美の紹介
都内繁華街にある商業ビル勤務ゆえ、事務職でも忙しくて休めない。
去年と違って今年はだいぶ人が戻ってきていて、コロナ前ほどではなかったけれど忙しかった。
タチアナさんが経営する国際結婚相談所に入会していた
「もう!改宗するなんてありえないっつーの!話が違うわ!」
最近は中東出身の男性を紹介されていい感じにまでいったのに、いざ結婚話が具体的になるとイスラム教への入信を迫られて憤慨していた。
「だって、最初は気にしなくていい、なんて言ってたのよ?」
外国人との結婚って、大変そうだな…。
私は
なんだかんだ遠くへは引っ越したくなかったから。
一度だけマッチングアプリをダウンロードしたのだけれど、登録の段階で急に怖くなってすぐにアンインストールしてしまっていた。
また以前の自分のように日常生活を送るのにいっぱいいっぱいになり、動けなくなってしまっていたのもある。
そして今日、5月13日の金曜日。
仕事を終えてから
「やあねぇ、今日に限って雨だなんて」
傘を広げながら
ベージュ無地のシンプルな傘だ。
ネイビーのジャケットにライトブルーのブラウス、そしてベージュのパンツといういかにもオフィスで働く女性の形見本のような服装が似合う
彼女はぽっちゃりとした体型にメガネをかけた地味なタイプだが、服のセンスは好ましかった。
それに引き換え今日の自分は、ブラウンのチェックのボックスプリーツのスカートに白いブラウス、そして春物のライトグレーのカーディガンを羽織っていた。
そして今日は雨だったので、一応レインブーツを履いていた。
実はこの服装は、
——おかしくないかな——
自分的には迷いながらも大丈夫な組み合わせと思っていたけど、他の人から見てダサかったらどうしよう…。
待ち合わせは、駅近くにある複合商業施設の中にある和食ダイニングだった。
「4名で予約していた
「
入り口でアルコール消毒してから手首だけの非接触検温し、案内される。
「こちらどうぞ」
案内されたのは、個室だった。
「まだ来てないわね」
「奥の席どうぞ」
勧められるがまま席につく。
和食ダイニングをうたうだけあり店内は和モダン風のつくりで、木のテーブルに椅子がシンプルでオシャレなデザインだった。
「もう到着したみたいね、今エレベーターで向かってきているんですって」
「早いね、開始より10分前」
男性が二人入ってきた。
一人は見覚えがあった、
「久しぶりだね、元気にしてた?」
「お久しぶりです」
私は反射的に立ち上がる。
彼の後ろに立つ男性に視線をうつす、今日紹介される予定の人だ。
「こんばんは」
禿げていて太った男性、第一印象はハクション大魔王だ。
正直タイプじゃないビジュアルだけれど、向こうだって同じ感想抱いてるかもしれない。
「はじめまして、
着席する前の自己紹介で、しかもニックネームがカンちゃんというのに吹き出しそうになった。
ハクション大魔王を呼び出す男の子の名前が確かカンちゃんだったから…。
リアルタイムでそのアニメを知っていたわけではないが、子供のころ再放送を観たことがあった。
「あらら、いきなり席つく前に自己紹介っすか、笑い取るの早すぎでしょー、カンちゃん!」
ツッコミを入れてる
見た目は好みではないけれど、なんだか安心できる人かも?と、少し期待しはじめた。
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