第23話 ちょっとイメチェンしてみようかな
「あら?私と同じブルーベースのサマーみたいね、多分ベストカラーはちがうけど」
今日は
すると、
「その前にイメージコンサルタント受けてみない?実は私勉強中なの」
と、提案をされたのだ。
イメージコンサルタントってなんだろう?と調べてみると、クライアントの目的に合わせて、職業やライフスタイルにふさわしいファッションやヘアースタイル、メイクアップにカラーコーディネートだけでなく、表情や姿勢、立ち居振る舞いに歩き方や話し方にマナーまで、トータル的に最適なプロデュースをしてくれるらしい。
が、
「実際はパーソナルカラーと骨格診断に顔タイプ診断をしてね、その人に似合うもの勧めることが多いよ」
とのこと、これら全て診断するのがここ数年流行っているらしいがそれなりのお値段らしい。それを勉強中の
最初に始めたのが、パーソナルカラーと言って似合う色を判定してくれるもの、その人のもつ肌の色と瞳や地毛の色をもとに診断するらしかった。
大きな鏡の前に座らされ、次々と様々な色のドレープを首から下に当てられていった。
「
そう言って当てられたのは、レモンみたいな色だった。
「避けたほうがいいのはアースカラーかな、あと、暗い色は得意じゃないみたいね」
うっ、ショック…。
私は無難なアースカラーを着ていたのだけど、どれも似合っていなかったようだ。
パーソナルカラーはブルーベースとイエローベースとにわかれ、ブルーベースはサマーとウインター、イエローベースはスプリングとオータムと、季節にわかれた名称だった。
私がこれまで着ていたのはオータムだった模様…。
「アースカラー着るのを徐々に減らせば地味で目立たないを返上できるかもね!でも、好きな色だったら残念ね」
「いや…別に好きだったわけじゃないんだ…なんか私いつも目立たないよう目立たないよう生きてきたのかもしれない」
このパーソナルカラーを受けてやっと気づいた、私、普段地味なモブで目立たないって嘆いてきたけど、自らそうしてきたのかもしれない…。
「そうなんだ…でも、いきなり服全部買い替えるの大変だと思うから、少しずつでいいんじゃないかな?」
「次は顔タイプね、ちょっとマスク外してもらってもいい?」
言われるがまま不織布マスクを外す、
こうして改めて見ると、
卵形の輪郭に透けるような白いきめ細かい肌、パッチリとした大きな目にフサフサのまつ毛、瞳の色がグレーなのがまたなんとも絶妙で、
鼻と口元は残念ながらマスクに覆われて見ることができないけれど、私の記憶の中の彼女の鼻はスッと高く、形の良い唇の持ち主だった気がする。
芸能人でいえば井川遥に似ているとよく言われ、まさに男性ウケするタイプだ。
同性の私でもポーっと見惚れるほどで、その彼女が結婚相手を見つけられないのが不思議でしょうがない。
「うん、やはり思った通りフレッシュタイプね。顔タイプは大人顔か子供顔かにざっくり分けて、直線と曲線どちらが多いか判断するものなの。
広末に永作博美だなんて恐れ多い!
そう思う反面、童顔を気にしていたので改めて子供顔と言われたことにショックを受けた。
「子供顔って若く見えるからうらやましいわ」
「私は思いっきり大人顔だもの、一歩間違えたら老けて見られるから、大変なのよね」
そういう悩みもあるのか…。
次の骨格診断では軽く体に触れられての診断だった。
「ウェーブだね。上半身華奢で下半身が曲線的で、全体的に下半身が重心かな」
おっしゃる通り。
私は比較的標準なほうだけど上半身だけだと痩せて見られることが多かった。
似合う色だけでなく、髪型やアクセサリーにバッグや靴の形、どんな服装が似合うかとか事細かにアドバイスをされた。
「実は私ね、イメージコンサルタントになるために勉強していて、今度の試験に合格したら今の仕事を辞めようと思うの」
「えっ、辞めちゃうの?」
彼女辞めると寂しくなる。
「うん…元々今の仕事は立ち直るまでの間だけって約束だったし、とっくの昔に立ち直ってたのに居心地よくて居座ってしまったし…」
彼女は過去に婚約していた相手からDVされた挙げ句に浮気をされ、流産までしてしまっている。
私だったら一生立ち直れないかもしれない…。
「知ってると思うけど、今の仕事コネなんだよね。あの一件以来、こもりがちになった私を心配した父親がうちのビルのオーナーと知り合いで頼んでくれたの」
なんとそうだったのか!
コネ入社って正直よいイメージはなかったのだけど、
「覚えてる?私たちが働きだしたころのあの界隈ってさ、
そうなのか…そういえばそうだったけ、すっかり忘れてた。
「そういえば…私もここで働くまでずっと仕事探し苦労してきたんだけど、すんなり採用されてたのって、その影響あるのかな?」
「そうかもね」
私のこれまでの職歴といえば、パン工場の期間限定アルバイトに派遣社員だったりと、安定性がなかった。
やっと仕事にありつけたと思っても契約期限があるため長続きはしない。
色々あって派遣辞めて再就職活動をしても、
アルバイトすらなかなか採用されなかった。
正社員採用は夢のまた夢と諦め、事務職のパートやアルバイトに応募しては書類落ちしまくっていた中で見つけた求人だった。
本来の私なら、都内繁華街の商業ビルで働くなんて考えられない。
けれども切羽詰まり贅沢言ってられなくて、
求人見つけてすぐ応募したんだっけ…。
「それにさ、ウチのビルってそろそろ建て替えでしょう?コロナ禍でなきゃ本当は今頃建て替えだったはずなんだけど、延期しちゃったからね…建て替え期間中に転職するつもりだったのよね」
そういえばそうだった!
すっかり忘れていたけれど、勤務先商業ビルは築年数がだいぶ経過しているため建て替え計画があった。
建て替え期間中どうしよう…他のバイト探すか?でも、もしかしたら契約切られるかもしれない、どうしよう…と、コロナ禍前はウダウダしていたことを思い出した。
「一昔前なら早く結婚相手見つけて永久就職なんて言ってたのかもしれないけど、やっぱり働いていたいよね」
永久就職…今やほぼ死語だ。
「やっぱり
「ん?どうして?」
「私やっぱり自分はダメだなぁって思うの。将来どうしようと不安がるばっかりで、なにも行動できないし」
本当、自分でもいやになる。
人生を決めるのは自分自身なのに、ウダウダするばかりでなかなか行動に移せない。
「将来不安なのって、ほとんどの人がそうじゃないかな?行動については人それぞれだし…私の場合、まずは自分がどうしたいのか考えることからはじめたけどね」
自分がどうしたいのか?か…。
言われてみれば、私は目の前で起きていることをこなすのが精一杯すぎて、未来のビジョンを描けていない。
とりあえず今私がしたいのは結婚なんだけど、仕事をどうするか全く考えていなかったことに気づかされる。
仕事に関しては、今のままずっと続くとどこかで思っていたのもある、ビル建て替え計画を知っていたのに…。
「私も…結婚したら専業主婦になるとか考えてはなかったけど、だからといって働きながら…とかあんまり考えてなかったかも…」
正直な気持ちを吐露する。
「え、そうなの?できればその辺りのことハッキリさせといたほうがいいんじゃない?本気で婚活するなら」
つくづく自分は抜けたとこがあると思い知らせされる。
「他にもさ、結婚後どこに住みたいのか?相手側についていくか、自分の実家近くがいいのか?子供は持ちたいかどうか?とか、相手に何を求めるか?とか、具体的にしといたほうがいいよ、そのほうが見つけやすくなるし」
ごもっともだわ…。
私ってば、漠然とこのままでいることに不安感じて婚活はじめちゃったのね。
自分的にはかなり行動してるように感じてるけど、多分他人から見れば婚活してるうちに入らないだろうし、色々自分のダメさ加減を思い知らされ、少し落ち込んでしまった。
「まぁ、
その自分自身のスローペースに甘えてきた結果が現状なんで、なんとかしなきゃ!
とりあえず、
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