第11話 佐和子が大ピンチ!?雨の中のカーチェイス!
予定では、
タチアナさんの車で一緒に帰ることになっていた。
かなり雨足が強かったので、私たちはまだ車へは戻らずにサービスエリアの出入り口付近で待機していた。
と、ここで、急に
「うわっ!」
真っ先に声を挙げたのは、
「なんだ、いきなり発進させるかな〜」
ドジな人を見つけたかのように笑っていたけれど、次の瞬間窓から顔を出した
もしかしたら、助けてと叫んでいるのかもしれない…。
「あれ、ヤバいですっ!」
とっさに私は叫んだ、もしかしたら
他のメンバーの大半が呆然としていたが、やがてタチアナさんがスマホをカバンから取り出してどこかへ連絡しはじめた。
「ダメですね、つながらない」
先程まで始終にこやかだったのが、困惑した表情へと変わっていった。
「警察に連絡したほうがいいのでは?」
こう提案したのは、
ここで先程から空気のようだった
「警察に通報したのでは間に合わないかもしれません、僕が追いかけます!…
こう申し出たので、一同驚いた。
見た目からしておとなしそうなこの男性が瞬時にこのような決断をするとは、誰もが思わなかったんだろうな…。
私もこの時ばかりは珍しく後先考えずに、
「はい」
と即答し、傘もささずに駐車場へ小走りし、
タチアナさん含む他のメンバーがなにか言っていたような気もしたけれど、とにかく急がなきゃという気持ちを優先させた。
助手席に滑り込んでから真っ先にスマホを確認した、予想通り位置情報知らせてくれていたのだけど、うまく説明ができない。
「あの、これ…」
「運転しながら見ることできないから、説明してくれたら有り難い」
と、言われてしまう。
――どうしよう――
私も少しパニクっていたので、とっさにどうしたらいいのかわからなくて、困ってしまった。
私は地図を読むのが得意じゃない。
――あ、そういえば…――
何気なくスマホの音量をあげてみる、
『左方向へまっすぐです』
良かった!予想通りナビしてくれた。
「Mapかな?そういえば、音声ナビ機能があったんだね、使ったことないや」
ずっと無表情な人だと思っていたから…。
「追いかけて、彼女を助けよう」
なんか、この人いいかも!
誰かがピンチになったときに咄嗟に動けるのってなんて頼もしいのだろう!
「完全にスピード違反だな…申し訳ない、
こちらが返答する暇もなく
このときの私はスピード違反で捕まったらどうしようとは全く頭に思い浮かばず、ひたすら
思っていたより交通量が少なかったのは幸いだったけど、雨が降る中での猛スピードドライブは後から考えたら顔面蒼白ものだった。
ナビが次の信号を直進することを告げた、遠目でも
「えっ、、やだ!信号無視!?」
ぶっちぎりで信号無視をしたので、愕然とした。
チラと運転席を見る。
「ったく!とんでもないヤツだ!」
――信号無視したらイヤだけど、
けれども幸い自分たちが信号に当たるころには青に変わったので、停車することなく追いかけ続けられた。
多分車が発進したばっかの時は、助手席にいたのだろうな…。
あんな猛スピードの中でどうやって後部座席へ移動したのか不思議だった、ケガをしてなきゃいいのだけど…。
ここで
「こっちが追いかけているのに気がついたな!しかたない、
「はいっ」
私は即答し、アシストグリップに捕まった、生まれてこのかた車に乗ってこういうものに捕まったことなんてなかった…。
車間距離は縮まったり広がったりの繰り返しで、そのうち通報されるんじゃないかと思うほどカーチェイスを繰り広げているように感じられた。
私は左手でアシストグリップに捕まりながら右手でスマホを見ていた、本当はいつも左手でスマホを操作しているから右手だと使いづらかったのだけど、助手席は左側にあって必然的に捕まるのも左だったからしかたない。
私は日頃あまり車で遠出しないからわからないのだけど、
――どこへ行くつもりだろう――
もしかしたら
なんてあれこれ考えめぐらせてるうちに、ナビはとんでもない所を示していた。
「あっ、、、!」
私は思わず声をあげた。
「どうした!?」
「車はラブホに停車しました!」
言った後で急に恥ずかしくなったがしかたない、
「あの野郎!」
「わわっ」
私は思わず声をあげた、今の振動で後頭部がヘッドレストにぶつかた。
たいして痛くはなかったのだけど、少しショックだった。
――こんなの
後にも先にもこの時だけだった…。
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