遺された友

ランプの火がお前の横顔を照らし、風が葉を揺らすように時折ページをめくる音だけが聞こえる。俺は難しい本の内容はわからないが、そんな空間が好きだった。すぐに読む必要はない、と言って贈ってくれた本は、お前を失うまでやっぱり一度も開かないままだった。言った通りだな、これは必要な時に寄り添ってくれる友だって。文字を指でなぞると、お前の声が聞こえるみたいだ。初めて油が切れるまで本を読んだ。


2020/04/06

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