うみうります
小学4年のときの担任は、国語が好きだった。教科書は音読だけでなく、暗唱させた。私は今でも当時習った物語を誦じられる。
憂鬱で堪らない朝、気まぐれに乗ったいつもと違う電車が緑の美しい山の間の小さな駅に着いたとき、その冒頭が口をついた。
「海なら、買いますよ」
と声がした。はっとして振り向くと、改札係が切符を求めて手を出していた。早鐘を打つ心臓を押さえながら、その手と顔を見比べた。
「1個200円です」
と私は切符を差し出した。本当は300円だったかもしれない。
2020/03/13
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