習作・昔の芝生は青かった

1.

昔の芝生は青かった。理想の形がハッキリしてて、それを目指して生い茂らせた。手入れも行き届いて自慢の庭。今は?どこが違うかわからないけど、なんだか萎れて不揃いに見える。何を目指すかも曖昧で、あの頃の方が綺麗だった。同じ箱庭の筈なのに。


2.

他人と比べるなと言われて育った。自分に勝てればいい。自分が満足できればいい。隣の芝生は見なけりゃいい。だから自分の芝生と比べるの。でもね、そしたらなんだか昔の方が青々眩しかった気がしてくる。あの頃はよかったなんて言いたくはないけど着々と手入れが遅れていくのに巻き返さなくて、また青いあの頃を思い出すの。


3.

僕の最盛期は中3の頃。勝利の為にボールを追いかけ、合格の為に机にもしがみついた。先に出世していく横顔に、特別嫉妬はしない。彼には彼の悩みがある。けど、昔の僕はきっともっと凄かったんだ。なんて過去に縋っても、戻れないのは明白なのに。


2020/03/14

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