19話『更に闘う者達2』
「また会えましたね。魔王ミカエル陛下」
「私は会いたくなかったわ。帰ってくれるかしら?」
「つれないですね。神殿騎士団長として、リュウタロウの仲間としては貴方達を見過ごせないのでね」
「じゃあ殺す」
「おいアルゴ。皆んなはどうしてるんだ?」
「スピカは先程、王宮で見かけましたが何しているのかは知りません。レグルスは飲みに行くと言ってから既に三日程行方不明ですね。それと……」
「分かった。もういい」
「そうですか。しかし、こちらに分が良くない様に見えるのですが、長居は無用ですよ」
「このまま引き下がる訳にはいかないよ!」
「やれやれ……では手伝いましょう。私はそこのエルフを相手します」
「ご指名か。後悔させてやろう」
セリスの目が座る。あら怖い。
邪神の使徒アルゴ……確かコイツが使徒のリーダー格だよな?一体どんな奴なんだろう。
一見まともそうなんだけど。妙な雰囲気を感じる。
だけどこっちにとっては、レグルスとかが居ないだけでもまだ助かる。
「セリス。アイツの弓は転移してくるから気をつけなさい。……でも大丈夫か。体薄いから」
「ミカエル。忠告有難いが、体が薄いとはどういう事だ?」
「そのまんまの意味よ」
「後でその胸もいでやる!」
「フンっ!後があったらね」
「上等だ。必ず貴様の胸をもぐと約束しよう」
ミカさんとセリスは視線を交わす事なく離れた。
「私の相手はエルフですか……変わった武器をお持ちのようですが、実力の程はいかがでしょうか?」
アルゴが弓を構えるとセリスが素早く横に飛びつつ銃口を向ける。
矢はアルゴの手から生まれるかの様に三本現れる。
異空間収納なのか魔法なのかは分からない。
放たれた矢は三本がそれぞれ違う曲線を描き飛んで行きセリスへ襲いかかる。
が、セリスは両手に構えるハンドガンで矢を迎撃して行く。だがアルゴはそんなことは気にしないのか、次々と矢を放って行く。セリスは跳躍し、開けたこの場所では戦いにくいと判断したのか、教会の外壁を飛び越え市街へと消え、矢を放ちながらアルゴもそれを追う形となった。
◇
「さて……ボクらも続きとしようか!
リュウタロウが状態異常魔法をかけるとティファが素早く杖を空へ向ける。
「
「チッ、やはり最初に殺るべきは回復役からだな!」
「聖剣技、閃光突き!」
「ティファ!」
聖剣をティファに向け正に閃光の如く飛び出す。
「シールド多重展開ッス!」
素早くティファの前にマリンが立ちふさがり、シールドを多重展開した。珍しく空気読める行動をとるマリン。
「盾ごと貫いてやるさ!」
リュウタロウの聖剣の前にマリンの強固なシールドが、ガラスの様に次々と割られて行く。
「ミカさん!」
「分かってる!」
このままではマリンが危ない。
俺とミカさんは両側面からリュウタロウを攻撃するため斬り込む。
だが、リュウタロウに接近した瞬間、雨の様に矢が降り注ぎ行く手を阻み近付けない。
アルゴの援護か!セリスとの戦闘の中でも、こんな芸当が出来るとは!
全てのシールドを破壊し、リュウタロウの聖剣がマリンを捉える。
その一撃がマリンに到達すると光が弾けた。
「マリン!」
「マリンさん!」
だが―――
光が弾けるついでにマリンのメイド服も弾けた。
そこには暴力的な二つの胸の膨らみを覆うには小さ過ぎる貝殻が輝き、聖剣を受け止めていた。
「ば、馬鹿なっ!貝殻だとぉ!」
リュウタロウが驚く。剣を止めらた事より貝殻に驚いているみたいだ。そっちかよ!
更にマリンがリュウタロウの聖剣を二つの暴力で挟んだ。挟むな!
「聖剣が抜けん!」
「どおりゃゃおぁーッス!」
マリンが聖剣を挟んだままリュウタロウを回転し、ジャイアントスイングみたいに振り回した後、リュウタロウを中空へと放り投げた。なんてパイ圧だ!
だが、それと同時にマリンの貝殻を留めていた紐がちぎれ、二つの暴力をさらけ出した。思わず二度見してしまう。
「ティファ!ぶち込むッス!」
「はい!……神よ!我が求めに応じ、彼の者のへと怒りの刃を!
天から閃光がリュウタロウに降り注ぐ。
「うぎゃぁぁぁぁああああっ!うばばばばば……ッ!」
最上級神聖攻撃魔法『神の憤慨』だ。
その威力は天魔法『ヘブンクロス』の超弩級をも超えるとかそうじゃないとか。
ミカさん曰く異次元クラス。もはや神の力の一端。
「やるわね凡人!」
「私だって銀の翼のメンバーですぅ!」
神の裁きを受けた罪人の様に、或いはアクマイト光線をくらった悪者みたいにすら見えるリュウタロウが落下して来る。この機を逃さない。
マリンがリュウタロウの落下地点に全裸で飛び込んで行く。いや、上半身裸だ。下の貝殻はまだ無事だが、後ろから見ると尻丸出しである。
「
超重量のトールハンマーでリュウタロウの後頭部を一撃。リュウタロウは地の底へと沈む。
死んだかどうかは分からないが、見た感じかなり効いたと思いたい。ティファは魔力を使い過ぎたせいか地面に直立不動で倒れた。
「もう……無理ですぅ」
「ティファご苦労さま。だけど……まだ終わりじゃないみたいね……」
ミカさんが珍しくティファに優しく労うが、緊張はまだ解けない。リュウタロウはまだ死んでなんかいない。
リュウタロウの魔力を感知した。
「今のは……死ぬかと思ったよ」
リュウタロウが転移で地上に現れる。
見た感じ防具などはボロボロになりつつあるが、見た目よりは効いていないみたいだ。
「ムカつく程タフだな。ティファとマリンは下がってくれ!コイツはミカさんと俺でケリをつける!あとマリンは服着ろ」
セリスとアルゴの方も気になるが、今のところは互角に戦っているみたいだ。アルゴが本気ではない気もするけど。回復しきれていないリオも心配だ。あまり時間はかけれない。
「二人まとめて相手してあげるよ……そしてまた殺してやる!」
「聖光爆裂刃!」
「聖光爆裂刃とは、勇者であるボクのオリジナル技だ!光属性の魔法を聖剣に込めた究極の必殺剣。特に闇属性の強い魔族であるミカエル貴様には強烈なものとなるんだ!死ねぇぇ!」
「なんて説明的なんだ!」
「あ、あれはヤバいですよぅ!ミカエルさんは応急的な回復しかしていないから、あんな攻撃を受けてしまったら傷が開いてしまいますよぅ!」
ティファまで説明的だ。しかも言ってはいけないでしょそれ。
だったらミカさんを守るしかない。
俺はミカさんの前に飛び出した。
目を見開く事もままならない光に包まれ、聖光なんとかの衝撃を神刀タケミカヅチで受け止める。
弾き飛ばされそうになるところを『大天使』で耐える。
まだ完全回復には程遠いが、出し惜しみしている場合ではないのだ。やらなきゃミカさんがやられる。
「くっ……うぉぉぉらぁ!」
スキル:聖光爆裂刃を獲得。
あっ、覚えちゃった。まぁいいか。
リュウタロウの攻撃を神刀タケミカヅチで斬り裂き、そのままリュウタロウへと斬り込む。
「馬鹿な!ボクの必殺技だぞ!」
「知るか!」
リュウタロウとの斬り合いが始まる。
互いに神速の動きの中での戦いへと突入し、常人には視認する事さえ出来ない。
ただ剣と剣のぶつかり合う衝撃が大気を揺らす。
「み、見えねッス!」
「エイルが押しているわ!いけ!」
状況はエイルが押している様に見えてはいた。
だが、『大天使』状態による体力と魔力の消耗が徐々にエイルを蝕んで行く。
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