第2話『再来の王都②』
とりあえず、ユリウス国王の承諾を得た。
あとはセイクリッド家からの迎えを待つだけである。
「そうだ。一応、エイル用に屋敷を用意したんだよ。たまたま空きが出てね。いつまでも王宮住まいさせる訳にもいかないのでね。ベルド、案内してやれ」
「はっ!お任せ下さい!」
なんか知らんけど、屋敷を用意してくれたらしい。
◇
ベルドさんの案内で、王宮から徒歩数分の場所にある屋敷へと向かった。王宮から近いとか、どれだけ立地条件素晴らしいのだろうか?
地価とかは分からないけど、間違いなく一等地てある。
屋敷はとてもじゃないが、騎士爵の住むレベルじゃない程、立派過ぎる屋敷であった。
広い庭園に四階建ての本宅に二階建ての別宅。敷地内に修練場や厩舎もあった。馬は居なかったけど。
「立派過ぎて怖いんですけど!」
「……完全にはめられたわね」
ミカさん曰く。
屋敷自体はタダで用意されたが、問題はその維持費がかなりかかると言う事らしい。
騎士爵の位で、しかもほぼ無職に近い俺の収入で維持費を稼ぐには、冒険者として荒稼ぎするか、騎士団総長の役職に従事するしかない。
屋敷も立派過ぎて、売りに出しても買い手がつきそうに無い上、ユリウス国王に賜った屋敷を簡単に手放すなんて事は無礼過ぎて出来ない。
「以前は追放されたゲスマルク侯爵家の屋敷でした。家財は全て接収していますので、備え付けの家具以外は時前でご用意して頂く事になります。直ぐに利用されるなら、こちらで人をご用意いたしますが、いかがでしょう?」
「い、いや、自分達で何とかするよ」
これだけの屋敷に人を入れて準備させたら、いくらかかるか想像つかないので、断った。
「とりあえず中を見せてもらってもいいかな?」
「ええ!どうぞこちらへ!」
屋敷の中は調度品などは当然無かったのでガランとしていたが、寝具と生活雑貨を用意すればとりあえず住めそうだった。
屋敷の元の主の部屋をとりあえず使うつもりだ。
「この本棚とか要らなくない?本とか読まないし」
「本くらい読みなさいよ」
そう言いながら、本棚をどかそうとしたら、本棚が横にスライドして、その後に隠し扉があった。
「えっ?なんか謎の扉があるよ!」
「隠し部屋?ちょっと覗いてみましょ」
ベルドさんも隠し部屋の事は知らなかったらしく、驚いた顔をしていた。
一体この先に何があるのだろうか。
扉を開けると、のぼり階段があった。屋根裏部屋に繋がっているようだ。
思いのほか埃っぽくなく、使われていた形跡があった。
階段の先の部屋は倉庫の様になっていて、棚には無造作に白金貨が箱詰めされていた。
「た、大金!」
「な、なんと言うことでしょう!こんな隠し財産があったとは!」
「これどうするの?
しばらくベルドが考える。
「見なかった事にしましょう!」
「「はぁ?」」
「既にゲスマルク侯爵の財産は接収済み。尚且つ、邸宅は現状渡しでございます。ですので問題はありません。好きに使って下さい」
好きに使えって言われても、どう見たって億単位の金だ。でもまぁ、これでこの広大な屋敷の維持費の心配は無くなりそうだ。
「でも、このまま置いておくのは危ないわね……」
「銀行に預ける?」
「ダメよ。こんな大金をいきなり、口座に入れたら、追求されてしまうわ!余計な税金を納めなくてはならなくなるかもだし!」
どうやらミカさんは脱税を薦めているのかな?
「じゃあ、空間収納に入れとくよ。それなら問題ないでしょ?」
ということで、ゲスマルク侯爵の隠し財産をゲットしたのであった。
◇
ベルドさんの帰宅後、一度転移で魔国に行き、ミカさんの部下のメイドさんを一人連れて来た。
「改めまして、宜しくお願い致しますわ。エレン・ブラッグスでごさいます」
エレンさんは、ミカさんの親衛隊『桜花』のメンバーだ。ダークエルフらしい。
とはいっても、色黒とかじゃなくて普通のエルフと見た目は変わらない。胸以外は。髪は金髪のロングヘアに毛先に近い部分だけ赤い。瞳は翠色で切れ長の目で美人だ。
ダークエルフと言うのは魔族とエルフのハーフを指すらしい。
魔族も色々な種族がいるので、その種族によって見た目にも違いがあるが、ざっくりとしていて、魔族の血が入っていれば、ダークエルフだそうだ。
エレンさんの、母親が
エロフ!って言いたくなるかもだ。
因みにダークエルフの殆どが、淫魔の母親を持つらしい。淫魔は交配相手に種族を選ばない事が多く、その様になってるらしい。
エレンさんの兄妹は皆、種族違うらしいです。
基本的に淫魔はビッチなのでよくある事だとミカさんが言ってました。
言われてみると、ミカさんの母親のサクヤさんも淫魔だったので納得した。
生活に必要な物の買い出しをエレンさんに任せて、ミカさんは調理場の魔改造にとりかかる。
暇になってしまったので、庭で……といっても、広すぎる庭園みたいな場所だが、剣の素振りを始めた。
幾らか降っていると、体も熱くなり、汗が出てくる。
「ダメだな……」
素振りだけしてても、ただの暇つぶしでしかない気がして来た。もっと実戦的な稽古がしたいのだ。
結果は椿ちゃんの敗北だが、半数以上を斬ったのだ。
事件が公にされていないのは、たった一人に対して多くの犠牲を出したセブールのプライドなんだろう。
勇者リュウタロウに剣聖椿。
数万の相手と戦えるバケモノだ。そんな二人と比べ、俺は……戦えるのだろうか?この先、神聖王国セブールを敵に回す事になるかもしれない。そんな時に俺は大軍と戦えるだろうか?不安だ。
対人戦に慣れとかないとだな。
「騎士団にお願いしてみるかな?」
王宮に行ってみる事にした。
一応、ミカさんに外出する事を伝えた。一応伝えとかないと、心配性なのか、過保護なミカさんに心配をかけてしまうのだ。
屋敷から王宮は直ぐなので、歩いて向かう。
流石、元侯爵の屋敷。王宮の近くには公館や、有力貴族の屋敷が並ぶ。
王都の中でも一等地なんだろうな。政治的な意味で近くなんだろうか?
なんて考えてたら、王宮に着いた。
先程の門番に、ベルド騎士団長に取り次いでもらうと、ベルドさんが、すっ飛んで来た。
「エイル様ァァァ!どぉなさいましたかァァァ!」
うわ、怖い。
「え、あぁ、さっきぶりですね……」
ベルドさん、顔怖いし、圧が凄いのよ。体大きいし、マジ怖い。思わずビクッとしてしまう。
「どつしました?まさか屋敷に問題ありましたでしょうか?人手が足らないのでしたら、騎士団総出でお手伝いしますぞ!」
それは助かる。て言うか騎士団って何人いるのか知らんけど。
「いや……あの、騎士団にちょっと稽古に付き合ってもらえないかなと思って。出来るだけ多くの人に参加してもらいたいんですよ。お願い出来ますかね?」
「喜んでお受け致しますぞ!兵たちも喜びます!そうと決まれば、修練場にご案内致します!」
どうやら大丈夫みたいだ。これで対人戦の練習になれば、俺としては万々歳だな!
ベルド騎士団長の後に付いて行き、修練場に着くと……。
「喜べ野郎どもぉぉ!今からエイル様が直々に貴様らの訓練をして下さるぞぉぉ!」
修練場に居た騎士団約500名が、一斉に歓喜する。
「「うおおおおぉ」」
え?なんかちょっと話違ってないかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます