第14話『銀と銀』


アルテミスの剣を持つコロッサスを倒さないと、アルテミスの剣は手に入らないわけだ。

まぁ、殺るしかないですね。




「スピカさん!ライズさんの頭の治療をお願いします!」


「分かりました!」


「なんや、頭の治療とか言われるとアホみたいな感じやな!」


「マリンも治してもらった方が良いんじゃないかしら?」


「ウチは無傷っスよー」


「マリンはアホでは無いよ。バカなだけだよ」


「ご主人様酷いっス!」


「スピカはん、膝枕で頼むわ」


「その首飛ばしましょうか?」


「じ、冗談や!普通で頼むわ」


「皆さん、そろそろ真面目にやりませんか?」


呆れ顔でシズカさんがマトモな事を言い出す。

戦闘中だと言う事を忘れてました!



「ジスに任せなさい!地獄の火炎ヘルファイア!」


ジスの指先から黒炎の塊がコロッサスさんに向け放たれた。


「あっ!ジスごめん!そいつ魔法効かないや」


「え?」


効かないどころか倍にして跳ね返って来るのだ。

なんて面倒臭い奴だ!


コロッサスさんに放たれた黒炎が倍にになってジスに跳ね返って来たのをマリンがシールドで防いだ。


「シールド二枚重ねっス!多い日も安心っス!超熟睡ガードっス!」


うん。なんかよく分からんが無事のようだ。


「エイル!あんた、そういう事は先に言いなさいよ!」


「あーごめんなさい。忘れてただけだ!」



では気を取り直して……


「スピカさん、アイツの弱点とかは?」


「これと言って弱点は無いですね〜、魔法は全て跳ね返しますし、装甲は硬いので……」


なんて厄介なんだ。とりあえず物理攻撃しか無いわけだけど。


「ワイに任せとき!完全復活でギンギンや!今のワイは強いで!」


ライズさんが、竜化して構える。


竜闘気ドラゴニックオーラ!」


ライズさんの体が光り輝く。なんか凄そうなんで任せとく事にした。


「ドラゴンダイブ!おりゃっ!」


またそれか。だがしかし、先程のダイブとはちょっと違う。竜化してるし、なんか光ってるから少し期待する。


ライズさんのドラゴンダイブという名のただのタックルで、コロッサスさんに突っ込む。

さすがのコロッサスさんもドラゴンの巨体のタックルを受け、持ちこたえながらも数メートルは後退した。


「シャアァァァァァ!」


更に、調子づいたライズさんがコロッサスさんの腹部に腰の入った一撃を入れるとコロッサスさんが宙に少しだけど浮いた。


「行けるで!ドラゴンナックル!」


ドラゴンナックルと言う、ただの右フックがコロッサスさんの顔面を直撃。一瞬ひしゃげた様に見えたが気のせいだ。


「コイツでトドメや!ドラゴンバスター……」


ライズさんが、ドラゴンバスターなる技を繰り出そうと両手を天高く上げた時。

コロッサスさんの強烈なボデーブローが、思い切り入った。


「ぐぼぁっ!」


漫画的に目が飛び出し、白目を向いて崩れ落ちる。

うわっ、だっせー!とか思ったけど口にはしなかった。


崩れ落ちたライズさんに、容赦ないコロッサスさんの大剣が振り下ろされる。絶体絶命のピンチだ。


「ライズさん危ない!」


叫んだものの、本人は既に気を失っているのか、返事はない。

俺が飛び出すより早く、コロッサスさんの振り上げた腕の関節にジスのククリナイフが刺さり、攻撃を封じた。


その隙にシズカさんが突っ込む。


「秘剣、桜吹雪!」


シズカさんの刺突連撃がコロッサスさんにヒットするも硬い装甲に傷はつかない。


「マリン!今のうちにライズを何処か安全な場所へ!」

「了解っス!」


マリンにライズさんを回収させたジスがコロッサスさんに接近を試みるが、コロッサスさんの銀翼が辺りに雨の様に撃ち降ろされ、近付く事が出来ない。


銀翼を回避しながら、後退したシズカさんの足に羽が複数刺さり、立っているのがやっとだ。



ヤバイ。コイツはヤバイ。魔法は効かない、装甲硬い、近接戦闘強い、範囲攻撃あり。素早さが無いだけだが、最強かもしれない。

どうする?どうやって倒す?斬れるのかな?


俺は、椿ちゃんとの修行を思い返していた。





「エイル。あの岩を斬ってみろ」


「楽勝だぜ!」


ありがちな修行だ。岩を斬るなんて普通は無理だが、漫画の主人公達はやってのけるのだ。


「せいっ!」


見事に岩は真っ二つに割れた。


「うん。ダメだな」



「ええ?ちゃんと斬れてるじゃんよ!」


「いいかエイル。ここを良く見てみろ」


椿ちゃんが断面を指さし、語りだす。


「断面が、途中でズレて、ヒビが入っている。これはつまり、途中で割れた。という事だ」


「え?それじゃダメなの?」


「あぁ、ダメだ、全然ダメだ。良いか?岩にしろ、鉄にしろ、ただの物質の集合体に過ぎん。それらを斬るにはどうしたらいいと思う?」


「素早く斬る?」


「まぁ、それもあるが、素早さより正確さだ」


「正確さ?何の?」


「剣筋の正確さの事だ。刀の鍔元から刀の先までしっかりと使い、僅かのブレもなく斬り割いて行くのだ。ブレでいるとエイルの斬った岩みたいな断面になってしまうのだ」


「うーん。なんか分かった様な、分かんないような?」


「フフっ、エイルにはまだ早かったかもしれないな。手本を見してやろう。あそこの岩を斬ろう」


椿ちゃんは俺が斬った岩ね倍はある岩に近付くと、抜刀術の構えをとり、直ぐに抜刀した。

すると岩がゆっくりとズレて真っ二つに割れた。

断面はキレイだ。そのままくっつきそうなくらいだ。


「すげぇぇぇ!」


「ふっふっふ。これくらい出来れば鋼鉄だろうと金剛石だろうと斬れるようになる。精進する様にな」


「はい!椿ちゃん!」





と言う事があった。


あれから毎日剣の稽古は欠かさずにしている。

今の俺なら出来るはずだ。多分。


「スピカさん!ちょっといい?」


「はい。なんでしょう?」


作戦会議だ。





「……分かりました。やってみましょう。……ですけど、長くは耐えれませんので、素早く一撃でお願いしますね〜」


「おう!任せなさい!」



銀髪の天使が二人、コロッサスと対峙する。

エイルは刀を鞘に収める。


スピカは二刀のファルシオンを構え、翼を広げる。



「では行きます!」

「ん!」


先ず、スピカがコロッサス目掛け突進をかけ、銀翼の攻撃を仕掛ける。

ダメージは殆ど感じられない。

その隙にスピカがコロッサスの正面に到達すると、コロッサスの大剣がスピカに振り下ろされた。


ドン!


大剣を二刀で受け止めるも、重さで地面が沈む程の威力だ。


「くぅっ!」


スピカは歯を食いしばりながら耐える。

耐え切れなくなった時は体が両断される事になるだろう。そうなる前にエイルにコロッサスを斬って貰わねば、自分が死ぬ。エイルに全てを託し、全力で耐える。

敵であるエイルを信じるしかない。


「エイルさん!」



スピカの後方からエイルが神速で飛び出す。


狙うはコロッサスさんの右腕!


絶対に斬る!


抜き、即、斬!



「うぉりぁぁぁぁぁぁ!」


キィン


エイルの刀がコロッサスの腕を僅かな金属音を立て、すり抜けた。



スピカにかかっていた負荷がスっと抜け、大剣を握り締めたコロッサスの腕がドシンと落ちる。


「やっ……た?」


コロッサスさんの方を見ると、緑色のギタリズム柄みたいな模様が消え、巨人は沈黙した。


「エイルさん。お見事です」


スピカさんが剣をしまい、優しく微笑んだ。

ヤバイ可愛いじゃないか!

ちょっとデレっとしてしまう。


「ご主人様流石っス!そこでのびてるライズとは違うっスねー」


忘れてた。ライズさん大丈夫かな?


「エイル!剣聖の修行も無駄ではなかったようね。褒めてやるわ」


出た!上から目線!ジスはいつもそうだな。まるでミカさんのようだ。


「シズカさん大丈夫ですか?」


「足をやられてしまいました。何とか歩けそうです」


「治療はお任せくださいね〜」


「スピカさん宜しくお願いします。それより……この剣、貰ってもいいの?」


「……はい。エイルさんが倒したのですから、エイルさんの好きにして下さい」


アルテミスの剣。ようやく手にいれた。これで雷電丸の修復に必要な物の一つが手に入った。


アルテミスの剣を拾い、握ってみた時だ。


装備不可。

条件を満たしておりません。

……

……

確認。

レベル上限に達しました。クラスアップが可能です。

今すぐ実行しますか?


YES←

NO


何か、変な画面出て来た。ステータス画面だ。久しぶり見たよ。すっかり忘れてた。


見ると、レベルがカンストしてる。


とりあえずYESだ。なんか良く分からんけども。



YESを選択。



……

……

クラスアップを開始します。



そこで意識が切れた。




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