第10話『竜の里』


どうもこんにちは。エイルです。

俺たちは折れた雷電丸を修復する為、邪神アルテミスの所持していたとされる、アルテミスの剣を求め、未開の地とされている北の大陸へ訪れた。

一面砂漠の無駄に広い大陸で、アルテミスの城を探すのは困難を極めた。

その矢先、俺たちの乗る戦艦ミカサはドラゴン三体と遭遇し、戦闘になった。

何やかんやで見事勝利し、リーダー格の竜族、ライズさんの案内で竜族の里にやって来たのだった。


「エイル。あんた何一人でブツブツ言ってるの?気味悪いから死になさい!」

相変わらず、ジスは俺に冷たい態度である。


「これが竜族の里かぁ、思ってたより普通の村っぽいね」

なんか巨大なドラゴンがわっさわっさしているのかと思ってたのだけど、普通に人の姿で生活していた。


「ドラゴンに何の期待しとんのや!」


「お、お前、誰だ?」


気付くと知らないおっさんが隣りにいて驚く。


「ワイや!ライズや!人化したら分からんもんかいな?」


「分かるわけないだろ!」


とにかく、服はちゃんと着てるみたいだ。


「まぁ、とりあえず長老にでも挨拶してってくれや。その後は好きな様に過ごしてええから」


「長老とかパスで」

「めんどくさいわね」

「無視っス!」


「お前ら失礼なヤツらやな……」


仕方なく長老とか言う人?に挨拶しに行く事になった。

長老は病気で床にふせっているらしい。

病人なんだから放っておいてあげたい。

長老の家に案内され、寝室へと入ると、若い女性がベッドに横たわっていた。

長老って言うから、ジジイかババアを想像してたので驚いた。


「こんにちは。少し寄らせて頂いたエイルと言います。じゃ、お大事に」


「簡単過ぎるやろ!」


「……まぁ、ゆっくりして行きなさい。わたしは長老のニースと言います。数日前から熱が37度もあってね……」


微熱かよ!


「ところで、皆さんは南の大陸からいらしたとか。実は娘が魔王軍で働いてるみたいなのですが、ご存知でしょうか?バースと言う名です」


邪竜バースさんのお母さんですか!


「申し遅れました。私は魔王ミカエル様直属の部下、ジス・バレンティンと言います。四天王バース様の母君様とは知らず、このエイルが無礼を働き、失礼しました。即刻処刑しますので、お許しください」


なんで処刑とか言うの?


「いえいえ。構いませんよ。我が子バースは里で一番の秀才。お役に立てているでしょうか?」


あれが秀才?賢さのかの字も見当たらないのだが。


「えぇ……まぁ、それはご活躍なさって……います」


さすがのジスも返答に困っている。


挨拶も適当に済ませ、念願の温泉に案内された。

温泉は巨大な露天風呂になっていて、ドラゴンが人化しないでも入れる程に大きい。

一応男女別になっているみたいだ。ここは当然、女風呂である。

「温泉か……ココ村を思い出すな」

「懐かしいっス!」


ココ村では結局、大浴場には入れなかったのだけど、今回はミカさん不在……フフ。


堂々と女子風呂に入れる時が来た!

いざ女風呂へ!


脱衣場は20畳くらいの小屋になっていて男女別の建物であった。

一応、砂漠の砂を叩いて落としたのだが、衣服を脱ぐと砂が入り込んでいたのか、ザラザラする。


ジスがジロジロと俺の脱衣を見てくる。

「えっ、何すか?」


「フン!やはり薄い体ね」

ジスが人の体見て鼻で笑い、自慢げに自身の成長した裸体を見せつけてくる。

下着はなんかミカさんっぽいと言うか、同じ?ミカさんが良く好んで着ている黒系の下着だ。


「なんかミカさんの下着みたいだね」


「フフ。コレはミカエル様の衣装室から頂戴した、正真正銘ミカエルの下着よ!まぁ、エイルにはサイズが合わなくて着れないでしょうけどね!」


「それって下着泥棒じゃないの?」


「違うわ!これは傍付きである親衛隊の特権よ!」


「いや、職権乱用の下着泥棒だよ!」


「ジスさんの部屋には歴代の下着コレクションがありましたね……」

シズカさんが、サラっと暴露した。


ジスって案外変態なのかもしれない。


「でも、下着盗まれててミカさん気付かないのかな?タンスの下着減ってて、あれ?ってならない?」


「フフ……ミカエル様の着替えは私達親衛隊がご用意しているの。だから心配ないわ!」

ジスが胸を張ってドヤ顔する。


心配はしてねぇよ!ジスの性癖が怖いよ!


そんなやり取りもありましたが……


脱衣場で衣服を脱ぎ捨て、意気揚々と大浴場へと進んで行く。

どうやら他にも入っている人が居た!よし!

俺は女の子だからな、堂々と見てもいいのだ。


ところが……



「え?エイルさん!」


風呂からこちらを見て慌てて立ち上がった先客は…


「あれ?スピカさん!なんで此処に!」


アルテミス十二天将で聖女で敵であるスピカさんだった。まさかの北の大陸での再会に動揺するが……


「邪神の使徒!ジス達を先回りして来るとは!排除してやるわ!」


ジスがスピカさんに気付き、殺気と全裸を全開にしてスピカさんに襲いかかろうとする。


「まさか北の大陸でも、戦う事になるなんてですね。相手をしたい所ですけど……ここは大衆浴場ですし、流石にお互い裸ですよ?やめませんか?」


確かに皆さん素っ裸で丸腰。タオル片手に険悪なムードだけど、なんとも締まらない状態ではあるし、スピカさんの言うことは最もです。

数的にはこっちは有利な状況ではあるけども……

ジスに剣聖シズカさん。マリンにティファ。俺を含めて5人。スピカさん側は……知らない女の子が1人。

公衆の浴場で戦うのは良くない。足を滑らせたりとか危険だ。


「分かりました。ほら、皆んなとりあえず風呂入ろう」


「エイル!何甘い事言ってるの?ジスが風呂ごと吹き飛ばしてやるわ!」

ジスが豊かな胸を揺らしながらも殺気立っている。


「ねぇ。タオルで戦うの?」


「今すぐ武器持って来るから、首洗って待ってなさい!風呂場なだけにね!」

ジスが上手い事言ってやったぜ!的なドヤ顔で脱衣場に向かい、走り出したが、足を滑らせ転び、頭を打って沈黙した。

放っておこう。


とりあえずスピカさんからの休戦を受け入れ、お風呂タイムである。


「スピカ様?お知り合いの方がいらしたのですか?私はアメリアと言います。生憎、目が見えない為、簡単な挨拶ですみません」

アメリアさんと言う盲目の女性がスピカさんの肩に掴まりながら頭を下げた。


「えーと、エイルです」

「マリンっス!」

「ティファですぅ」

「し、シズカです!」


「あと、さっきのやかましいのが、ジスね。今は気絶してるから安心して下さい」


「……ひょっとして銀十字のエイル様ですか?」


銀十字?あぁ、あの勲章の事か。


「え?えぇ、そうですけど……」


「やはりそうでしたか!わたくし、アメリア・ゲスマルクです。以前はファミリア王国におりましたわ」


「ゲスマルク?何か聞き覚えある様なない様な……」


「今は没落してしまった元貴族の家名ですわ」


少しガッカリした様子だ。うーん。分からないから仕方ないな。


「それより、スピカさんは何で北の大陸に居るの?また何か悪い事しに来てたの?」


「エイルさん。悪い事とは失礼ですね。私たちにとっては、正義だと思っているんです!でも……確かに他者を巻き込み過ぎている事は、罪悪感はありますけど……北の大陸に来たのはアメリアさんの目の治療です。ホントですよ!今回は私の単独行動ですから。エイルさん達は何しに来たのです?こちらも話したので、偽りなくお願いできますか?」


仕方ない。ここは正直に言うとしよう。


「えーとね……」


「エイル!敵に目的がアルテミスの城を探して、邪神の剣を持ち去るなんて言っては駄目よ!」


ジスが起き上がりながら、全部言っちゃった。


「じ、ジスさん?」


「なんですって?エイルさん達もアルテミス様の城を目指しているのでしたか……」


「ば、バレてしまったみたいね……ならば戦うまで!」


「お前がバラしたんだろうが!」


「とにかく。目的地が一緒でしたら、御一緒しませんか?実は、乗り物が壊れていまして困っていた所なんですよ〜」


スピカさんからの提案だが……どうするか?


「邪魔とかするつもりですか?」


「いえいえ。とりあえず城までは共闘すると言う事でどうでしょうか?お互いの目的を果たすまでの限定って事です」


「分かりました。約束ですよ!」


「はい!よろしくお願いしますねエイルさん」





お風呂も済ませ、皆でぞろぞろと歩いているとライズさんに声をかけられた。


「おう!宴の準備出来とるから、早う!そっちの客人さんも、よろしゅうな!なんかウチの若いもんが乗り物壊してもうたみたいやな!ホンマすんません!」


どうやら、スピカさん達の乗り物はドラゴンの襲撃で破壊されてしまったらしく、お詫びとして招かれたのだそうだ。部外者は先ず攻撃するのがドラゴンの掟かなんかなのかしら?


「いえいえ、でもこうしてエイルさん達にも偶然会えましたし、結果的には良かったです。あの時のドラゴンさん達は大丈夫でしたか?」


「エラいボコボコにされて凹んどるわ!しかし南の大陸にはゴツイ奴が多いんやな!お前ら知り合いやったんか?広いようで狭い世界やな!」


スピカさん、ドラゴンをぶちのめしたんだね。

やっぱり強いんだな。


「スピカさん達もドラゴンに襲われたの?」


「えぇ。流石に五体のドラゴンさんに囲まれたのは初めてでしたよ〜」


五体?それを一人で?


やっぱり敵に回したくないな……

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