第8話『VS三匹のドラゴン』
「俺が出て、何とかしてみるよ」
「はぁ?あんた正気?相手はドラゴン三体よ?」
「だってこのままじゃ、撃退どころか逃げるのも難しいだろ?まぁ、やるだけやってみるけど、無理だったら、俺を置いて逃げてくれればいいよ。俺は転移で逃げれるし」
最悪は撤退だけど、また北の大陸に来るのはめんどくさいので、出来れば乗り切りたい。
「ならウチも出るっス!ご主人様を守る盾はウチの役目っス!」
おお!助かるぞ!一応マリンも竜族だったな。忘れてたよ。この砂漠地帯なら迷惑もかけないから大丈夫だろう。
「イク時は一緒っスよ!」
意味わからん。
「マリンさんがイクなら私もイキますよぅ」
ティファまで何言ってんの?
「分かったわ。戦艦ミカサは援護に徹するわ。エイル!死ぬのはミカエル様が悲しむから許さないわよ!」
「任せろ!」
銀の翼出撃だ!
◇
俺たちはブリッジから急ぎ甲板へと向かった。
ブリッジを出ると激しい砲撃の轟音が止むことなく続いている。
「主砲、副砲、撃ち方止め!」
「主砲、副砲、撃ち方止めー!」
俺たちが、甲板の先に辿り着いたのを確認し、対空砲を除き、砲撃が止まった。
「ティファは支援魔法を頼む」
「はい!物理耐性向上!熱耐性向上!士気向上!」
「マリンはどれか一体の足止めを頼む」
「ラジャっス!」
腰にはノアさんに借りた無銘の魔剣。斬れ味は分からないけど、まぁなんとかなるさ!
「いくぞ!」
甲板を神速で翔け、三体のドラゴンの内、まず、右にいるドラゴンを狙って飛んだ。
「秘剣、木枯らし!」
シズカさんの技だ。突進しながら片手で連続突きを繰り出す。さすがに、これで撃破とは行かないのは百も承知だ。
「はぁっ!」
爆煙の中からドラゴンが顔を出す。どうやら健在の様だ。ドラゴンの拳が、煙の中から飛び出して来る。
それを
「ギャッ!」
「
落ちて行くドラゴンに速度低下の魔法をかけ、無力化にする。残りはあと二体だ。
マリンは大丈夫だろうか?
◇
「フラッシュピストンマリンパンチっス!」
よく分からない長い名前のパンチを繰り出し、ドラゴンをぶん殴っていた。連続で繰り出されるパンチで無駄にデカい胸が不必要に揺れる。凄いな。
ドラゴンも負けじとマリンを殴ったり蹴ったりはしているが、マリンのシールドに弾き返されていた。
「大丈夫そうだな」
マリンの戦況を確認していると、中央に居たドラゴン。
エメラルドグリーンのドラゴンが、口を開いた。
「余所見とは余裕やないか!嬢ちゃん中々やりよるなぁ!久々にごっつい獲物や、楽しゅうなって来たで、ホンマに!」
あっ、喋った!関西弁?ドラゴンって一応、知力の高い種族だと聞いてはいたけど、知っているドラゴンの知力はかなり低い印象だ。マリンとかバースさんとか。
「そんな、鳩が飴ちゃん貰ったみたいな顔すんなや!竜族かて喋るわ!あっちの乳デカい青髪も竜族やろ?分かるんやで。それに嬢ちゃんがただもんじゃないっちゅう事もな!」
鳩が飴貰った顔が分からないけど、どうやら引く気は無いみたいだ。
「お前達の目的はなんだ?出来れば争いたくはないんだ。引いてくれないかな?」
「そらこっちのセリフやアホ!この大陸にいきなり来て、海岸にドカンドカン撃ちまくっておいて、なんやそれ!」
あー、やっぱりあれは良くなかったらしい。いきなり知らない船が大砲撃ち込んで来たら、怒りますよね。
黒船来航みたいな感じかな?
まぁ、あまり歴史得意じゃないけど。
「ご、ごめんなさい……」
悪いのジスだけど、とりあえず謝っておけ!
「で、ホンマに何しに来たん?旅行って感じの船やないしな」
「アルテミスの城を探しに来たんだけど、知らない?」
「アルテミスの城やと?……遺跡の事か?」
「知ってるんですか?出来れば、場所を教えて頂きたいのですけど……」
「んなもん、教えるかい!そや!わいに勝ったら案内したるわ」
結局やるのね。
「分かりました……じゃあ、サクッと終わらせますね」
「エラい余裕やないか!簡単には殺られへんで!」
「一応、名乗っとくわ。ワイはライズや、見ての通り竜族や。こっちも名乗ってんや、そっちも名乗らんかい!」
いちいち面倒くさいな!
「エイル。天族だよ」
「天族!ホンマかいな!こら大物や!テンション上がるわ〜」
はいはい。
「行くで!」
ライズの腕がエイルに向け、振りおろされてくる。
それを難なく躱すと、砂漠の砂が高々と上がる。
「っと!」
舞い上がる砂を避ける様に数メートル後ろに飛んだ。
「
砂を避けたエイルに風魔法で飛ばされた砂嵐が襲う。
「んっく!」
風圧と砂でエイルの体は吹っ飛ばされる。風で飛ばされた砂が刃物の様にエイルの体を切り刻む。
「銀翼!」
堪らず、銀翼で応戦する。飛び道具には飛び道具で返す。
「んなもん効くかい!ムン!」
ライズの体を風の渦が守る。銀翼を簡単に弾き返した。
「まじか!」
ちょっとばかし厄介な相手かもだ。風使いって初めてかな?攻守に使えるのか……いいなぁ。
あっ覚えたらしい。
「これでも喰らいや!」
『炎弾』か?なら問題ない。炎は俺には無効だ。避けるまでもないのだ。
ところが
ゴッ!
「痛っ!」
思い切り頭にぶつかった。『炎弾』と思いきや、中に硬い物質があった。魔法に見せかけた物理攻撃だ。
意外に頭が回るようだ。風と火の使い手か。見かけに寄らず器用なドラゴンみたいだ。
「天雷!」
なら全部破壊すればいいだけさ!
天雷で『炎弾』を撃墜していく。
だが、防戦一方の状態である。中々斬りこめない。
「くそっ!」
少しばかりの隙があればなぁ。
◇
「対空砲でエイルを援護!」
戦艦ミカサの対空砲がライズに向けて火を噴く。
「邪魔すんなや!」
「
「目標健在!全弾、防がれました!信じられません!」
「ん〜!超爆裂波動砲、発射せよ!仕方ない、エイル諸共ドラゴンを消し飛ばせ!」
「し、しかしジス様……それは!」
「これは、仕方ないのよ!戦いに犠牲はつきもの。だから仕方ないの!エイル。無駄死にではないわ!ミカエル様の事はジスに任せ、安らかに死になさい!」
砲撃されて安らかにはないだろう。
「ち、ちょっとジスさん!エイルさんも殺すつもりですか?そ、そんな事、ミカエル様に何と言えば……」
「構わないわ!後で裁かれようとも、今の最善の策は、これしかないわ!砲撃主!絶対に外すな!」
「じ、ジス様……そうでは無くて、本艦には、その様な砲はございません」
「な、なんですって?馬鹿な!」
「あの、超爆裂波動砲はミカエル様の強大な魔力でないと制御が難しく、今回の配備は見送られておりまして……」
「チッ!」
不機嫌そうに悔しがるジスであったが、その時すでに状況は一変していた。
ライズが戦艦ミカサの援護射撃迎撃のため、ほんの僅かだがエイルから目を離してしまった。その機をエイルは見逃さなかった。
ライズが再びエイルに視線を戻した時、既にその場にエイルの姿は無かった。
「消え……」
消えたと発しようとしたが、ライズの首に冷たい刃が当てられてる事に気付く。既にエイルはライズの後ろから回り、刀の刃を首筋に寸止めしていた。
「どうすんの?まだやります?」
「なんやそれ……速いとか言う次元じゃないやないけ……しゃあない。参った。降参や!」
両手を上げライズは自身の敗北を認める。
一方マリン達は……
「ティファ今っス!」
シールドを四方に展開し、ドラゴンを盾の牢獄に閉じ込め、動きを封じていた。そこへティファの神聖魔法が降り注ぐ。
「ホーリーレイン!」
上方向からの聖なる雨がドラゴンに容赦なく降り大ダメージを与え、ドラゴンは気を失った。
「よっしゃーっス!」
「も、もう限界ですぅ……」
ティファは元々、魔力量が乏しいので魔力枯渇で倒れた。とはいえ、ドラゴンを倒す事は凄い事であり、彼女も立派に成長しているのだ。多分。
「向こうも終わったみたいだな」
「ホンマかいな!お前らバケモンや!」
ドラゴンにバケモンとか言われるって喜んでいいのか?
「じゃあ、ウチらの勝ちって事だから、さっき言ってた遺跡に案内して貰おうか」
「分かった分かった。約束やからしゃーないけど、その前に里に寄ってってや?竜族みんなで歓迎したる」
「いえ、結構です」
だが、断る。なんか面倒くさいから。
「そんな事言わんと寄って行ってや〜、美味い飯に酒、温泉もあるで!」
うっ!ちょっと温泉とか気になる。
「うー……ちょっと、相談して来ます!」
戦艦ミカサに戻り、ジスに事情を説明すると補給も出来そうだからと言うことで割とすんなりいった。
「じゃあ案内するから着いてきい!」
ライズさんは負傷した2匹のドラゴンを担いで戦艦ミカサの先を行く。
いざ竜族の里へ――
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