第4章
第1話『魔族国デスニーランド』
大陸西側一帯は瘴気の森を境に魔族の支配する領域、魔族国デスニーランドがある。
人族は瘴気の森を越える事は出来ない。
魔族国の入口にはデストロイ要塞があり、そのため、人族にとっては未開の地であった。
セイコマルク王国から
初めての魔族領だ。
「こ、これが魔界!」
魔界には悪魔とか吸血コウモリとか、ワケわからない何かとかが飛んでたり、池は紫色で毒だったり、とりあえずなんか夜みたいな魔界を想像していた。
だが、予想は大きく違いました。
そこには美しい緑と鮮やかな花畑が広がる世界だった。
まるで天国を絵に描いた様な景色。
魔界と言うには、美しすぎる世界だ。因みに普通に昼だ。夜は普通に夜だそうです。
一行は魔都に向かう前に魔女ノアの屋敷を訪れた。
目的はエイルの愛刀、雷電丸の破損についてだ。
魔女ノアの屋敷は魔族領北部にある森林に囲まれた場所にあり、その先には邪神アルテミスを封印した禁断の地がある。
ノアの屋敷はごく普通の平屋の家屋だった。
玄関に近付くと勝手に扉が開いた。
「いらっしゃい。今日は何の用かしら?」
魔女ノア
先々代の魔王にして先代勇者の妻。ミカエルの叔母で純血の吸血鬼。
邪神戦争の英雄の1人だから、300歳は超えてる筈だが、見た目はまだ20代位の美しい女性だ。
邪神戦争後は、魔王の座を弟のラファエルに譲り、勇者リョーマと静かに暮らした。
以来、この地に引きこもって、魔術や魔石の研究をしており、時々ミカさんに魔術の指導をしていた様です。
今日も黒いジャージを着ていました。
何かジャージ着てると、学校の先生みたいに見える。
「ノア様、今日はエイルの刀の事で……ってジャージ?」
「ノアさん、こんにちはです」
「ノア様!お久っス!」
「はじめまして、ティファですぅ」
「に、ニャー」
「あら?ひょっとしてマリン?大きくなったわね〜、背だけじゃなくて胸も」
「えへへっス!色々挟めるっス!」
何を挟むんだ?
マリンは『銀の翼』メンバーの中で1番背が高い。
身長は170センチ以上はある。因みに胸もメンバーの中で1番大きいのだ。俺は1番背が低く、胸も1番小さいので……別に悔しくないよ?
「今お茶でも入れるからそこに座ってて」
ノアは急に訪れた俺達に嫌な顔もせず、キッチンへと消えた。
リビングのソファに皆それぞれ座った。
ライトニングは膝の上だ。
少ししてノアが茶を持って来た。湯のみに入ったそれは緑色の液体だ。毒じゃ無いよね?すすってみると日本茶だった。
懐かしさを感じた。
「――それで刀の事なんですが。エイル、刀」
ミカさんが早速本題に入る。
「うい」
俺は鞘から雷電丸を抜き、テーブルに置いた。
「まぁ!随分と酷い状態ね……それで?」
「直せないかと……無理なら代わりになる刀とか無いでしょうか?」
出来る事なら手放したくは無い。使い慣れた愛刀だ。今更、別の刀って言うのも、あまり気乗りしないのだ。
「まず、この刀がこうなった経緯を説明してくれるかしら?普通に使用しても、こうはならないわ」
おっしゃる通りです。
「えと、セイコマルクで神獣と戦って……お、私の天魔法を刀に落として、魔法剣として使ったら、こうなっちゃいました」
「神獣ね……随分無茶な使い方するわね。結論から言うと、直せるわ」
チラリとノアが、膝の上のライトニングを見る。
ノアさんも猫派ですかな?
「え!本当に?」
「だけど、以前より劣る刀になってしまうわ。それだと困るでしょう?」
「……はい」
「まず、この刀が、こうなった原因は、魔力の器を大幅に超えた魔力を帯びたのが原因なの。だから直しても以前より器が弱くなってしまっている状態よ」
「ではやはり諦めるしかないのでしょうか?」
「いえ、方法はあるわ。この刀を素材として使って、魔力の器の容量の高い剣と合成できれば可能性あるわ」
「合成?」
なんか急にゲームっぽい強化方が出て来たな。
「エイルの使う天魔法の属性。天属性の剣と合成させれば、この刀で天魔法の魔法剣が使えるようになるわよ」
「天属性の剣?そんな物があるんですか?」
「ええ、あるわ。アルテミスの剣よ」
「アルテミスの剣?」
「かつてアルテミスが私達と戦った時にアルテミスが使っていた剣よ。恐らくこの世界では最高の剣でしょうね。同レベルの剣は、リョーマが使ってた神刀クサナギくらいでしょうね」
「そんな大層な剣、一体何処にあるんですか?」
「アルテミス城に多分あると思うわ……だけど少し厄介な場所なのよね。クサナギはうちにあるけど、リョーマの形見だから譲れないわ」
「その厄介な場所って?」
「北の大陸の何処にアルテミス城はあると思う」
「「北の大陸?」」
ここ以外の大陸があるの自体知らなかったけど……。
アルテミスの剣か……探してみるしかないかな。
「ノア様。北の大陸にアルテミスの城があるのは確かなんですか?」
「それが、確かとは言いきれないのよ……300年前に戦った時、アルテミス城は空に浮いていたの。アルテミスを封印した事で力を失って落ちて行くのを、この地から見たのよ。それが北の大陸辺りだった」最悪は海の底かもしれないって事か。
「北の大陸ってどうやって行けば良いのかな?船?」
「海路は危ないわね。海域には巨大なクラーケンやら魔物がわんさかいるわ。空が無難でしょうね」
この世界の海の魔物は特に凶悪で強いらしい。
「空飛んで探すのかぁ……大変だな」
「ふっふっふ!実はとっておきの物があるわよ!エイル!」
「え?まさかのどこまでもドア?」
国民的アニメ、猫型チートロボの代表的な便利グッズだ。
「違うし!それを言うなら〇こでもドアだろ!何?どこまでもドアって!いつまでも辿りつかないじゃないの!バカかよ!」
なんか怒らせてしまったみたいだ。
「ミカエル、まさかアレが完成したのね?」
「ええ!9割り方出来てます!航行には問題無いはず」
アレとは?なんだよ!気になるじゃないか!
なんか2人で盛り上がってますね。
「取り敢えず、移動手段は大丈夫そうね。でも丸腰で行くのは危ないかもしれないから、代わりにこの刀を持って行きなさい。昔、刀鍛冶に偶然会って打ってもらった刀よ」
「あ、ありがとうございます!助かります!」
鞘から抜くと黒い刀身に妖しい魔力が紫色に輝く。
大丈夫かな?呪われたりしない?
「一応、それ魔剣だから。普通の人なら取り込まれて狂戦士化するのだけど、どうやら大丈夫そうね」
「って、渡してから言わないで下さい!それと刀鍛冶っているんですか?」
危うくスルーしてしまいそうだったが、確かに刀鍛冶と言った。
「ええ、居るわ。でもかなり昔の事だから、生きて無いでしょうね。子孫でも居れば良いけど。刀鍛冶に関しては私の方で探してみるわ。だからエイル達は北の大陸の方を頼むわね」
「それにしても、北の大陸なんて未知の領域だけど……何か知らないですか?」
「そうねぇ、前にスピカから聞いたのは1000年位前に使徒同士で争いがあって、国とかは全て滅びたらしいわ」
「え?ノアさんは、スピカさんの事知ってるんですか?」
「ええ。良く知っているわ。少しの間だけど、一緒に暮らしていた事もあるの。何も出来ない子でね、弱いし、直ぐに泣くし、でも悪い子では無かったわ。だから今のスピカの話を聞くと信じられないのよ。って確か前にスピカと暮らしてたって言ったわよね」
聞いた様な気もしないでも無い。
「北の大陸なら邪竜バースさんが詳しいかもしれないわ!確か里があるとか言っていたし。聞いてみる価値はありそうね」
竜の里か……なんか嫌な予感しかしない。
竜との相性悪いと言うか、よく出くわすのでね。
「なぁマリン」
「オイッス!」
「マリンは竜族なんだから里について何か知らないの?」
「知らねっス!ウチは物心ついた時には島に居たっス!」
ああそう。マリンに知識を期待したのが間違いかな。
とりあえず、雷電丸の修理は何とかなるかもしれないとの事だ。その為には、北の大陸とやらに行き、アルテミス城を見つけて、アルテミスの剣を回収する。
と言うことになった。
俺たちは魔女ノアの
魔城デスパレスとの直通専用らしい。を使い、魔城へと移動した。
魔城の転移部屋から、魔導式エレベーターに乗り、20階にある魔王玉座の間へと移動した。因みにミカさんが開発したらしいので、魔城にしかない。
何故かノアさんも付いて来た。
「ノア様、な、何で付いて来たんですか?」
ミカさんが意外そうにノアに問いかける。
「だって、アレが出来たのでしょう?見たいじゃない!元々は私が造った物だし!」
一体、アレって何なんだろうか?
そんなやり取りをしていたら――
「「「お帰りなさいませミカエル様!」」」
「あっ、お帰りなさいませ、み、ミカエル様!」
5人のメイドが、ミカさんに挨拶するが、1人タイミングズレてますよ。って良く見たら、剣聖シズカさん?
メイドコスして何してんの?
「うん。ただいま。見ない顔が1人居るみたいだけど?」
「ミカエル様!新人メイドのシズカです。勝手ながら、ジスが採用しました!シズカ!ほら!膝まずき、自己紹介しなさい!早くしないと死ぬわよ!」
「ひっ!あ、あの、シズカです。よろしくお願いしめっす!」
あっ、噛んだ。
「……お前、確か剣聖シズカよね?ウチで本当に働くつもりなら、その命は私の自由にしていいって事よ。本当に良いのかしら?」
「は、はい!身命を賭して働きます!」
「そうか、なら良い。下がれ」
「はいっ!」
おお〜。なんか魔王っぽいよミカさん!
「ジス!シズカの教育は任せるわ」
「承知致しました!」
シズカを含めた5人のメイド達は持ち場へと去って行った。
「さてと、じゃあ早速、アレを見に地下に行くわよ!」
何かウキウキなミカさんだ。
そして、再びエレベーターに乗り、地下へと向かった。
アレと言われる物を見に。
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