第2話『戦艦ミカサ』
魔城デスパレスの地下から、5分程通路を歩き、辿り着いたのは、複数の大型の船がある造船所であった。
「おぉ!」
既に完成している艦と、今まさに建造中の艦やらがあり、造船所内は作業員が、多数、忙しく走り回っており、辺りにはカンカンと作業の音が響く。
「アレよ!」
ミカさんが指さしたのは1番奥にある、巨大な戦艦だった。
戦艦は全てが鋼鉄製の近代的な鋼鉄艦である。
近代的とはいえ現代の軍隊では無い、大艦巨砲主義的な戦艦だ。
大型の主砲が前後にあり、副砲が幾つもある、前時代的な戦艦である。
「ミカさん。これは一体……」
俺はさすがに戦艦を建造中だとは思ってもいなかっただけに、魔族の科学力と、それを建造する技術力に驚く。
「これは帝都砲撃作戦用に建造した、戦艦ミカサよ!本当は
全長120メートル横幅20メートルの鋼鉄艦。
主砲30センチ連装砲が前後にあり6門。前4門、後2門。
副砲15センチ単装砲が両サイドに14門。
その他、3連装機銃が40基。爆撃用の爆弾等が艦底から投下可能である。
速度は最大150キロだ。浮遊力に重力魔法、推進力には風と火の魔石を使ったジェットエンジン。
燃料は機関部に設置された魔力炉に魔石を放り込むらしい。石炭みたいな感じか。排出する物も無いので環境にも優しいミカさん、いやミカサだ。
もっと普通の木造の飛空挺的な物を想像していた。
ホントにこれで飛ぶのか?
「すっかり私の舟の面影ないわね……」
ノアさんが呆れているのか、想像を遥かに超えた物なのか、口を開け艦を見上げる。
「ノア様の箱舟は老朽化で再利用出来たのは心臓部のみでした」
「ミカさん。完成度9割って言ってたけど、見た感じ分からないけど、未完成部分は?」
「艦内の私の部屋がまだ終わってないのよね。壁紙の色とか、ベッドの位置とか……サイズとか?」
いや、大した事じゃないね。
寧ろ、それで1割か?
「それ、どうでも良くないか?」
「何言ってるの?エイルと私専用の部屋よ!快適に過ごしたいじゃない!防音対策もしなきゃいけないし!」
何で防音対策?
「ああそう……」
「とにかく、これで北の大陸へはこのミカサで行けるわ!早急に準備させるから、今日はゆっくりしましょう」
船の旅か。船酔いとか心配だな……海じゃないから大丈夫かな。
俺たちは、造船所を後にした。
◇
造船所から再び、魔城のエレベーターで昇り、ミカさんの居住する階に移動した。
ノアさんは、帰って行った。
魔城デスパレスの21階は王家の専用スペースだそうです。下の階が謁見の間であり、玉座がある。
その他に執務室やら、会議室は19階。
以前は各所に対侵入者用に罠が設置されていたが、身内が怪我するので、撤去されたらしい。
通路を歩いてると、奥から下着姿の美女がこちらに気付き近付いて来る。ミカさんの母サクヤだ。
「あら〜、ミカちゃんおかえり〜、それと〜エイルちゃんいらっしゃい♡あとお友達も♡」
「おじゃましてます」
「ミカエルママこんちわーっス」
「どうも、こんにちわですぅ」
「母様!何で服着てないのよ!みっともないから服着てよ!」
「別に〜家の中で服なんて着る事ないじゃない。そんなにみっともない身体かしら?酷いわミカちゃん。ねぇエイルちゃんはどうかしら?」
「え?あ、えーと……す、素敵ですよ」
「ほら〜♡」
「エイル!」
ミカさんに睨まれました。
実際、サクヤの身体は若々しくて完璧なプロポーションだ。さすが純血の
「それより、ミカちゃん、仕事溜まってるから、暫く外出は禁止ね〜♡」
「え!なんでよ!私達、北の大陸に行かないといけないの!エイルの刀が壊れちゃって、あと軍艦のテスト航行も兼ねてるんだけど」
「尚更駄目よ〜、一国の主がお友達の為にいちいち出張ってられる状況かしら?まだ帝国とは戦争してるのよ〜」
「う……」
ごもっともですね。俺の為にミカさんを連れ回す訳には行かないよね。
ミカエルは考えた。
エイル←アホ
マリン←バカ
ティファ←空気
ダメだ。この3人で北の大陸に行かせたらろくな結果にならない。しかも、エイルの貞操の危険すらありえる。
マリンが危ない。ティファもマリンに協力する危険すらある。絶対にダメだ。浮気は許さん!
今更だが、元々、銀の翼メンバーにまともな奴が居ない?比較的無害なのが、リオか……今居ないけど。
「ジス!」
「はい!ミカエル様お呼びでしょうか!」
何処からか、しゅたっとジスが現れた。
どんな仕組みですか?
「ジス!緊急事態よ!悪いけど、私の代わりにエイル達に同行して、戦艦ミカサで北の大陸へ行ってくれないかしら?」
「えぇ……エイルとですか……」
物凄く嫌そうな顔をして俺を見る。
そんなに嫌いですか?
「ジスお願い!貴方しか頼れないの……」
「!?……ミカエル様!承知致しました!ですが、シズカも連れて行く事をお許しください」
お願いに弱いみたいですね。
「えぇ、構わないわ!宜しくねジス!」
と、言うわけで、北の大陸にはミカさんの代わりにジスとシズカさんが加わった。
「では早速、ジスは旅支度をしますので、失礼します!」
何だか張り切っているみたいで良かった。
◇
「ここが私の部屋よ。私、少し仕事して来るから、ゆっくりしててね」
ミカさんの部屋。と言うより魔王の部屋か。
非常に興味あります。
重厚な扉を開けると……
「お帰りなさいませ!ミカエル様!」
でかいチワワが居ました。
「…………犬?魔獣?」
「一応、魔獣だけど、ペットのラム太郎よ」
「ワンコっス!」
マリンがラム太郎に飛びついた。
「ギャフっ!」
凄いな魔界の犬は大きいのか……
でもチワワが大きいとは驚きだな。
ライトニングがいじめられないか心配だ。
「ミカさん。俺ちょっとライトニングの散歩に行きたいんだけど、いいかな?」
「いいわよ。でも一応、案内役を付けるわね。シュリ!」
「はぁい。お呼びですかぁ?」
またしてもしゅたっと現れた。
現れたのは黒髪のショートボブのメイドだ。パッと見、日本人に見えるが瞳の色が橙色だ。頭には山羊の様な角があり、背中には小さな黒い翼がある。
背丈は俺よりは少し高いが小柄で細身だ。なんか親近感わく。
「シュリ。私の客人の案内を頼むわ。宜しくね」
「はぁい。えーと、シュリだよ。ミカエル様親衛隊、桜花に所属してるんだよ。よろしくだよ」
なんかおっとりした口調でやる気無さげだ。
「エイルでぇす。よろしくなんだよ」
ヤバい伝染った!
「マリンっス!これでも海神ッスよ!」
海神と言うより怪人かもね。
「ティファですぅ。すみません人族です……」
何故謝る?
さてと、ライトニングの散歩だからな。首輪と鎖を造るか。
「錬成!」
錬成で造った首輪と鎖をライトニングにつけた。
「!」
(何?我を繋いで連れ回すのか?)
「じゃあ行こうか!シュリさんよろしく!」
繋いだライトニングを引き、皆でミカさんの部屋を出る。
「ギャッ!」
(待った!首が!首が!歩きます!歩きますから!引きずらないで!し、死ぬぅぅぅ)
急に引っ張られたライトニングは引きずられながら、エイルに連れられて行ったのだった。
◇
魔城デスパレスを出て、城下町を散歩する事に。
途中、城の堀の毒池にライトニングが落ちかけたが、鎖のおかげで助かった。ちょっと泡噴いててたけど無事だ。マリン達はお城散策する言って消えた。
シュリと2人きりに。いや、猫もいるぞ!
町は飲食店や武器防具屋、仕立て屋、雑貨屋等、人族の町とさほど変わらない町だ。建物は木造が多いのが、ファミリア王国とかとの違いかな。
驚いたのは、人族が結構歩いてる事だ。なんでかな?
「人族多くない?」
後ろを歩くシュリに振り向きながら声をかけた。
「今日はぁ、捕虜の帝国兵が強制労働のお休みの日なんだよぉ。だから町はワイワイしているんだよぉ」
帝国兵だったんだ。捕虜、自由過ぎない?
なんか皆、楽しそうに過ごしてる。とても強制労働させられてる様に見えない。
「ミカエル様がね、捕虜に働かせて、給料も与えれば、町で使うから町の商売が成長するんだよ、ウィンウィンなんだよぉって」
「あーなる」
つまり、捕虜に働かせて生産力を上げつつ、町で買い物をさせる事で、サービスの向上に役立つと。更に言えば人族の趣味嗜好も分かる様になる。人族との共存を視野に入れた実験の意味合いもあるのかな。
ミカさん……素敵♡
2人と猫1匹で、てくてくと歩いていたら、帝国兵の数人が近付いて来た。
まさか、ナンパか!ナンパされちゃうのか?
まぁ、それも仕方ない。今の俺は超美少女だからな。
あの。歩く魅了と言われた結城美佳の身体だ。
結城美佳がコンビニでバイトしただけで、客数前年比170%は伊達じゃない!
「し、シュリ様だ!」
「え!本物だ!魔王親衛隊のシュリ様が降臨したぁ!」
「サイン下さい!」
「やっべー!こんな近くで桜花のメンバーを拝めるとは!」
あら?
俺じゃないの?
見るとシュリの周りには人集りが出来、すっかり俺は弾き出されてしまった。
可愛さで負けたのか?なんだろう、この敗北感……
あれ?今俺……女の子として悔しいのか?
否!悔しくなんて……無い!……ちょっと悔しいかも?
ちょっと……女を磨くかなぁ。
ミカさんの為にも。
そんな俺の考えは杞憂で、今、もっぱら帝国兵の間ではミカさんを含む、桜花がアイドル的な人気なのだそうだ。グッズや非公認のファンクラブまであるらしい、てのは後で聞いた。
まぁ今のミカさんが人気なら別に良いか。
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