第4話 『キラーボア戦①』
朝食を済ませた後、ココ村を経つ事になった。
だが、セリスは二日酔いで、昨日の事はあまり覚えていないらしい。
マリンは風邪を引いてしまったようだ。馬鹿なのにね。
ティファは身体のあちこち痛いらしい。
リオはよく寝れたみたいで元気だ。よくあの惨状で寝れたもんだ。
ミカさんはとてもご機嫌がよろしいようです。
「なんかミカエルさん、ツヤツヤしてますね?なんかずるいですよぉ!」
ティファがなんか悔しがってるが、ミカさんは特に突っかかる事もなく、ご機嫌だ。
まぁ色々吸われましたので。
「村を出て二日の行程になります、途中で野営になりますので宜しくお願いします」
ガッツーリから行程の説明を受け、馬車二台に別れ乗り込む。
「では出発!」
村を出て、また退屈な馬車の旅も一日過ぎた。
そんな退屈も明日には王都に着くからおさらばだ。
王都には約30キロくらいの距離まで来ていた。
セリスとリオは馬車の一台目の屋根の上に居た。
「2時の方向に豚さんなのです」
2時の方向にセリスがライフルを構える。
ターン!
「命中」
二人は暇潰しに魔物狩りをしていた。
「セリス達は暇つぶし出来ていいなぁ」
なんてボヤいていたら
「暇なら、〇ンダムでも造って、私に献上しなさい」
なんで異世界でモビルスーツになるかなぁ?
「そんな巨大兵器は造れないよ。まぁ何か造るならリオ用に何かかなぁ」
「あのぅ、私には何か造ってくれないんですか?」
読書をしていたティファが話に入ってくる。
「あんたには呪われた黒い
聖魔法使う人間に呪いの装備とか相変わらずティファの扱いが雑だ。
「酷くないですか!何処のパーティに呪われた装備着た聖魔法使いがいるんですか?まず自分が呪われてんのに聖魔法どころじゃないじゃないですか!」
そんないつものミカさんとティファのやりとりを聞いてたら、何となくリオの装備のイメージが何となく出来てくる。
まず、基本的にリオは格闘だから、篭手とブーツを造る事にした。
2時間ほどして、馬車の窓をセリスが叩く。
「セリスどうした?」
「北西から魔物の群れが近づいてるみたいだ。リオが感づいた」
「わかった、皆、武装して警戒。セリスはマリンにも声かけてくれ」
「承知した」
「あ、あとリオ呼んでくれ」
新しい装備の説明をしないとだな。
目視で魔物の群れが確認出来るくらいの距離になったが、物凄い土煙を上げてこちらに向かってると言うより、東に向かっているので、やや並行しているような感じだ。
「セリス、数は解るか?」
「キラーボアがおよそ3000くらいだな」
セリスがライフルのスコープで確認する。
「キラーボア?」
キラーって付いてるだけでなんか強そうだが。
「大型の猪みたいな魔物だ、基本的に群れで行動するが、あの数は初めてだ」
「あれは単なる群れのレベルじゃありませんね!
ガッツーリが馬を走らせながら近づいて来た。
「ほっといたらどうなります?」
こちらに向かって来てないならスルーもありかな。
「間違いなく王都に甚大な被害が出るでしょうね」
「誰か1人、王都に先回りして
「え?せ、殲滅?ですか?いくらなんでもエイル様に何かあったら、私共護衛の意味ありません」
「でも、野放しには出来ないなら、やるしかないですよね?大丈夫です、無理そうなら逃げます」
「……わかりました!こちらは至急、王都に行かせて応援を呼びます」
「お願いします!では馬車を群れの方に進路を向けて近づいて下さい!」
「了解しました!」
さてと、3000か。正直やった事ないから楽勝とは言えないし、使徒になれないから全力も出せない状況だけど、自信はある。なんか出来そうな気がする。
これくらいやれないと勇者と戦えない。
勇者パーティは数万の魔物を倒したのが事実なら、ウチのパーティの実力を測る試金石になるはずだ。
ガッツーリには、ああ言ったが、俺は端から殲滅する気だよ。
「おーい。みんな屋根に集合してくれ」
俺は皆に大まかな作戦を説明した。
キラーボアの群れに50メートルほどの距離に接近した時
セリスがガトリング砲で先制攻撃を仕掛ける。
ドガガガガ
対魔物用に造った弾丸はキラーボアの体に風穴を開けて行く。土煙に混じり血煙が群れの前方から舞い、爆走中のキラーボアの大群はドミノ倒しの様に崩れていく。
「ガッツーリさん!馬車を停止して下さい!」
「了解しました!馬車停めー!待機!」
馬車を停止させ、護衛隊とティファは馬車付近に待機させる。
討ち漏らしを担当してもらおう。
「マリン!」
「了解っス!」
マリンが先行して突撃して行く。
最大限接近したところで海神の逆鱗でキラーボアの動きを低下させる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっス」
ズウウン
キラーボア周辺の重力変化により、地面が少し沈む。
「よしっ!斬り込むぞ!セリスは援護!味方に当てるなよ!」
セリスは後方馬車上からの射撃で援護しつつ数を削る。
「任せろ!マリンとミカエル以外には絶対に当てん!」
「ウチはいーんすか?」
「てめぇ、後で殺す!」
口ではそんな事言いながらも、キラーボアだけを削る射撃の精度は流石だ。
だが、ガトリングの弾丸の予備はさすがに心もとない。弾丸が切れたらセリスは前衛に加わる算段だ。
「マリンは後方に下がって!セリスとチェンジ!」
指示を出しながら、斬り込む。
密かに編み出した新技をここで使う。
「雷刃之太刀!」
雷電丸に魔力を注ぎ込み、100万ボルトにブーストをかける。それを振り払い、雷の刃を放出する。
鞘から放たれた横一文字の一閃はキラーボア数百体を一気に真っ二つに両断していく。
一刀で斬られたキラーボアの鮮血が大量に吹き上がる。
「さすがっスー!」
左側ではミカさんがキラーボアの群れを蹂躙していた。
「シャアアアアアッ!」
釘バット改でキラーボアをうち飛ばし、叩き潰し、鈍い音を立てながら確実にキラーボアの数を減らして行くが、突進型のキラーボアはミカエルの戦闘範囲を免れ馬車へ突進して行く。
セリスによる射撃で駆逐していくが、その内の一頭が馬車の方に逃れていく。
「しまった!」
「あわわわっ!こっちにキラーボアが来ますよぅ!」
ティファは慌てふためいて護衛隊の後ろに隠れる。
「ここは我々にお任せ下さい!」
ガッツーリが鞘から剣を抜き、前に進み、剣をキラーボアに向けた。
「我こそはファミリア王国近衛隊所属、ガッツーリ・スケベ……ぐはっ!」
ガッツーリが騎士の名のりを上げてる時にキラーボアは突進してガッツーリを突き飛ばした。
当のガッツーリは放り出された人形の様にクルクル回転しながらどこかへ行ってしまった。
「ひぇぇぇっ!ガッツーリさぁぁぁん!」
「た、隊長ぉぉ!」
護衛隊はティファを残してガッツーリが飛ばされた方に走り去って行った。要するに逃げた。
「あぅぅ、し、死ぬぅ……」
「ブルルルっ」
目の前には凶暴なキラーボアがティファに迫る。
ティファを持っている大きな牙で噛みつこうとしたが、後方から飛んで来た槍が後頭部から貫通し、すんでのところで絶命した。
「ヒッ……」
あまりの出来事で言葉も出ないティファであったが地面に尻もちをついた時に下半身から温かい液体が出てしまった。
「大丈夫ッスか?」
マリンがキラーボアの屍の後ろからひょこっと顔を出した。
「マリンさぁぁぁん!」
ティファはマリンを見るなり、涙と鼻水でグチャグチャになった顔でマリンに抱きつく。
「怖かったぁぁっ!」
「ちょっとティファ、服が汚れるっス!ミカエルに殺されるっス!ていうかティファ臭うっス!」
ツンとしたアンモニア臭がするティファを突き放そうとするが、ガッチリと抱きつかれ顔は胸の間に埋もれているティファを引き剥がせない。
「やれやれっス……」
◇同時刻、ファミリア王国王都ファミア
「ファミリアの王都ってセブールの王都に比べるとなんか田舎っぽいね」
宿に着くなり部屋のソファで横たわりファミリアの感想を述べたのは、勇者リュウタロウだ。
「私は結構好きですよ。これくらいでも都会ですよ、田舎ものなので」
スピカはファミリアの王都へは何度か来ているため良い部分もそれなりに知っている。
「それより、折角来たのに竜殺し《ドラゴンスレイヤー》はまだ来てないって残念だなぁ。早くその顔を拝みたいってのに、ボクを待たせるとか無礼極まりないねー!」
到着が遅れているのはファミリア側の事情であり、エイル達のせいでは無い。しかも待たせる以前に約束すらしていない相手に理不尽な要求をするのが、このクズ、いや勇者リュウタロウだ。
「それはあまりにも英雄さんに失礼ですよ〜。何か事情がおありなのでしょう」
約束してないんだから仕方ないだろうが!とツッコミを入れたいスピカだったが、リュウタロウにも優しいスピカだった。
「とはいえ、お時間が出来てしまいましたので私は教会支部にご挨拶に行こうかと。リュウタロウ様はどうなさいますか?娼館などで暇を潰すならよいですが、街の女性に手を出さないで下さいね」
念には念を押しておく。
「それはちょっと厳し過ぎない?」
「駄目ですよ!これ以上悪名広げないで下さい!方々からの苦情に私は耐えられません!」
そんな会話をしている時、街の警報が響き、魔道具による音声が聴こえてきた。
「緊急警報、緊急警報、
「
リュウタロウはまるで他人事の様につぶやいたのだった。
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