第11話 『酒は呑んでも呑まれるな』


 アチナとの会話も終わり、俺は宿に戻って来た。

「ただいまー」

 部屋はミカさんと同室なので、一応ノックしてから入った

 明かりは点いていたが、ベッドにうつ伏せで酒瓶を握りしめていた。


「.........」

 返事が無い。ただの屍のようだ。

 既に寝てました。



 アチナとの話の内容は明日、話すか。

 しかし、話の途中で入って来ていきなり転んだシスター、怖かったな。

 なんで全身びしょ濡れだったのか?

 雨降ってないのに。そのまま放置して来たけど大丈夫だろうか。

 俺は1人浴室に向かった。




 ◇深夜


 俺は寝ていたが、身体が重くなり、ふと目が覚めた。


 するとミカさんが、俺の身体に馬乗りになっていた。


「.........!!」


 え!え?何?

 一体何が起きているのか理解出来ず、心臓の鼓動が早くなって行く。

「あの〜、ミカさん?これは一体.........」


「ふふっ」

 瞳は虚ろだが、艶っぽい微笑みで、こちらを見つめる

 そのまま顔を近ずけて.........唇を重ねて来た


「んっ、んーっ!」

 マウントポジションを取られているので、俺はバタバタする事しか出来ない。


 ミカさんの舌が口内に入り込んでくる


 口内を舌でまさぐられてると、身体に異変がやって来た。

 力が抜けて行く.........下腹部の辺りが熱くなってるのを感じる。ヤバイ!ダメだ!ダメだ!

 今まで感じた事の無い気持ち良さを体感する。


「ぷはぁっ」

 なんとかミカさんの唇から脱出したが、依然マウントポジションである。

 見るとミカさんは上半身裸になってました。

 月明かりに照らされた、その白く美しい裸体はまるで絵画の様にそれは、それは美しく.........って、イカン!


 ピロン。

 スキル魅了、誘惑獲得。

 淫魔式マッサージ壱の型獲得。

 魅了耐性獲得。


 いや、要らないから!耐性は良し!


 ミカさんの攻撃?は止まらない。

 ミカさんの手が俺の服の中へ侵入して来る。

「やっやめ、ろっ」


 このままでは身体だけでなく本当に女にされてしまう!

「た、助けて.........」




 ◇同時刻、別室


 セリスは超爆睡していた。元々、酒に弱く、酒の席での失敗は数しれず.........なので普段は余り飲まない。

 が、今日はエイルと、あの嫌らしいあばずれ、ミカエルとか言う女とのパーティ結成の席と言う事で久しぶりに酒を飲んだ。飲みきれなかったが。


 ところが何かを察知し、起き上がった。

「エイルが危ない!」

 セリスは一応エルフなので耳は良い方だ。


 因みにセリスの部屋はエイル達の部屋とは別の階にある、一人部屋だ。

 もう一度言う。別の階だ。


 何だか説明出来ない不思議な力でエイルの危険を察知したセリスは、脱ぎ捨ててあった宿屋備え付けのバスローブをバサッと羽織り、部屋を飛び出した。


 もの凄いスピードでエイル達の部屋の前に到達した。

 約5秒


 そのまま体当たりでドアを吹っ飛ばすと、ベッドの上で裸のミカエルがエイルに跨り、その豊かな胸を揺らしていた。

「くっ!先を越されたか!」



 セリスが来てくれた!

 問題発言が聞こえた気がするが、今はそれ所ではない。

「セリス!助けてくれ!」


「承知した!任せろ!」


 セリスがミカエルを羽交い締めにしてベッドから降ろそうとするが、ミカエルの両脚が蟹バサミ状態で身体をガッチリと離さない。

「この淫魔サキュパスがぁぁ!」

 セリスが必死に引っ張るが離れない。

 が、その時


 クローゼットの扉が勢いよく開き、中からマリーが出て来て、ミカエルの脚を離そうとする。

「助太刀致しますぜ旦那!」


 やがて、脚が外れ、セリスがミカエルをジャーマンスープレックスで床に落とした。

「ぶっ!」


 尚、ジャーマンスープレックスをしているセリスの下半身から見えてはいけないものが見えてたのは秘密だ。


「目標、完全に沈黙!我々の勝利であります!」

 ビシッと敬礼するマリー。

「うむ。協力に感謝する」敬礼で返すセリスさん


「ではあっしはこれにて失礼しやす」

 そう言ってくるっと回転して部屋の外へ出ようとするマリーだが。


「ちょっと待て」

 ガシッとマリーの肩を掴む。


「なんでマリーがクローゼットから出て来たんだろうねぇ?」

「あっ、た、たまたま偶然通りかかりまして.........」


「ちょっとお仕置きが必要だねぇ」


「ヒィィ!お許しを代官様ぁぁ」


 マリーは縄で縛り宙ずりにしておいた。

「頭にー血がーのぼーるー!くっ殺せ.........」


 ミカさんは布団でぐるぐる巻きにして部屋の隅に放置。


 セリスは自室に戻った。

 正直セリスが来てくれなかったら危なかったな。

 後でちゃんとお礼しないとだな。


 なんか汗だくになったので、もう一度風呂に入り、新しい下着に着替え、そのまま就寝した。





 ◇翌朝


 目が覚めると、吊るしてたはずのマリーは消えていた。一体何者なんだろうか?縄抜け出来るんだ?


「ちょっと!何よこれ!エイル起きてんなら、助けなさいよ!」

 布団でぐるぐる巻きにされたミカさんが、ゴロゴロ転がりながら、訴えてくる。


「ハイハイ」

 布団から解放してやると、ミカさんは自分の状態に驚いた。


 パンツ一丁である。上半身の豊かな物が丸出しだ。


「きゃっ!」

 慌てて胸を隠し、顔を真っ赤にして、こちらを睨む。


「お、覚えてないけど何があったの?」


「ええっ?!あんな事しておいて無自覚ですか?危うく俺は堕ちる所だったよ!」

 事の顛末を全て説明した。



「……ごめんなさい、お酒を呑み過ぎて迷惑をかけた事は謝ります」

 服に着替え、正座したミカエルが、うつむき加減で謝る。


「わかったから顔を上げろよ。今回は許すけど、暫く酒は控えてくれ、大体ミカさん無一文だろ」


 宿代、飲食代は俺の資金から全て出している。

 人の金で浴びる様に酒呑んだ挙句、醜態晒してる訳だ。本当に反省して貰わないと困る。


 コンコン


 部屋の扉(昨日セリスがぶっ飛ばしたので壊れてる)

 をノックしてセリスが顔を出した。


「エイルおはよう。ん!淫魔に説教中の所すまない、朝食の時間だが、大丈夫か?」


「淫魔言うな」

 ミカさんが涙目でセリスを睨み付ける。


「はい!この話はもう終わったから朝ご飯食べよう!」

 ケンカになりそうなのでさっさと話題を変えてしまおう。


「あ、朝食の後で今後の行動について話すから宜しく」

「ん、わかった」

「承知した」


 俺達は部屋を後にし、1階の食堂へ降りた。

 途中、宿のオーナーに声をかけられた。

「昨晩はお楽しみでしたね!」


 楽しんでねーよ!




 ◇教会◇


 ティファは気が付くと礼拝堂の床だった。


「.........あれ?」

 どうやら昨日転がり気絶したようだ。


 辺りを見渡すと礼拝堂はいつものシンとした見慣れた雰囲気になっていた。


「夢.........だったのかな?」


 憧れの聖女と天使の様な美しい美少女が礼拝堂に居た光景が無かった事なのか、ティファは酷く気を落とした。


 礼拝堂の扉を開けると、朝日が眩しく礼拝堂を照らす。


 礼拝堂の外には一人の美しい女神が立っていた。



「やぁ!お目覚めかな?心配で帰れなくてね。起きるのを待ってたんだよ」


「夢じゃなかったんですね!」

 ティファは歓喜のあまり涙を流しながら、屈託の無い笑顔で女神に手を合わせた。


「あ、アチナ様!差し出がましいお願いなのですが、サイン下さい!」

 何処から出したのか、正方形の色紙とペンを差し出した。



「構わないけど、神のサインとか誰も信じないと思うよ」

「いいんです!宝物にします!あ、ティファちゃんへってお願いします!」


 アチナ参上!ティファちゃんへ と書かれた色紙を受け取ると、胸に抱きしめ号泣しているティファ。


「そ、そこまで喜んで貰えると神やってて良かったよ」

 苦笑いするアチナ。


「.........実は、君に頼みたい事があってね、こうして下界に留まったんだが」


「はい!なんなりとお申し付け下さい!至高なるアチナ様の為ならば、この身体朽ち果てようとも必ずやり遂げて見せますぅ!」


「昨日居た少女の事なんだが、あの子の力となって、暴走しない様に支えてくれないか?」


「はい!やって見ます!」

 ビシッと敬礼するティファ。最早シスター感がない。


「ありがとう、君にこれを授ける、エイルを頼んだよ!」

 アチナは身に付けていた腕輪をティファに渡した。


 ティファは女神の腕輪を手に入れた。


 女神の腕輪

 魔力ブースト500% 聖属性魔法オールアンロック

 状態異常無効 女神の加護



「じゃあ頼んだよ!ボクはこれから友人とBBQなんで失礼するよ」

 そう言ってアチナは消え去った。



「.........アチナ様って結構リア充なんですね.........」


 ティファは青空を見上げて呟いた。


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