第5話 『サンク市』
お昼過ぎ、約束してたとおり、セリスさんと兵舎前で待ち合わせした。荷物も無事に返してもらった。
「それではエイルさん、私がご案内致します。どこか希望はありますか?」
「とりあえず、衣類と下着を揃えたいのでよろしくお願いします!」
「かしこまりました、良い仕立て屋がございますので、ご案内致しますよ」
サンク市の正門から大通りが商業区で、左右に西通り
東通りがあり、西が工業区、東が農業区。大きく分けるとそのように別れている。住宅はそれぞれの区ごとにあるようだ。サンク市には約20万人住んでいるそうだ。王国二位の都市だそうだ。
ファミリア王国にはサンク市の他に港町サクルとココ村の二つあるらしい。首都は別にあるらしい。
多種族国家なんだそうで、人族、エルフ、ドワーフ、亜人が暮らしている。
街並みはブラウンを基調にした石造りの路面で建物も、上手く合わせた印象だ。
歩道には街灯があり、夜道も明るそうだ。電気?ガス?それとも魔法でしょうか?照明事情も気になる。
大通りには馬車が行きかう。移動手段は馬か……
パッと見の文明レベルは19世紀くらいかな?
19世紀見たことないけど。
地球の19世紀と違うのは人じゃない種族が歩いてる点かな。
町を歩いてる人々は人族、エルフ、亜人種など様々な人種がいた。
「あっ、獣耳だ!本物だスゲー!あれはドワーフかな?ドワーフなんだろうなー、ラリホー!」
まるでゲームや映画のシーンを見てる様だ。異世界ファンタジーだ。
「エイルさん。あまり人に指さしたりしたら駄目ですよ!それに、あれはドワーフでなく、ただの短足なおっさんです」
色々と話ながら、商業区の店に着いた。
「ここは、女性冒険者がよく利用する仕立て屋です」
女性?あ、そうか俺は今は女性か。ていうか女の子だよ。
なんなら子供服でもいけます。ちびっ子です。
「いらっしゃいませー。あらセリスちん、お久しー!」
血のように赤い髪の女性が元気よくあいさつしてきた。
「マリー、今日は客人を連れてきたのでよろしく頼む」
「あら、可愛らしいお嬢さんね!はじめまして、この店の店主マリーちゃんだよ!よろしくね!」
「あ、エイルです、よろしくお願いします」
「エイルちゃんね!今日はどんな衣服がご希望かしら?」
「えーと、冒険者用の服と、普段着を幾つかお願いします」
「いやー、久々に創作意欲のわく逸材ですな!本当に天使みたい!」
みたいじゃなくて天使です。まぁ元の持ち主は悪魔みたいな女だったが、それは語るまい。死んだ人の悪口は言いたくないからね。
「あ、あまり露出が多くないのと、派手過ぎない様にお願いします」
「かしこまりました!ぐふふ」
ちょっと嫌な笑いが聞こえたが、異世界の服装の常識など解らないので、任せるしかないだろう。
そもそも既製品の服(新品)は基本無いらしく、庶民は普通、生地を購入して、自前で作るのが一般的だそうだ。考えてみれば、日本でも既製品の服装等は昭和くらいからだろうか?
庶民レベルで既製品の服を買えるなんて近代国家でも
先進国だけだろうか?
如何に日本に生まれて良かったと感じずにはいられない。かなり脱線した。
「それじゃ、採寸するからじっとしててねー」
俺は言われるままに両手を横に広げたり上げたりした。
メジャーで胸囲を測られたとき
「まだまだこれから大きくなるからね~、強く生きてね~」
なんか励まされた。
「うん、もう大丈夫だよ」
「明日までには必ず、命に替えましても完成させます!」
「はぁ、よ、よろしくお願いします。」
とても不安だが、任せよう。
マリーの店を出て大通りを正門方面に向かって歩いて行くと、宿屋街、食事処が立ち並ぶがあり、その一角にある冒険者ギルドに着いた。
建物は二階建てだ。
中に入ると、正面に受付があり、1階の大半は食事処兼酒場。受付の右の壁に依頼関連コーナー。
うん。ありふれた冒険者ギルドだ。
全異世界共通ですか?
キョロキョロしながらセリスの後ろを歩いていると
受付の女性が声をかけて来た。
「あら、セリスじゃない、珍しいわね。軍をクビになったの?」
「違うぞ、今日は道案内で、冒険者希望のお客様を連れて来たんだが、新規登録頼めるか?」
「冒険者希望って、その子が?まだ子どもじゃない?」
子どもに見えるかやはり……
「そうだ、よろしく頼む」
「改めてよろしくね!私は受付担当のローザよ。セリスとは古い知り合いで、一緒にパーティーを組んでた事があるの」
髪はセミロングで栗色の髪。眼鏡がまた良く似合った美人だ。委員長みたいな感じかな。
良くいるタイプの受付の方ですね。
「エイルです、よろしくお願いします」
とりあえず自己紹介的なものをして、渡された書類に必要事項を記入する。
不思議と、この世界の文字は読めるし、書くことも
出来る。あれか言語理解的なチートだな。
「じゃあ次に、この魔道具の中心に手を置いてくれる?」
む?魔力測定器とかでしょうか。
丸い水晶を想像していたけど、平べったい石の板だ。
よく、異世界ものの定番でいきなり測定不可とかでギルドが大騒ぎになったりとかするよね?
「フッ、英雄の誕生だな。案外お前みたいなやつが魔王を倒すのかもしれないな」とか言われちゃうかな~。でへへ。
まあ、魔王居ないんですけど。
手をかざすと青白く光り、そして直ぐに消えた。
「はい。もう結構よ」
手を離すと、何やらカードを石版に置いた。
すると、カードが光り、直ぐ消えた。
「はい。出来上がり。あなたのギルドカードよ」
思っていたより簡単ですんなりいった。
魔力装置破壊とかのパターンも想定していただけに正直残念。
「まず、カードの説明をしますね、依頼を受ける際と完了した際に必要になりますので、無くさない様にお願い致します。再発行は銀貨5枚かかります。
今回は夏の新規入会キャンペーン中なんで登録無料で、今なら銅貨1枚、1000ジルで決済機能も付けれますが、いかがなさいますか?」
電子マネーかよ!って頭の中でツッコミを入れたが、便利そうなので決済機能を付ける事にした。
依頼の報酬も自動入金されるので、有難い。
ギルドの口座開設も完了した。
セキュリティは2段階云々って言ってたが、ちょっと何言ってるのか解らないので、適当に頷いてやり過ごした。
因みにジルペイと言うらしい。
「今日はありがとうございました。お陰で明日からの職にありつけましたので、なんとか生きて行けそうです!」
「いや、お安い御用だ。あとは何かありますか?」
「そうですね、出来れば少し剣術の指導をしてくれる場所とかないですかね?」
剣術スキルはこの先必要になるので、覚えておきたいところだ。雷電丸を使いこなせる様にはなりたい。
「それなら私が、指導致しましょうか?
刀は専門ではないですが、基本剣術なら指導できますので」
「是非お願いします!」
これは大変有難い。フレオニールとかはちょっと嫌だとか、思ってただけに、渡りに船だな。
美人エルフに弟子入りなんて異世界来て良かったなぁ。
「ところでエイルさん。宿はお決まりですか?まだ決まっていないなら、宿もご案内しますよ」
「よろしくお願いします!何から何まですみません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます