第3話 『初陣』
突然現れたドラゴンの不意打ち。
初めて出会った異世界の人?いや、魔物がドラゴンとか怖いんですけど。普通、最初の街付近はスライムとか、ゴブリンとかにしてくれませんかね。負け確定イベントでしょうか?
そんな事を考えていたら、ドラゴンが口を開けて強烈なブレスを吐き、襲って来た。
「あぶねっ!」
咄嗟に飛んで躱したが、先程まで立っていた場所に大穴が開いていた。当たってたら即死じゃないですか!
どうしよう……戦うしかないのだろうか?
しかし、そんな事よりも、実はオシッコがしたい。
我慢出来ると言えば出来なくはないけど、戦ってる最中に漏らしたら、ビビって失禁したと間違えられるのは嫌だ。ここはひとつ……
「お、おい!ドラゴン!ちょっと待て!」
話し通じなかったらアウトだ。色々な意味で。
「……待てとは、どういう事だ。娘」
通じた!なら交渉の余地はありそうだ。
「み、見逃してくれませんか?見ての通り弱っちい子ですし……」
戦闘回避が一番望ましいのだ。
「貴様が弱いだと?笑わせるな!我の必殺技、不意打ちアタックを受けて死ななかった奴は初めてだ。おい娘!貴様は人族では無いな?」
「ち、超普通の人間ですよ!キャーこわーい」
「嘘をつくな!その背中にある翼はなんだ?人族に翼など無い。悪魔族とも違うな。正直に言わないと殺すぞ!」
お?正直に言えば殺されないのかな?
「えーっと、実は天族をやってまして……」
アチナに秘密にしとけと言われていたけど、仕方ないので正直に生きよう。
「天族!天族だと?そうか……ならば戦うしか無いようだな!最強種と言われる天族と戦えるなど幸運の極みよ!」
えー?逆効果かよ!天族強いの?なったばかりで実感ねーよ!しかし、戦闘回避は不可みたいだ。
なら仕方ない。
「分かった……戦うから、その前にオシッコがしたい!だからちょっと待って!」
「な、何だと……だが、どうせ死ぬんだ、今更排泄など無意味!行くぞ!」
「待てって言ってんだよ!仮に死んだとして!このままだと、出ちゃうから!綺麗な体で死ぬなら良いけど、お漏らしは恥ずかしいから!お願いします……」
もう膀胱がパンパンだ。これ以上は我慢出来ない。
決死の覚悟でオシッコしたいと懇願した。
「……分かった。早くしろ。逃げようとしても無駄だぞ!もし逃げたら近くの街を襲い、1000人は殺す」
「好きにしてくれ、街の人とか知らないし。じゃあちょっとオシッコして来るから……」
「お前、結構薄情だな……」
今は街の人より、自分の身の方が大事だ。替えのパンツは無いからな!
さてと……するか。
ところが、ある問題に気付く。
立ちションが出来ない!なんてことだ!
一体、どうすればいいんだ?初めてのトイレと言うイベントが、まさか外でとは!
しゃがんでするしか無いみたいだな。仕方ない……
下着を膝まで下ろして、しゃがんでみた。
いや、待てよ!どうやって出す方向を調節するんだ?
男の時は自在に操れたけど、砲身の無い状態はどこに飛ぶか分からないじゃないか!パンツに直撃したら大変だ!ならばもう全部脱ごう!
俺は万が一に備え、全ての服を脱ぎ捨て、草原でオシッコをした。
「あー……」
ようやく尿意から解放され、爽やかな風が心地いい。
「お前、かなり大胆な奴だな」
一瞬、ビクッとしたが、そうだった。ドラゴンさんが後ろでオシッコ終わるの待っていてくれたのだ。
じゃあ気を取り直して……
「スッキリしたから帰っていい?」
「ふざけるな!我と戦え!」
あー、やっぱり戦うのね。
よし!やるだけやってみるか!
腰から下げていた雷電丸を鞘から抜き、構える。
「クックック、そうだ、それでいい。ゆくぞ!」
ドラゴンは再び口からブレスを俺目掛けて吐いた。
吐いたって言うと、汚い感じするけど、なんか強烈な火炎みたいな奴です。
「銀翼!」
俺は銀色の翼を盾の様に体を覆いブレスを受け止めた。
すると……
おや?頭の中に知らない声が聞こえた。
しかも今のブレスを覚えたらしい。
ひょっとしたら、ものまねスキルの効果?かもしれない。
「次は俺のターンだ!」
雷電丸を構え、全力疾走で突撃する。
ところが、自分自身のあまりの速さに驚く。
「
元々運動神経が良い方で、徒競走にも自信あったけど、速さがケタ違いに向上している。異世界パワーですか?
という訳で一瞬でドラゴンとの間合いを詰め、雷電丸を全力で振り下ろす。
「うりゃああああああああぁぁぁ」
雷電丸がドラゴンの体を真っ二つに引き裂く。
……つもりでした。
ギィンと音を立て、雷電丸は弾かれ、くるくると回転しながら、ちょっと離れた地面にサクッと刺さった。
「あれぇぇ?」
やはり素人剣術ではドラゴンは斬れないらしい。
そりゃそうだ。俺はまだLv1だもん。
「余所見とは舐められたものよ!」
余所見しちゃってた俺に容赦ないドラゴンの拳がヒットして20メートルぶっ飛ばされた。測ってないけど。
「がっはっ!」
地に転がり、起きようとしたら、口から大量の血を吐く。
「ゴホッゴホッ!」
「クックック。脆い体の様だな!バラバラに引き裂いてやるわ!」
畜生……俺はこんな所で死ぬのかな……転生したばかりだってのに!死ねない!俺はこんな所で死ぬ訳には行かないんだ!絶対に生きてやる!
だって……だって!まだ、まだご飯も食べて無いんだから!
「こんな所で死ねるかぁぁ!」
「な、何?なんだその力は!」
そうだ。まだ街にも入ってないし、エルフとか獣耳とかにも会ってないんだぁぁ!だから死なない!
「ドラゴンブロウ!」
渾身の一撃をドラゴンの腹に入れるとドラゴンの体がくの字に折れ、頭が下がる。
そのままドラゴンの頭を掴み、肩に乗せて引っ張ってぶん投げた。一本背負い投げだ。因みに柔道部に居た事がある。
「ぐおおお……」
受け身も取れずに叩き付けられたドラゴンが地に這いつくばっている所に追い討ちをかける。
「ヘブンクロス!」
広範囲弩級攻撃魔法ヘブンクロス。
とりあえずこれしか使えないので使ってみた。
すると、天から一筋の光がドラゴンに落とされた。
ズドンっと強烈な音を立て、ドラゴンの体が浮き上がる程だ。だが、まだまだ足らない。
「ヘブンクロス!」
「ヘブンクロス!」
「ヘブンクロス!」
連続で弩級攻撃魔法を打ち込む。
だが、突然意識が朦朧として来て倒れ、意識を失った。
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