第2話 『ガチャ』
「それでは君に名を与える。これからはエイルと名乗りたまえ!」
体が突如、輝き出し、長い黒髪が銀色に変わり、背中には銀色の翼が生えた。頭には天使の輪ではなく、何故かアホ毛が生えた。何で?
しかし、翼があるって事は空も飛べるのかな?
飛んでみたいけど、高い所とかちょっと怖いかな。
「翼は自在に収納出来るから安心してくれて良いよ。また、防御や攻撃にも使えるから、練習しておくと良いよ。でも、あまり人に見せちゃダメだよ。使徒である事は、秘密で」
秘密なんだ。大丈夫かな、自信ないな。
因みに翼を展開している時は使徒モードらしく、全能力が150%ブーストだそうだ。だが、あまり人前では出来ないのが欠点だった。
「ではでは!お楽しみのスキルゲットの時間だよー!ほら!喜んで!」
「わ、わーい」
よく分からないけど貰えるものは貰っておこう。
すると突然、巨大な福引のガラポンが目の前に現れた。
まさかとは思うが、回せと言うのだろうか?嫌な予感しかしない。
「ガチャですか?」
「うん。そうだよ。何が出るかは君の運次第!」
運任せでスキルを決めるのか。ハズレを引いたら不遇な人生確定か。
「因みに特賞は何ですか?」
やや、テンション下がり気味ですが、聞いてみる。
「特賞は不死身、剣聖、賢者辺りかな」
うーん。剣聖とか強そうだな。賢者って頭良くなるのでしょうかね?不死身はなんか死なないだけで弱そう……
まぁ、悩んでも仕方ないので、回すか!引きの強さを見してやる!
「どおりゃあああ!」
俺はガラポンの持ち手に捕まり勢い良く回した。
ガラガラガラガラガラガラ
コロン
ガラポンから白い玉が転がり出て来た。
「どれどれ……えーっと、ものまねスキルだねぇ」
「ものまね?」
「うん。ものまね。ま、まぁ、上手くやってくれよ多分君なら大丈夫だ」
まさかハズレなのか?
一体何をものまねするんだろう。その時はまだ、このスキルの特性を理解してなかった。
「それと、欲しい武器とかあれば、ここから好きな物を持って行くといいよ。どれもかなりの業物だよ」
いつの間にか現れたダンボール箱の中に無造作に剣やら、槍等がズラリ。管理が雑だ。
「あっ刀だ」
一際長い日本刀があったので手にする。
「それは、マサムネだね。伝説級だよ。建物も斬れるらしいよ」
建物斬るってどんな状況でしょうか?なんかのラスボスが持ってそうだな……。星に復讐とかしそうな奴。
とりあえず、マサムネを持ち、鞘から抜こうとしたが、長過ぎるのか、俺の手が短いのか、刀身の半分しか抜けない。
「子どもには無理みたいだね」
「子ども扱いするな!ちょっと小さいだけだ!」
何しろ、この結城さんの体は小さ過ぎる。変だな。
「あのさ、ちょっと鏡とか無い?全身見えるやつ」
「うん?ああ、分かったよ。それ!」
何も無いところから鏡が、現れた。
鏡に映る自分の姿を見る……やはり結城美佳だ。
髪は銀髪。瞳は金色だが、紛れもない結城美佳の見た目だ。元々小柄だが、更に幼くなってる気がするのは気のせいか?一応、大学生だったはず。
「あのさ、年齢設定はいくつなのかな?」
「あぁ、10歳だよ」
「完全に子どもじゃねーか!そりゃマサムネどころじゃねーよ!これじゃ街に行っても門前払いのオンパレードだよ!せめてこの世界の成人にしてくれ!」
「えー?可愛いのに勿体ない。でも確かに10歳で1人旅は不自然か。仕方ない、設定を15歳に」
すると体が輝き始め、急激な成長を始める。
ところが……さほど身長は伸びなかった。数センチだ。
若干胸が膨れた気もするが、安定の貧乳だ。
身長140センチって所か。チビッ子だな。
成長してもマサムネは抜刀出来ないので、小振りな刀を見つけたので、それにした。
「それは雷電丸だよ。その昔、雷様を斬った事により、雷の属性が付いた伝説級の刀だ。君の背丈には丁度良いかもしれないね。ぷーくすくす」
馬鹿にしやがって……そもそも体間違えたのはそっちじゃないか!
「じゃあこのデンデン丸は貰ってくよ!」
「雷電丸ね。あと、この鞄にお金とか入れといたから持って行くといいよ」
「うん。ありがとう。でもその前に、なんか服くれ。このヒラヒラした服で外歩くの危なくない?旅の格好じゃないよ?下着も付けて無いし。なんかスースーするし」
「仕方ない。下着はこれでいいかな?服は一応冒険者風の普段着を用意しよう」
仕方なく、出された下着と服に着替えた。
ブラの付け方に苦戦したが、無事に出来た。
「ありがとう、じゃあ行って来ます」
「よろしくね」
いつの間にか出現した巨大な扉。
「さぁ!その扉の向こうは剣と魔法のファンタジー系な世界が君を待っている!行け!我が使徒エイルよ!」
ビシッと何故か扉を指す。
「ふっ、決まった……」
「痛いね」
という訳で、今は異世界の空を飛んでいる訳で。
しかし、異世界の大地は、思っていた以上に広くて何もない。日本だと田舎でも家が多少は建っているが、この世界だと平原と森ばかりで、町まで行かないと建物すら見当たらないって感じだ。
一番近い街は……確か、サンクだったかな?
現在地は大陸の西南辺りだ。
アチナから貰った鞄に適当な地図が入っていた。
大陸には人族の国家は三つあるらしい。
神聖王国セブール。ローゼン帝国。ファミリア王国。
今居る所から近い街は、ファミリア王国領内みたいだ。
とりあえず早く町に入りたい。
まず、服や生活用品等を買い揃えないと野営すら出来ないので急務だ。
「ステータスの確認をしておくか」
ピコン
目の前にディスプレイの様なものが現れる。
「異世界あるあるだな」
「どれどれ」
名前:エイル 種族:天族 年齢15性別女 職業:天使見習い
ブースト発動中
技能:ものまね 天属性 女神の加護
魔法:ヘブンクロス(敵に弩級範囲攻撃)
装備:雷電丸
天使見習いって?ランクがあるのかな?
女神の加護ってなんだろう?
使える魔法は1つだが、威力は試して使い方間違えないようにしておこう。
そんな事考えていたら、突然背中に衝撃が走った。
「がはっ」
衝撃で弾き飛ばされた感じだ。一体何が起きた?
そのまま大地に叩き落とされ、バウンドしてから
転がり回った。
「痛たた……」
高度20メートル位から落下して、怪我しないとか丈夫な身体だな!
分かった事は何かに攻撃を受けたということだろう
体勢を立て直し、上空を見上げる。
巨大なドラゴンが羽ばたいていた。
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