ものまねスキルは最強です。

紫電改

第一章

第1話 『転生』



 見渡す限り大草原に良く晴れた青空。

 そよ風が草木を揺らし、心地よい春の昼。

 その大地に体を大の字に空を見上げていた。

 なんて、穏やかな日なんだろう。都会の喧騒から離れ、自由な時間。こんなに空を見ていた事は今まで無かった。

「贅沢な時間だな……」


 贅沢な時間。何だか幸せな気分だ。




 ここが


 今、俺は異世界の大地にいる。何故?急に異世界?

 なんでですかね?それには、ちょっと話を遡り……



 ◇



「ハッ?」


 急に気が付くと、辺り一面、真っ白い空間にいた。


 地面。床?も分からない辺り一面、真っ白い、天井も分からない空間にポツーンと立っていた。


「おっ!起きたみたいだね!」


 不意に後ろから女性の声がして、振り返ると白金色の長い髪。黄金の瞳。

 胸元の空いた純白のドレスを着た外国人ですかね?

 でも日本語喋ってる。

 そしてパッと見、ノーブラだ。


「君、視線がやらしいね」


 あっ、バレた。さすが神だ。なんらかの神の力を使ったに違いない。


「いや、普通に分かるよ」


「こ、心の中を覗いたな!」


「うん。でも視線は読むまでもなかったよ。女の子ならわかるだろ?結城美佳ゆうきみかさん」


「は?結城美佳?」


「え?ち、違うの?」


「違いますよ!俺は咲野大河さきのたいがだよ!何であんな性悪女と間違えられないと……あれ?」


 今になって自分の体の変化に気付く。下を向くと、視界に入って来る長い黒い髪。

 絶対フォークボールは投げれないであろう、白くてちいな手。いや、俺、普通にフォークボール投げた事ないけど。

 そして、胸元には、たわわに実った双丘は……無かった。あったのは控え目に膨らんだ程度の胸だ。スッキリしている。

 スッキリ次いでに、お股の辺りもスッキリ!


 ……あぁ、23年間ずっと一緒に頑張って来た、俺の息子が姿をくらました。俺を1人にしないでくれ!友人Aでも構わないから!


「って、どう言う事ですか?」


「おっ、そのセリフになるまで、意外とかかったね。少し暇だったよ……結論から言うよ?えーとね、間違えちゃったみたいだ。ごめんね!テヘペロ☆」


 可愛いじゃないか。いや、そんな事より、テヘペロで誤魔化されただけで、説明になっていない。


「いや、間違えた以前に、ここは何処ですか?地獄としか思えない展開に俺泣きそうだよ」


「地獄とは失礼だね!ここは天界だよ。まぁボクの家だよ。そしてボクはこの世界の神……女神アチナちゃんだよ!因みに地獄なんてないから安心してくれ」



「地獄って無いんだ。なんだ、もっと悪い事しておけば良かったな……いや、それより何で神様?の家に俺は居るんですか?」


「君、死んじゃったからだよ。そして君は特別にボクの子……使徒として転生したのさ!どんなもんだい!」


「え?死?死んだの?俺が?えー……何でだ?」



 俺はさほど回転しない頭をフル回転させ、思い返していた。



 ◇



 2019年5月1日日本

 その日、元号が平成から令和に変わり、新たな時代を

 迎えた日、俺はバイトのため、深夜のコンビニで働いていた。


 就活に失敗し、大学卒業してフリーター(23)

 コンビニ夜勤をしながら、特にやりたい事も夢も無く

 毎日を繰り返して、生きていた。


 だが……今日はちょっと違ったらしい。


 深夜2時を回り、納品作業も大体片付いた所で事件は起きた。入店ブザーが鳴り、店舗入口を見ると、野球帽を被った

 中年?の男性客。因みに帽子は〇鉄バファローズだ。

 珍しい帽子だな!逆にセンスを感じる。


「いらっしゃっせー」

 多分聞こえるだろう位の適当なあいさつをして、売り場のメンテナンスを続ける。


 男性客は、売り場をキョロキョロしながら、入口に近いレジの前に立っていた。


 すると、調理場で洗い物をしていた、別の従業員がレジに向かう。

 結城美佳ゆうきみか(18)大学生だ。いや女子大生だ。


「いらっしゃませ」と言った瞬間に彼女は青ざめた。


 その男性客は、手に大きなプラスドライバーを握りしめながら、「……出せ」

「金を出せー!」

 店内に男性客、改め強盗の声が響く。


 慌てて俺は、レジに向かって走り出した!


 これはアカンやつだろ!強盗だ!


 とりあえず俺は結城さんに代わり、対応する事にした


 本来、マニュアルによると、人命第一なので、犯人を

 刺激せずに、レジ現金を渡すのが決まりだ。

 緊張するが、こんな時こそ、落ち着かなければ!

 俺はマニュアル通りに、レジを開け、現金を適当に

 取り出し、渡そうとしたのだが……


 犯人の顔を目視すると、思わず笑ってしまった

「ぶほっっ!」


 いかにも強盗って言わんばかりのスタイル

 ストッキングを被っていて、しかも少し上につり上がっていて、これでは笑えと言ってる様なものだ。

 とはいえ、最高レベルに犯人を刺激してしまった訳で……

 その瞬間、強盗(笑)は持っていたドライバーを

 俺の心臓に突き刺した……



 ◇



「あー……」


「思い出したみたいだね。じゃあ早速なんだけど……」


「いや、ちょっと待て!死んだのは分かったけど、何で結城さんの体?ひょっとして結城さんも?」


「うん。死んだよ。君の後にね」


「で、間違えたのは戻せないのかな?」


「無理だよ。本当に申し訳ないけど、その体で頑張ってくれ、対して問題じゃあないでしょ、性別くらい違ってもさ」


「かなり問題ありだよ!」


「でも、仕方ないだろう!間違えちゃったんだから!諦めて、使徒として働いてくれ!」


 納得出来ない。だけど、駄々を捏ねても先に進まないので、受け入れる努力をするしかないみたいだ。努力嫌いだけど。


「……それで、俺は何をすればいいの?魔王とか倒すの?それとも人類の敵になって汎用人型決戦兵器と戦うの?」


「それは……多分無いかなぁ」


 多分て!使徒ってあまり良いイメージないでしょ!


 それから、アチナからこの世界について説明を受けた。


 この世界には人族、魔族、亜人族、竜族などの多種族が、それぞれ国家を持っていて、特に人族と魔族は争いが絶えないらしい。

 世界的には危機にひんしている訳では無かったが、人族側が、勇者召喚を300年振りに成功したらしい。

 ところが、突然、魔王が急逝したらしく、魔族側は戦争を終結したいと願い出て来た。

 これに対し、人族の連合軍は、ひとまず休戦協定を結ぶまでに至った。

 とりあえずは戦争は終わって平和らしい。


「そこで君には人界に降りて、世界の状況を見て来てほしいんだよ。平和とはいえ、どうもおかしい気がする。不必要に召喚された勇者、魔王の死。ちょっと嫌な予感がするのさ」


「調査って言われてもなぁ……」


「まぁ、気長に異世界ライフしながらで良いからさ、ね。宜しく頼む」


「……分かりました。あまり期待しないでね!」


 こうして俺は、異世界で過ごす事になった。

 しかも女の子として……



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

☆近況ノートに表紙絵を追加しました|´-`)チラッ

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