第5話 雪視点 8歳の記憶

.....これは、晴斗と私が、まだ8歳だったとき



「あっ、ごめん」

私は、手に持っていた、私が書いた小説を落とした。


「よいしょ。これ小説?書いてるの?」


「.......うん。私、小説家になりたいんだ。.....やっぱりダメ......かな?」


私は、幼いときから小説が好きで、小説家に憧れていた。けれど、他の子達は、そんな私を、気持ち悪いとか消えろとか言って私を蔑んだ。私は何にもしてないのに!なんで私だけ!


「ううん、そんなことない!凄いよ!夢があるなんて!」

「そう.......かな。」


.......けれど、晴斗は、晴斗だけは、ちゃんと私を見てくれた。

........そのときから、いじめはなくなった。私は、晴斗が皆を説得しているのをみた。


......いじめが無くなったことも嬉しかったけど、晴斗が、私のために何かをしてくれたことが、何より嬉しかった。.....そして、晴斗はいつも、私にバレないように(バレてるけど)放課後に皆を説得していた。


晴斗はいつも、何事もなかったかのように、私に話しかけてくれた。ほんとうは、私のためにいじめをなくそうとしてくれているのに。

.........気がつけば私はいつも晴斗を目で追うようになっていた。


「ねえねえ、君が書いた小説みせてくれないかな?」

「....うん。いいよ。」


ちょっと恥ずかしかったけど、晴斗だったら見せてもいいかなって思った。

そして、たったこれだけで、幼かった私は.......恋に落ちた。


....それから私は、出来るだけ、晴斗と一緒にいた。幸運なことに、親が姉妹だったので、よく一緒に遊んだ。お泊まりもした。そして、もっともっと晴斗を好きになった。たぶん晴斗も、わたしのことを.........


突然、晴斗の家族が引っ越すことになった――――



「大きくなったら、私と結婚しようね!」

「うん!約束だよ!」


「好きー!大好き!ギューしよ」

「うん!僕も大好き!ギュー」


.....私達は、泣きながら、最後のハグをした。


中学生になったとき、晴斗が隣の地区に戻って来たということを知った。

......けれど、会いに行く勇気が出なかった。晴斗が他の人を好きになっていたらと思うと、怖かった。そして、胸が苦しくなった。


そして、中学の卒業式が終わったあと、散歩をしていたら、何だか悲しい顔をして、橋の上から川を見ている晴斗を見つけた。なんで晴斗だと分かったのかは、わからない。


私は、勇気を出して、晴斗に声をかけることにした。


晴斗は、私のことは覚えてないみたいだった。.....きっと、あの約束も。

........でも、もう一度、好きにさせてみせる!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「晴斗、夕食できたよ。」

「...............」

寝てるのかな?


「おーい晴斗ー」

「.........」


「晴斗、部屋入るよー」

私は晴斗の部屋に入り、晴斗を揺さぶった。


「晴斗、起きてー」

「んー。枕ー」


「きゃっ!。私は枕じゃないよ!」

晴斗は私に抱き着いてきた。


晴斗がギューってしてくれた!嬉しい!.........まあ、寝惚けてるけど。

.........これで寝惚けてなかったら良かったのになぁ。


そんなことを考えていると、何だか晴斗とキスしたくなってきた。


.......いいよね、キスしても。晴斗がこんな気持ちにさせたのがいけないんだから。


..........私は、晴斗にキスをした。...もちろん、頬に。

本当のキスは、晴斗からしてほしいから、今はこれで我慢。


..........本当のキスをした後は、襲ってくれるかな?襲ってくれたらいいな。

想像したら、何だか恥ずかしくなってきちゃった。


早くそんな日が来ないかな。




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