第33話 第2部 その23
長岡駐屯地、兵舎の地下室である。
ピシッ!ピシイッ!
鞭の音が、断続的に鳴り響いている。
鞭をふるっているのは、中越師団参謀長、真柴中佐である。
真柴は、全裸である。
色白の瓜実顔は紅潮し、目はギラギラと血走っている。
そしてその一物ははち切れんばかりに怒漲し、先端は何やらヌラヌラと光っている。
真柴の全裸の全身からは汗が滲み、湯気さえ立っている。
一方、鞭をふるわれているのは…。
橘藤である。
こちらも全裸である。
全裸で両手首、両足首を鎖につながれ、逆さ吊りにされている。
さらには、その尻の穴には、じょうごが突っ込まれているのであった。
真柴は鞭をふるう合間に、そのじょうごに何やらとろりとした液体を、ビンから注ぎ込んでいる。
当然その液体は、橘藤の肛門から直腸へと、流れ込んでゆく。
真柴はその液体を注ぎ込みながら、やや上ずった口調で云う。
「これはな、「法悦丸」の成分と同じものを浣腸の成分であるグリセリンに溶かしたものだ。これを使って自分と大助は愛し合ったのだ…。貴様が殺した竜宮寺大助は、自分の大事な恋人であった。よくも大助を殺してくれたな…。師団長閣下も、大助を始末することに同意したのだ。いずれ閣下にも復讐するつもりだった。そして、飛んで火に入る夏の虫だ。まさに一石二鳥というヤツだ。…大助と自分は、この特別な媚薬を互いの尻に入れて、至高の愛を確かめ合っていた…。「法悦丸」の陶酔感と、浣腸の強烈な刺激が一つに溶け合い、至高の法悦へと至るのだ…。さあ、そろそろ効いてくるはずだ。心ゆくまで、至高の法悦を、味わうがいい…」
そう云うと、真柴は橘藤の尻からじょうごを引き抜いた。
「う…うむう…」
橘藤は呻いた。
すでに橘藤の全身は、いく筋もの赤いみみず腫れが出来ていて、うっすら血も滲んでいる。
顔に巻いた包帯は、先程真柴に蹴り上げられたために、血で赤く染まっている。
「うぐッ!うぐう…ッ…」
橘藤は何かに抗おうとするかの如く、身体を前後に揺するのだったが…。
しかし、抵抗は虚しかった。
橘藤は尻をギュッとつぼめたが、それが最後のあがきであった。
ブブーッ…。
噴泉のように、液状となった糞が、橘藤の肛門から吹き上げたのだった。
ブブーッ、ブーッ、ブリブリーッ…。
天井まで届くほど吹き上がった糞便は、すべて橘藤の全身に降りかかって来た。
「ワーッハッハッハッハッ」真柴は手を叩いて哄笑する。「愉快、愉快!第七の橘藤もザマはないな!」
もはや出るものがすべて出てしまい、グッタリしている橘藤に向けて、真柴はホースで冷水を浴びせかける。
「厳寒の氷水だ。とくと味わえ!糞まみれの貴様をこうして洗い清めてやるのだ。ありがたく思え!」
真柴はなおも哄笑しつつ、高らかに云う。
さんざんぱら冷水を浴びせると、真柴は天井から下がった鎖の端を、ガラガラと引き下げた。
すると、橘藤の両手首がみるみる上へ引っ張り上げられてゆく。
真柴は橘藤の股間を見て、また笑った。
「なんとまあ情けなく萎れておることよ!俺のを見るがいい!」
真柴は自慢げに己のそそり立つ一物をぶらぶら振ってみせる。
「お楽しみはこれからだ」真柴は云った。「お高くとまった貴様に、真の悦楽というものを教えてやる」
そう云うと真柴は、先程橘藤の下の口にぶち込んでいたじょうごを、今度は橘藤の上の口へとぐいっと差し込んだ。
そこに、ビンからつかみ出した丸薬をごろごろと流し込み、さらにホースの水を流し込む。
「吐くんじゃない!全部飲め!」真柴はじょうごを押さえ付けて云う。「「法悦丸」だ。すぐ気持ち良くなる」
「ごふっ。ごふぉっ…」
橘藤の口から水が溢れたが、真柴はますますじょうごを押さえ付け、ホースの水を流し込む。
橘藤の喉がごぎゅ、ごぎゅと鳴った。
「フハハハハハハ」
真柴は高笑いして、自分もホースの水をガブガブ飲んだ。
橘藤はガクリとうなだれ、口からじょうごが落ちてカラン!と床に転がった。
それと同時に、橘藤が口から「法悦丸」を吐き出したのに、真柴は気付かなかった。
口から吐き出された「法悦丸」は、床を流れる水と共に、流れていってしまった。
真柴はさらに、それから十分ほど、橘藤に鞭を振るい続けた。
「さあ、どうだ。そろそろ「法悦丸」が効いて来たか」
真柴は云いながら、橘藤の髪をつかみ、自分の方へ向かせた。
橘藤の目はとろんとして、焦点が定まらない。
「よし。ではこれを含め!」
真柴は怒漲し切っている己の一物を、橘藤の唇に押し付けた。
橘藤はそれをくわえ込み、しゃぶり始めた。
「うむ、なかなかいいぞ」真柴は満足げに鼻を鳴らす。「だが、ちょっと待て…」
真柴は橘藤の頭を押しやって、一物をその口から引き抜くと、
「次はこっちだ」
云いながら橘藤の後ろへ行った。
「行くぞ」
真柴はそう云うとペッと手に唾を吐き、それを己の一物と橘藤の肛門になすり付けた。
「んぐッ…」
真柴は橘藤の肛門に、己のいきり立つ一物を、ねじ込んだ。
そしてそのまま、グイグイと強引に、律動を始める。
「よく締まっている。流石は第七の橘藤…」
真柴は上ずった声で云った。
橘藤はまったく抵抗する様子もなく、なすがままである。
「どうだ、橘藤」真柴は律動しながら云う。「貴様は華族だそうだな。自分はただの水呑み百姓の小せがれよ。貴様からすれば、下賤の極みよ。その下賤の極みに、このように凌辱される気分は、どんなもんだ?しかも男が男に犯されている。どうだ?これ以上の屈辱はあるまい?もはや生きてはおれまい?これが終わったら、自決させてやる。そこに拳銃も用意してある。フハハハハハハハ。どうだ、気持ちいいか?」
「気持ち…いいです」
腑抜けた声で、橘藤は返事した。
「そうか。ならば今生の名残りだ。最後に自分を気持ち良くさせてもらいたい」
そう云うと、真柴は橘藤の尻から己の一物を引き抜いた。
真柴は今度は鎖の端を引き上げてゆく。
すると、橘藤の身体は床にずしゃっ!と落ちた。
真柴は橘藤の両手両足から鎖を外すと、
「起きろ」
と、その髪をつかんだ。
橘藤はのろのろと起き上がり、ひざまずいた。
「しゃぶれ。自分が精を放つまで、しゃぶるのだ」
真柴は再び橘藤の唇に己の一物を押し付ける。
橘藤の唇が、それをまたくわえ込み、しゃぶり始める。
「うむ…うむ、その調子だ。いいぞ…うむッ…」
真柴は上ずった声で云う。
「うむッ、うむッ…。よし、イクッ、イクぞッ!」
真柴は腕組みして天を仰ぎ、呼吸を荒くしながら叫ぶ。
「おおッ、で、出るッ!うぎゃああッ‼」
上ずった真柴の喘ぎは、突如絶叫に変わった。
真柴は床に仰向けに倒れ込んでいた。
その股間から、鮮血が吹き出している。
橘藤は噛み切った真柴の一物と、口の中に放出された真柴の精液とを、のたうつ真柴の顔の上にペッと吐き出す。
橘藤は素早く部屋の一隅の机の上にある真柴の拳銃を取り上げ、ニヤッと笑った。
そこにはご丁寧に軍刀まで立てかけてある。
橘藤はその軍刀を手にして、悶絶してのたうち回っている真柴の所へ戻った。
「いろいろと愉しい目に遭わせてくれてありがとうよ」橘藤は口辺を血まみれにしながら薄笑いを浮かべる。「だがな、一つ教えといてやる。我が橘藤家で衆道というのはたしなみの一つでな。俺は女を知るより遥か先に、菊門の方を知ったんだ。だから尻をやられることなど何でもない。だが、下賤な貴様にやられたのは確かに屈辱だ。許せん。今ここで殺してやる。だがその前に確かめたいことがある。どうせもうおまえは死ぬ。今生の名残りだ。最後にせめて役に立て。正直に云うんだ」
云いながら橘藤は、真柴の両足首に鎖をかけ、引っ張り上げてゆく。
股間を血まみれにした全裸の真柴が逆さ吊りになってゆく。
「さあ、俺の質問に答えろ」
橘藤は軍刀を引き抜きながら、薄笑いを浮かべて云った。
「どけどけどけどけ!」
阿修羅の如きとはこうもあろうか。
大音声で怒鳴りながら、橘藤が長岡駐屯地兵舎の廊下を行く。
「邪魔するヤツはみなぶっ殺す。おまえらこうなりたいか‼」
その右手は拳銃が握られ、左手には斬り口も生々しい真柴中佐の生首が掲げられている。
兵たちはみな、あまりのことに気を呑まれ、銃を向けてはいるものの、誰一人発砲する者も向かってくる者もいない。
急場を逃れるには、ハッタリを効かすのが一番じゃ。
かつて幼き日の橘藤に、鴫原の大伯父が云った言葉だ。
橘藤はしかし、きちんと元の軍服姿に戻っている。
血まみれの身体はホースの水で洗った。
口もすすいだ。
冷水で全身を清めたので、清々しく、引き締まった心持ちである。
地下室の鍵は真柴の軍服のポケットに入っていたから、開けるのは簡単だった。
大事なのは、時間だけだ。
急ぎ過ぎても、ゆっくりし過ぎてもいけない。
そのテンポとタイミングが、何より大事だ。
いわば、呼吸だ。
橘藤は、真柴の生首をいわば提灯代りに、この急場を切り抜ける。
表へ出た。
もう空は白み始めている。
飛行機はまだ中庭に置かれたままだ。
表へ出ると、橘藤は足を速めた。
飛行機の近くにいた兵たちが、顔を硬張らせて後退る。
背後から銃を構えた兵たちが、おっかなびっくりの屁っぴり腰でやってくるのが気配でわかる。
飛行機にあと20メートルほどになった所で、橘藤は全速力でそこに駆け寄り、コクピットに飛び乗った。
兵たちが、わらわらと駆け寄って来るので、その方に向けてポーンと、真柴の首を放り投げた。
兵たちが「ワーッ」と叫んで散り散りになる。
橘藤はエンジンを掛ける。
プロベラが回り始める。
操縦桿を引くと、飛行機は動き始める。
すると兵が、一斉に発砲し始めた。
しかしその時には、飛行機はすでに、駐屯地の中庭から、離陸していたのである。
雪はすでに止んでいる。
夜中の天気が嘘のように、空が晴れ渡っている。
一方、その頃…。
山中の清水国道沿いの、崖の中の岩屋である。
その中は、ムッとするほどの熱気に満ちている。
そのために、入口を塞いだ雪の内側は、溶け始めている。
その狭い…人二人がやっと居られるほどの空間に、あられもない嬌声が、満ちている。
「やめて、やめてよ。死んじゃうよ…」
「やめたって、凍えて死んじまうよ」
先の、哀願するような声はふみのものであり、後の、冷たく嘲笑うかの如き声は、雪華のものである。
雪蓑を被った下に、全裸の女二人が蠢いている。
雪華の右手は、容赦なくふみの秘芯を責め、その中指は濡れた壺の中に挿し込まれている。
左手はふみの乳房を揉みしだき、唇は唇を吸い、舌を割り込ませ、からみ合わせる。
ふみは、もはやまったくなす術もなく、雪華の手練手管にはまってしまっていた。
ふみは時に雪華の身体を押しのけようとするのだったが、すぐにぎゅっと抱きついて来る。
そして時に、放心したように、ぐったりしてしまう。
だが雪華は、容赦なく責め続ける。
もちろん、雪華はこんなこと初めてだったが…。
少なくとも、このふみに関しては、コツはすぐつかめた。
ふみは濡れているが、雪華だって濡れている。
しかし雪華は、責めることに悦びを感じている。
多分、このふみに今自分がしていることを、ふみが自分にしても、満足はしないだろう…。
今後自分をこのように責めるのは、果たして男か女か…。
いや。
考えなくても、わかっている。
自分を満足させてくれるであろう人は、もうこの世にはいない。
代わりになる人なんて、現れっこない。
きっと…多分…。
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