「気分悪し……、ん?」


 トイレから出てきたオレは、未だにサッパリしない表情かおで手帳を開くと、目の前に、謎の黒いフードを被った人間。

 服装は至って質素で、単色のYシャツ。下半身は普通にジーンズ。

 どちらも長袖長ズボンなので、このクソ暑い中よく耐えられるな、と感心。

 しかし、不気味な空気満々。


「……誰だ? オマエ」


 しかし、その謎人間は微動だにしない。

 そして、ポケットから、一片ひとひらの紙切れを取り出し、俺に提示する。

 それを恐る恐る受け取ると、謎人間は去って行ってしまう。


 そこには、『贄は3人』と、血を想像させる赤い、インクが滲んでいる文字。

 何なんだ……。新しい悪戯か?


 ピコン。


 スマホの通知音が鳴り、ロック画面には柚木から、


『7番線で待つ。遅れんなよ?』


 と、催促のメール。


 すっかりスマホが定着した右手で、素早く返信する。



 催促のメールの下辺りに、出発時刻がどうも御丁寧に表示されている。


『9時57分発、下呂行き、高山本線 7番線にて』


 スマホの時計は、9時55分を示している。

 結構、トイレに籠っていたからな……。腹痛かったし。


 俺は落ち着き払いつつも、7番線への長い道のりを駆けて行った。

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