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7月20日。AM8:12
集合場所の駅前通は、人通りが少ない。
夏休みに入り、皆自宅でゴロゴロしたいのだろうか。
俺だって同じなのだが。
参加者は勿論、俺、充、愛水さん。
本来は映画・ドラマ同好会の部員全員が合宿に参加させられるのだが、部員に対しての酷い行為や、何度も送られる脅迫状のおかげで、次々と辞退する部員が出てきたのだ。警察や学校は、ただの悪戯だと判断し、ロクに取り合わない。
という訳で、俺達が取り合う方針になった。
しかし、向こうも良い表情はしなかった。……何故なら、充が是非にと頼んだのだ……。
結局、向こうが折れて参加する形になった。
何回頼み込んだと思う? あえて言わないでおこう。
「お、晴れてるな」
充は白いつば付き帽子に、第1ボタンを外した状態のYシャツ。
下半身はジーンズの短パンが所々ほつれている。
「良かったですね。そういえば、同好会の皆様は……?」
愛水さん―――愛水は、まるで日焼け止めを塗っていないようにさらさらしている。
ノースリーブの白いフリル付きワンピースは、朝の陽の光に反射して眩しい。
麦わら帽子を浅く被る姿は、幼く見えてしまう。
それに比べ……、やめておこう。
「目的地で待ってるとさ。
しっかし……、何だよ、その大荷物……」
「……別にいいだろ。
クッソ、優柔不断は辛えな……」
「アピールはそのくらいにしておいて下さい……。
でも、何故お二人がドラマ・映画愛好会の合宿に参加されるんですか?」
「ああ、それは……」
「それは俺から説明しよう!」
充が割り込んで来る。
これだからあまり関わりたくないと言うのに。
「なあ、移動した方がいいんじゃねえのか…? もうすぐ列車来るぞ」
スマホの画面を見て、熱弁しようとする充と、なんとなく興味がありそうな愛水に告げる。
そこまで距離は無いが、どうやら人々の活動時間帯に入ったようで、ビジネスマンや開店準備に取り掛かる店舗が増えてきている。このままでは会社員のラッシュに巻き添えになる。
「やっば…!
俺は立ちっぱは御免だッ……」
「いや、心配するとこ、そこかよ?」
「ちょっと、待って下さいよ!」
幸い、まだピークは来てないようで、切符売り場や売店は、がらんどうとしている。
改札でICカードをスキャンし、構内に入る。
【まもなくぅ、8番線に列車が参りまぁす。危険ですのでぇ、黄色い線の内側にぃ、御立ち下さぁい。】
「よっしゃぁ、まだ混んでないな」
「俺、窓際の席!」
「落ち着いて下さいよ……」
高校生が、たかが電車に乗って遠出するだけで此処まではしゃげるのは見っともない。
【8時21分発ぅ、快速ぅ、名鉄犬山線
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