第34話 お見舞い
放課後になって、
とりあえずチャイムを押してみると反応があった。
ままあって玄関から顔を覗かせたのは伊知子さんだ。
「伊知子さん、こんにちは!」
和泉の訪問に少しだけ驚いているようだったけれど、伊知子さんは笑顔を作る。
「あら、こんにちは。和泉さんじゃないですか? どうされたんですか?」
伊知子さんの疑問を聞いて違和感を覚えるが、その正体に思い当たる。
恐らく伊知子さんは、自分が切通と付き合い始めたことを知らないのだろう。だから、伊知子さんは和泉が切通のお見舞いに来た事に不思議に思ったのかも知れない。
……きちんと話しておく、べきなんだろうか?
「切通――いや、えっと、
和泉の言葉に、伊知子さんは小首を傾げた。
「咲希なら、まだ帰ってませんけど?」
噛み合わない会話に疑問が浮かんだ。
「もう治ったんですか?」
「何が、治ったんです?」
「いや、その、切通は風邪で学校を休みましたよね? お見舞いに来たんですけど?」
和泉のその言葉に、伊知子さんは顔を曇らせた。
「咲希は、普通に登校したんですけれど……登校して、いないんですか?」
伊知子さんの言葉に、今度は和泉が虚を突かれた。
高校生にもなって、ずる休みなのだろうか? でも、家にいないのなら、切通はどこにいるんだ?
「あの、和泉さん?」
悩み始めた和泉に、伊知子さんが話しかけてくる。
「少し、お話をしても良いでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます