おまけ ♂ボーナスタイム
「んあ~」
朝、欠伸をしながら目を覚ました。
中学校を卒業し、高校入学までの春休み。
学校へ行く必要は無いし、今は勉強もしなくていい。
今までの疲れを癒すかのように、俺は再び横になって二度寝の遂行を始める。
「失礼します」
「どぅえ!?」
何故か俺の部屋に入ってきた制服姿の麗奈。
「な、何で俺の部屋に? お母さんは?」
「七渡に会いたくなって来ちゃった。インターホン押したら七渡のお母様が入れてくれて、ごゆっくりって言われちゃったよ」
「急に来られてもな……」
突然の来訪に驚く。
心の準備がまったくできていないぞ。
「もしかして嫌だった?」
「いや、麗奈に会えるのは嬉しいけど」
俺は布団をめくってベッドから起き上がろうとするが、それを阻止するかのように麗奈が馬乗りしてきた。
「お、おい」
「じっとしてて」
俺の下腹部に麗奈のお尻が乗っている。
M字になった太ももが俺の身体を包むように動けなくさせる。
なんてこった……
でも、いつかはこんな時が来るかもしれないと心のどこかで微かに思っていた。
「七渡さ、約束覚えてる?」
「約束?」
「あたしが駒馬高校に合格したら、七渡のためになんだってしてあげるって言ったこと」
「ああ、覚えてるよ」
麗奈が勉強を教えてもらう代わりに提示してきた条件。
言われるまで忘れていた。
麗奈と親友になれたことが俺へのご褒美みたいなものだったからな。
それで満足していた。
「今まさに、なんだってしにきたとこ」
「え?」
まさかの麗奈の言葉に耳を疑う。
「七渡は仰向けになっているだけでいいからね。あたしがなんだってしてあげるからさ」
そう言って俺がプレゼントしたセーターとシャツを脱いで、上半身を下着姿にする麗奈。
いや、まじかよ!?
黒いエチエチなブラに麗奈の大きな胸が収まっている。
まさかの展開に胸のドキドキが止まらないぞ……
いやいやちょっと待って!
ぜんぜん心の準備とかできてねーよ!
必要なもんとか買ってきてねーよ!
「ちょっと待てって」
「む~、あたしじゃあんまり興奮しない?」
「いや、するに決まってんだろ。しかも朝だから、それはもう……」
「本当だ、ふふっ」
俺のを確認して嬉しそうにする麗奈。
流石にエッチ過ぎんだろ……
これは誠実でありたいと願う俺も流れに身を任せるしか選択肢がない。
俺のに触れて嬉しくなり過ぎたのか、俺を見つめる麗奈の瞳がハートに見える。
いや、そんなエロ漫画的な表現を人間にできるわけがない……
いやできてる!?
本当に瞳がハートになっちゃってる!?
「ちょっと待て! 瞳がまじでハートになってる! そんなの人間には無理だって!」
「あっ……気づいちゃったんだ」
「え?」
「バレちゃったのならしょうがない」
麗奈の背中から黒い羽が生えて、お尻から黒い尻尾が生えてきた。
おいおい、まじかよ……
「……実はあたしサキュバスだったんだ。今まで人間のフリをして過ごしていたんだけど、もう七渡のことが好き過ぎて抑えきれなくなっちゃったの」
「なんやとぅ!?」
まさかの事実だ。
だが、思い返してみると麗奈はサキュバスだったかもしれないと納得はできる。
普段から露出が多い格好だったし、年明けの神社での件とかあったしな。
ギャルでサキュバスとかエチとエチが合わさって、まさにエチエチじゃねーか……
「じゃあ、大好きな七渡をいただきますね」
「もう、好きにしてくれ……」
このあと滅茶苦茶精力搾り取られた――
▲
みんなでお花見をするということで、近場の中目公園にやって来た。
今日は朝からエッチ過ぎる夢を見たせいでなんだか身体が重い。
まさか麗奈がサキュバスになって襲ってくる夢を見るなんて……
ま、まぁ思春期だしエッチな夢の一つや二つ見ても、恥ずかしくないよね?
「七渡おはよー」
集合場所には麗奈が一足早く待っていた。
今朝の一件があったため、麗奈を見るのが少し恥ずかしくなってしまう。
それにしても何だよサキュバスって……
でも、男なら誰だって一度はサキュバスと家庭教師とナースでエッチなことを考えてしまうものだ。
きっと100人中99人は頷いてくれるはずだ。
「廣瀬は三十分遅れるって」
可愛い犬柄のシートを敷いて、俺に座ってと手招く麗奈。
「……桜、綺麗だな」
持ち寄ったお菓子やジュースをシートの上に置いて、満開の桜を眺める。
「そう? 木じゃん」
「もっと感性豊かに生きようぜ」
桜を木じゃんと言った麗奈を叱る。
麗奈って変に冷めてるところあるからな。
木であることには間違いないんだけどさ……
「七渡さ、約束覚えてる?」
「約束?」
あれ?
この流れは今朝見た夢と似ているな……
自慢じゃないが俺はたまに正夢を見ることがある。
ということは、まさか麗奈は本当にサキュバスだったのか?
「あたしが駒馬高校に合格したら、七渡のためになんだってしてあげるって言ったこと」
「ああ、覚えてるよ。ところで麗奈はサキュバスだったりするのか?」
「んなわけないでしょ。いったい何考えてんの?」
んなわけねーよな。知ってた。
「それで、何かして欲しいことないの? 今ならなんだってしてあげるけど」
なんだってしてあげるとは言われても、麗奈は親友だしな……
あれをあれに挟んでああしてほしいとか、互いにあれをあれし合いたいとか、そんな男の醜い欲求は口が裂けても言えない。
しかもここ野外だし。
「いいんだよ、どんな我儘言ったって。あたしにはね」
何でも受け入れてくれるような目で見つめてくる麗奈。
「えっと、じゃあ……引くなよ?」
「引かないよ。七渡のことなら何でも受け入れられるし」
「なら、背中を抱きしめて受験頑張ったねって褒めてほしい」
自分で言っておいて恥ずかしくなってしまい、慌てて下を向いた。
麗奈を褒めて嬉しそうにしている姿をずっと見ていて、俺も褒められたくなってしまった。
「……ふふっ、何それ? 七渡って甘える時はとことん甘えるんだね」
「おい、笑うなよ」
「ごめんごめん。大丈夫、ちゃんとやってあげるから」
そう言って、シートの上であぐらをかいて座っていた俺の背中に回る麗奈。
そして膝立ちをして、俺の肩から手を伸ばして抱きしめてくれた。
「ほれほれ、よしよーし」
優しく頭を撫でながら褒めてくれる麗奈。
やっぱり誰かに褒められるのは嬉しい。
それが麗奈のような可愛い女の子だったら、それはもう幸せなわけで。
「受験頑張ったね。お疲れ様、えらいえらい」
後頭部に当たっている麗奈の柔らかくて大きな胸が温かい。
ちょっとしたつもりで言ったのだが、想像以上に幸福感を得られる。
まるで全てを包み込んでくれているみたいな温もりだ。
それは麗奈の包容力が凄いのか、
それとも……
「本当にありがとね」
「えっ……」
背中に体重を預けて俺を力強く抱きしめる麗奈。
胸もびっちり押しつけられていて、吐息が首筋にかかった。
「七渡のこと、一生大切にするね―― 」
俺の耳元でそう囁いてくれた麗奈。
ずっととか、一生とか、永遠とか、そんな言葉を俺は信じない。
そんな言葉を使ったみんなは、俺の元から離れていってしまったから……
だからといって、離れたみんなを攻めるつもりはない。
だってまだ俺達は子供なんだから。
まだまだ先は長くて、未来は果てしない。
その過程で、みんなは変わっていく。
気持ちも思いも変わっていってしまう。
……でも、
……それでも、
今の麗奈の言葉は、
信じていいような気がしたんだ――
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