第38話 ♀裏垢ギャル
「むわ~!!!」
あたしまじで何やってんの!?
メンタルやられてたとはいえ、あんな大胆なこと……
バカバカのバカでしょ!?
恥ずかしさで頭が混乱している。ぐるぐるぐるぐる。
冷静になれない。
昨日、七渡にパンツを見せてしまった。
七渡のためにできることは何でもしようとは思っていたけど、トラウマの克服のためとはいえ自らスカートをめくっちゃうなんて!
興奮が冷めてからは、恥ずかしさでずっと悶えている。うぉ~!!!
もうお嫁にいけないじゃん……
いや、七渡にお嫁にもらってもらえば良い話なんだどさ。
「うぅ……」
七渡に昨日のことは絶対秘密だよとメッセージを送っておいた。
念のため、もう三通送っておいた。シュッシュッシュッ。
「ばかばかあたし!」
あの時は七渡に励まされて、七渡に何でもしてあげたいって気持ちになってた。
冷静だったらあんなこと絶対にしない。
七渡に汚いとか思われてないかな……
【昨日はありがとう。凄く素敵だった。おかげでトラウマを克服できたよ。みんなには絶対言わないから安心してくれ】
七渡からの返信を見て、ホッと胸を撫でおろす。
とんでもない恥をかいたけど、七渡が喜んでいるなら満足はできる。
しかも素敵だったって……
いやパンツが素敵ってどういうこと!?
七渡、もしかして変態になってきちゃっている?
あたしは昨日の出来事を考えないようにするため、めっちゃ勉強に集中した。
▲
冬休みが明けたので、学校へ登校する。
三年生は受験を間近に控えているためか、少し空気がピリついている気がする。
あたしは年始に七渡へパンツを見せた件を考えないようにするため、集中して勉強をし過ぎていたから少し気持ちに余裕がある。
もう他の生徒には負けない自信もある。
鬼の様に勉強してきたからな……
「おはよう麗奈」
「な、七渡っ!」
下駄箱で七渡と遭遇した。
パンツ公開記念日から家に引き込もっていたため、あの日以来の再会だ。
「顔真っ赤だぞ」
「だ、だって~」
顔が赤くなるのは仕方がないじゃん……
あたしの一番大事なところを見せちゃったんだから。
「もしかして、あの件のことか?」
「うん……自分で見せておいて、後日めっちゃ恥ずかしくなっちゃった」
「女の子ならそれが普通の反応なんじゃないか? むしろ、そんな恥ずかしいのによく見せてくれたな。本当にありがとう」
「だって七渡のためだもん。七渡だけだよ、あんなことするのは」
七渡以外には絶対にしないし、パンツ見てきたらぶっころだ。
「ま、まぁ、あれは本当に強烈だった。おかげでトラウマが消し飛んだ」
顔を赤くして目を逸らした七渡……
「ちょっと! 今めっちゃ思い出してるでしょ!? やめて、忘れて!」
「いや、あれを忘れるのは無理だろ。あの日以降、めっちゃ目に浮かぶし」
「も~」
七渡があたしのパンツを目に浮かべまくってるなんて、恥ずかしさでどうにかなっちゃいそう。
「うわ~もうあたしのばかばかばか!」
「麗奈落ち着け!」
あたしは大きな声を出してしまっており、七渡に落ちつけと両肩を掴まれる。
七渡に触れられちゃってんじゃん。
嬉しい……落ち着く。
「落ち着きました」
「よしよし」
なんで肩を掴まれたのかはわかんないけど、七渡が触れてくれるようになったのは嬉しい。
むしろそのまま抱き寄せて、キスでもしてくれればいいのに……
「麗奈も誰にも言っちゃ駄目だぞ。他者から見たら俺達変態だと思われちゃうから」
「絶対に言わないよ。あたし達だけの秘密ね」
七渡とあたしだけの秘密ができちゃった。
それはそれで嬉しい。
「何が秘密なんだ?」
げっ、廣瀬がやってきた。
しかもタイミング悪く秘密の件を耳にしたみたいだ。
「べ、別に何でもねーよ」
隠そうとするが演技が下手な七渡。
それじゃ何か隠してること丸わかりじゃんか!
「怪し過ぎるだろ。言えやコラ」
「おいやめろって、たいしたことじゃないって」
廣瀬に抑え込まれちゃう七渡。
何か嫌な予感がするな……
「言ったら開放する」
「わ、わかった言うから」
七渡は言うと約束をして廣瀬に開放してもらっていた。
あたしにアイコンタクトを送っているので、きっと嘘をつくから話を合わせてということだろう。
「この前、麗奈に見せてもらったんだよ」
「何をだ?」
七渡は心優しいから嘘をつくのが得意じゃない。
早速見せてもらったと言っちゃってる。ばかばか。
「それは、その……」
困り果てている七渡。
仕方がないのであたしが助け舟を出すか。
「あたしのツキッターの裏垢を見せたの。ミンスタで写真投稿してもぜんぜんイイネつかないから、自己顕示欲を満たすように裏垢で際どい自撮り載せて注目浴びてたしね」
廣瀬が信じてくれそうな嘘をついた。
まぁ実際に勉強するまでは裏垢使ってたけど、今はもう手をつけてない。
もう自己顕示欲を満たさなくても心は充実しているから、受験が終わったらアカウント消しておこう。
ずっと面倒くさくて消すの放置してたからな……
DMが500件くらいたまっていそうだな。おえおえ。
「そういうことか」
廣瀬は納得して、七渡は安堵した表情を見せた。セーフ。
危ない危ない。
七渡以外には知られるわけにはいかないからね。
▲
放課後になり、七渡と一緒に図書室で勉強をする。
三学期になり試験日が近づいてきたからか、生徒が普段よりも多くなっている。
けど、今から本気で勉強をし始めたって遅いよ。
あたしはずっと前からここで勉強してるんだから。
「あれ以降、調子はどうだ?」
七渡が不安そうな目で聞いてくる。
あれ以降というのは、不安に襲われ電話して呼び出しちゃった日のことだろう。
俗に言うパンツ公開記念日。
「問題無し。七渡のおかげで調子取り戻した」
「そっか、なら良かったよ」
七渡には勉強だけでなく精神面でも支えてもらっている。
もう恩が溜まり過ぎていて自分の人生では返しきれないほどになっちゃってる。
子供ができたらその子供にも恩を返させないとね。
「七渡はどうなの?」
「今は自信に満ち溢れているよ。他の奴には負ける気がしない」
「やるじゃん。頼もしい」
七渡はちょっと情けないところもあるけど、やればできる男だ。
可愛げがあって、尽くし甲斐があって、頼りがいがある完璧で理想の男。
きっと七渡以外に、こんな理想な相手はこの地球に存在しないだろう。
七渡は絶対に誰にも渡さないんだから――
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