第23話 ♂夏休みの少年
夏休みになり、大型連休が始まった。
部活は引退したが、塾の夏期講習など用事はいくつか存在する。
そして、受験生にとっては勝負の夏とも言える。
余裕がない俺には遊んでいる暇などなく、勉強に集中しなければならない。
【爆乳JKギャルの画像はこちら】
だぁあああ!
気が抜くとスマホでギャルのことを調べてしまっている。
どうやら、この夏は自分の欲求とのバトルにもなりそうだ……
自分を整えられるのは自分だけだ。
欲求は律し、自分と向き合い、未来を見据え、孤独でも忍耐。
澄んだ心を保ち続け、邪念を払い、無限の集中力を手にする。
【必見、金髪ギャルの下着画像100枚】
だから! 何で俺の手は勝手にスマホでギャルを検索してんだって!
ヤバい……ヤバすぎる。
隙あらばギャル。
ギャルの魅力恐るべし。
それもこれも地葉の影響だ。
あんな可愛いギャルと常に身近に過ごしていたら、男なら誰だってこうなってしまうはずだ。
友達とはいえ、あんなエチエチのムチムチギャルを常に見ていたら悶々としてしまう。
しかも相手の距離感が近くて、抑えている欲求をいつも逆撫でされているからな。
こんなことになるのなら、もっとトラウマに縛れていた方が幸せだったのかもしれない。
いや、そんな弱音を吐いていたら俺の負けだ……
俺は勝つ。
負けず嫌いだから、自分にも負けたくない。
ギャル・太ももで検索しかけたが、スマホの電源を切って引き出しに入れた。
▲
「おはよう天海」
「おっす」
図書館前で地葉と合流する。
夏休みは週に三日、地葉と地元の図書館で勉強する日を設けた。
図書館は夏休みの学生たちで席の奪い合いになるため、地葉と開場前から並ぶ。
学校の時とは異なり、私服姿の地葉。
ノースリーブのシャツに、ショートパンツというラフな格好……
こんな服装じゃエッチ過ぎて集中できそうにないんだが。
昨日見たギャルのエッチな画像よりも遥かにエロイんだが。
「図書館はけっこう冷房効いてるからその格好じゃ冷えるぞ?」
俺は遠回しに服装を注意する。
こんな格好で毎回会うことになったら何も身につかないって。
「大丈夫だよ。中に入ったら天海から貰ったセーターとブランケット使うから。だからあえての薄着だし」
よしっ、俺の作戦は功を奏し過ぎている。
「でも、そんなに俺のプレゼントを気に入ってくれるとは思わなかったな」
「気に入るに決まってんじゃん! もぅ」
地葉は顔を真っ赤にして小さく怒ってくる。
「夏休みの予定は何かあるのか?」
「別に……勉強のことしか考えてない」
「受験生の鏡だな」
いつの間にか俺よりも頼もしい存在になっている地葉。
こんなにやる気に満ち溢れているというのに俺は……
「ギャルといえば夏休みにはっちゃけてるイメージあるけどな」
「どんな感じ?」
「海でイェーイってやってるイメージ。祭りで浴衣着て髪の毛盛り盛りにしてウェーイしているイメージ。ヤンキー風の男が運転する無駄にでかい車に乗って、山でフォイフォイ言いながらバーベキューしてるイメージ」
「……確かにそういう人多そう。あたしはそういうのしたことないけど」
地葉は他のギャルと違って群れていないからな。
確かにウェーイしているイメージはないし、そんな姿は想像もできない。
「駄目だぞ、そんな風になっちゃ」
「大丈夫だよ。天海以外に友達いないし、天海に誘われなければいかないし」
「なら安心だ」
前に海でウェーイして、チャラい人にナンパされてホイホイついてちゃって、そのまま車でイチャつくギャルの動画を見ちゃったからな。
ついつい余計な心配をしてしまう。
「でも、来年は、少しははっちゃけたいかも」
「……そっか」
地葉も高校生になったら彼氏とできて俺の元から離れていくのだろうか……
「その時は天海も一緒だよ。海とか祭りとかバーベキューとか一緒にね」
「そうだな。同じ高校に通えたら、ずっと一緒だしな」
「うんうん。そんな楽しい未来を想像して、今年はその未来のために頑張るの」
地葉と海に行くということは、地葉の水着姿も見れるということか……
想像するだけで胸が熱くなるな。
スタイルもいいし、直視できなそう。
だが、俺が受験を失敗したら地葉の水着姿を見る未来は消えてしまう。
俺も地葉と同様に頑張らないとな。
ギャルの画像なんか検索している場合ではない。
「そうだ、一樹も一緒だからな。あいつは余裕で合格するだろうし」
「天海が誘いたいなら別にいいけど」
どうやら地葉のヴィジョンには一樹が含まれていなかったようだ。
相変わらず俺以外の人とは距離を置いているな。
「その頃には、別の友人も加わってるかもな」
「あたしは天海が一緒なら、それでいいから」
今年は受験に専念する分、来年はたくさん遊んでも罰は当たらないだろう。
来年の今ごろはどうなっているのか……
見当もつかないや。
▲
夏休みはあっという間に一週間が過ぎてしまう。
夏休みってどうして過ぎるのがあっという間に感じるのだろうか。
時刻は夜の十一時になり、勉強を終えてベッドに横になる。
スマホを開くと地葉からメッセージが届いていた。
【お母さんから浴衣貰ったから、気分だけでも夏祭り!】
浴衣姿の自撮り写真を送ってきた地葉。
髪の毛を普段とは違う結び方をしており、新鮮な可愛さがあった。
こんな女の子と一緒にお祭りを歩けるなら幸せだろうなと思いをはせる。
それにしても地葉の浴衣姿は、想像以上に可愛いな。
清楚女子×浴衣=綺麗だが、ギャル×浴衣=エロ可愛いの爆誕だからな。
地葉の浴衣姿を見て、俺も少し夏休みっぽい雰囲気を味わえたので感謝しておこう。
【海とかプールの気分にもなれば?】
こんな文章を送ったら水着姿の写真とか送ってくれたりするのかな?
でも地葉にキモがられたり嫌われたくはないので、妄想するだけに留めておこう。
「あっ」
試しに打った文章を消そうとしたが、間違えて送信を押してしまった。
終わった――
天海七渡、十四歳の夏に人生終了のお知らせ。
いやまだだ、まだ挽回できる方法はある!
冗談、もう一人ボクが勝手にと慌てて送信した。
時すでに遅しでもうブロックされたかもしれないが、もう祈るしかない。
ウイルスにスマホ乗っ取られたと追加で言い訳を送信する。
人生最大の悪あがきだ。
【ちょっと待ってて】
あれ? ブロックされてなかった。
しかも待っててだって。
おい、まさか、まさかなのか……
まさか、おい、まさかまさか、まさか……
【絶対に他の誰かには見せないでね! いつもあたしのために勉強を教えてくれる天海にだけ特別だから!】
というメッセージと共に、ちょっと角度をつけて撮られた水着姿の地葉の写真が送られてきた……
黒いエロ過ぎる水着に、露わになっている肌。
初めて脇とかへそとかに興奮してしまった。
女性の身体って素晴らし過ぎるだろ。
これはヤバ過ぎる……
思わず胸元をズームしてしまった。
まさか本当に送ってくれるとは思ってもいなかった。
しかも地葉は怒ってもない。
まさに女神のような女性だ。
ギャル界にも女神がいたなんてな……
ありとあらゆる感謝の言葉をいっぱい送っておこう。
【天海の水着姿も送ってよ】
地葉からのまさかの要求。
俺の水着姿なんか送っても何の価値もないと思うが……
だが、地葉の水着姿を送ってもらったので、ちゃんと返した方が良さそうだな。
仕方なく水着に着替えて、慣れない自撮りに挑む。
お腹に力を入れて、ちょっと腹筋が割れているように見せる小細工をした。
ちょっとでもカッコよく思われたい俺の無駄なあがきだ。
【ありがとう、大切に使うね】
水着の写真を送ると感謝の言葉が送られてくる。
いったい何に使うんだよ……
地葉のおかげで俺がギャルの画像を検索することはなくなった。
何故ならネットに転がっているどんな画像よりも、地葉の水着姿の画像が素晴らしいからである。
おかげで俺は集中力を取り戻し、勉強に熱が入った。
俺の受験の夏はこれからだ――
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