第12話 ♀ギャルにできること


 昼休み、屋上入り口前のスペースで天海と隠れた話し合い行っている。

 なんか秘密基地で遊んでいるみたいでちょっと楽しい。


「一日で大体の歴史を把握するなんて凄いぞ」


 天海に褒められて嬉しくなる。

 やったやった。


「あたし、記憶力は良いの」

「そっか。記憶力が良いのなら日本史だけでなく、漢字とか英単語を覚えるのとか色んな教科で優位になりそうだな」

「ほんと!?」


 記憶力の良さは色んな教科で生かすことができるみたいだ。

 あたしの時代が来てんじゃん。良い波乗ってんじゃん。


「予想よりも動画を観てくれているみたいだし、良い調子だと思う」

「だってYouTubeの動画は学校の授業よりわかりやすいし楽しいもん」

「先生も人によっては無責任で適当に授業するやつもいるからな。反して人気の動画とかは視聴者が楽しいと思ってくれるように工夫が施されている」


 こんな勉強があるなんて自分だけでは思いつかなかったなぁ……

 やっぱり天海は凄い! 半端ないって!


「あんたに言われて基礎から始めたのが良かったのかな? やるじゃん天海」

「まさかギャルに褒められる日が来るとはな……」


 感慨深い顔をしている天海。

 相変わらず変なところはあるけど、普通の奴より変わっている人の方があたしは好きだな。


「あんさあんさ」


 天海に距離を詰めようとしたが、あたしに合わせて天海は距離を離してきた。

 ちょっと傷つく。こんにゃろ。


「何で避けるのよ」

「いや、ちょっとな」

「む~」


 ムカついたので、あたしはさらに距離を詰める。

 天海の背後は行き止まりとなり、もう逃げることはできない。


「おいやめろって」


 身体が触れてしまうような距離まで詰めてやった。

 避けられるのは許せないんだもん。

 絶対にね。


「何で嫌なの? あたしのこと嫌いなの?」

「……地葉は何も悪くない。前にも言ったが俺はギャルが苦手なんだ。近づかれると恐いし、身震いがする。ギャルアレルギーってやつだ」

「は? どうして?」


 ギャルアレルギーって何?

 初めて聞いたんだけど……


「小学生の時にギャルに酷いことをされたんだ。それでな」


 意外と重たそうな過去を持っていた天海。

 軽視しないでちゃんと聞いてあげないと。


「ふーん、トラウマってやつ?」

「そうそう」

「でもあんたはあたしの協力者っていうかパートナーなんだから、苦手なままでいられるのはちょっと困るんだけど」

「気持ちはわかるが、そうは言ってもな……」


 せっかく友達になれたのに距離が遠いのは嫌だ。

 どうにか天海があたしに慣れてくれればいいんだけどな~


 ……そうだっ! 良いこと考えた!

 あたしってば天才じゃんか。にゃはは。


「あたしの勉強に協力してくれている分、あんたのそのトラウマを治してあげる」


 前にあたしに勉強を教えてもこっちには何のメリットも無いって学級委員の奴に言われた。それは天海にとっても同じことだと思っていた。

 でも、天海には困っていることがある。

 その力になれば、あたしにも返せるものがあるじゃん。


「余計なお世話だ」

「それぐらいさせてよ。何か良い方法を考えておくからさ」


 天海のギャルアレルギーを解消する。

 そしたら、あたしも天海の役に立てるはずだ。


 実際にどうすればいいか今はまだわからないけど、ギャルのあたしだからこそ天海に恐くないって思われせられるはずだ。


「あんたにも悩みがあって良かった。恩を貰いっぱなしでちょっと肩身狭かったけど、ギャルなあたしでもできることがありそうじゃん」

「あんまり良い予感はしないが、お手柔らかにな」

「任せとけぃ」


 おしっ、あたしも天海のためにできることを探そう。

 天海がギャルを克服してくれれば、あたしとももっと距離が近づいて……


 そしたら、天海の背の高い友達みたいになれるかな……

 あいつら休み時間にいつも楽しそうにしてて、本当に羨ましい。

 あたしも天海とふざけあって、冗談言い合って、小突いたりし合ってさ。

 それって絶対に楽しいし、理想の友達ってやつだよね。


 あれっ? 何か身体がめっちゃ熱いんだけど……

 天海と距離が近づいたら、すっごく嬉しいなと思っただけなのに。


「気持ちは嬉しいけど、今は自分の勉強に集中しろよ」


 あたしのことを優先してくれる天海。本当に良い奴だな。

 良い奴だからこそ、あたしもいっぱい尽くしてあげたくなってしまう――



     ▲



 家で三時間続けて勉強したので休憩する。


 休憩中はあたしが天海にできることを模索する時間にする。

 ギャルに怯えているってことは安心させらればいいのかな?

 単純に仲良くなればあたしへの恐怖は薄れていくと思うけど……


 でも、仲良くなるってあたしにとっては難しいことだ。

 ただでさえ同性の友達がいないのに、男の天海と仲良くなるなんてできんのかな?


 とりあえず好かれることが優先だろうか……

 天海にあたしのこと好意的に見てもらえれば、向こうからも歩み寄ってくれるだろうしね。


 スマホで男の友達に好かれる方法でも検索してみるか。


【100%男に好かれる方法があります】


 おっ、よさげな記事があるじゃん。


【男性に好かれる方法は容易くおっぱいを触らせてあげることです。こうすれば好かれること間違いなしでしょう。さらに好かれたい場合は男性のちん……】


 何これ!?

 しょうもないクソ記事じゃんか!?

 こんなんで好かれてできた友情なんて何の価値もねーっつーの。

 別の記事を探そ。


【男性にさりげなく好かれる方法は、ボディータッチをすることです。男性は異性に身体を触られると自分が受け入れられていると実感し、好意的に考えてくれるようになることでしょう】


 ボディータッチか……

 男子のこと触るなんてキモくて身震いしちゃうけど、天海ならちょっとぐらい触れてもいいかなって思える。なんか不思議だな。


【簡単に男性に好かれる方法はプレゼントをあげることです。プレゼントをあげることで相手が自分のことを意識していると思い、距離を一気に詰めることができます。手作りお菓子や便利な生活用品などをあげてみては?】


 にゃるほど。プレゼントか……

 お菓子の手作りなんてやったことないけど、市販のお菓子でも軽く好かれるかもしれない。やってみる価値はありそうじゃん。


【男性に好かれたいけど面倒なことは嫌いなあなた。手っ取り早く好かれるには、やはり股を開くことが有効ですね】


 クソ記事は消えろや!

 有効ですねじゃねーんだよコラ!


 あたしはスマホでの記事検索を止めてベッドで横になる。


 早く天海に会いたいなぁ……


 って、何考えたんだあたし。やば。

 これじゃあまるであたしが天海のこと好きみたいじゃんかね。


 そもそもあたしだって男が苦手なのに、なんでこんなに天海のことなんか考えてるんだろ。

 あいつはただの友達で、勉強を教えてくれる良い奴なだけなのにね。


 天海のばーか……

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