その11 死なないブラス王とその謎にゃ!?

「みんないくにゃ。1回あいつを殺すにゃ」

「1回って何回殺す気なのさ?」


 紅葉の質問にシシャモは答える。


「死ぬまで何回もにゃ」

「さっきの見た感じじゃ1回もなかなか大変そうだけどね」


 ブラス王が剣を構える。


「君たち強いから手加減出来ないけど手足がなくなっても可愛がるから許してよ」


 6人が構える中、紅葉がボソッと呟く。


「何回でもやるしかないね」


 シシャモと燕が同時にブラス王に突っ込むと拳と刀の乱撃を放ちそれを捌くブラス王。燕が下がるとバトがブレードで斬りつけ反対側からシシャモが蹴る。

 その両方を受け止めるブラス王の上空から燕が斬りつける。ブラス王が大きく後ろに下がるが額からは血が流れている。


 下がるブラス王を様々な属性の付いた矢と銃弾が絶え間なく襲いダメージを与えていく。

 たまらずブラス王が体の周囲に白く輝くオーラを身に纏いながらエネルギー派を放つと上空から大量のビルや壊れた大きな壁など様々な障害物が降ってくる。


 ビル等が土煙を上げながら地面に次々と突き刺さりそれらを避けるブラス王に向かって建物と土煙を切り裂く閃光が走り燕の刀がブラス王の右腕を飛ばす。


 建物の間を縫うように銃弾が飛んできて次々にブラス王を貫くと周囲に魔方陣を描き始める。


 その間にも建物の間を飛び回りながら黒い炎を纏った矢を放つペンネに合わせバトがチェイスを展開する。


「チェイスには、こがな使い方もあるんや」


 チェイスの周囲にビームの幕が張られるとペンネの黒い矢にぶつかりながら矢が建物に当たらないように起動を修正していく。


 ジグザグに飛んで来た矢がブラス王の身に次々と刺さり誘導してきたチェイスからはビームが放たれ身を焦がす。

 その間に完成した魔方陣から出てくる精霊4人がそれぞれの属性の剣を持ち四方から同時に突き刺す。


 空が赤く光りその光が赤い残像を残しながら放たれるシシャモのキックは鈍い音と共にブラス王を地面に沈めそのまま地表を砕くき赤いエネルギーが天まで昇る。


 シシャモが飛び退くとそこには原形こそ留めているがボロボロのブラス王がうつ伏せで横たわっていた。

 刹那、ブラス王の体から白い光と黒い光が放たれ上空で丸い玉になるとくるくると回り螺旋状の光の渦を作りながらブラス王の体に入り込む。


 ゆっくりとブラス王が立ち上がり右手に黒い光を左手に白い光を放ち始める。



「性悪女神どうにゃ?」


 シシャモの呼び掛けで雷と共にスピカが現れる。


「あーもうバッチリ! 前に観測したエネルギーはあの黒い光で間違いないわよ。それにアースで配線使って逃げたのもあのエネルギーと同じものだと思うわ」

「ってことにゃ。ブラスとやらこれでお前はアースの魔王と同一人物だとほぼ確定にゃ」


 ブラス王は静かに笑う。


「まあ隠してたところで意味はあまりないか。そうわたしとアースの魔王は同じだ。あっちはわたしが分裂させアースへと飛ばしたのだ」


 ブラス王は上を向き遠くを見つめると小さなため息をつき語り始める。


「そうあれはわたしがまだ神であった頃、聡明かつ人望も厚かったわたしは他の神々の嫉妬により──」


 天に手を伸ばすブラス王を見てしらけ気味の7人は冷めた視線を送る。


「なんか語り始めたにゃ」

「めんどくさいわね」


 シシャモとスピカの本音が出たところで空間が割れアダーラがひょっこりと顔を出す。


「はいはい、ブラス、君は神殺しの罪で200年の封印の後魂の浄化を目的に転生が行われた。

 それである1人の男に転生を果たす。そこから3000年ほど転生を繰り返し800年程の冷却期間を経てジガンテスカ国の王子に転生を果たす。何のきっかけは分からないけど記憶をもどした君は王子から王へなり自分の子供に精神を移していくことを繰り返した」


 歩きながら話すアダーラがシシャモの横に立つとビシッとブラス王に指を差す。


「君は独自に自分のレベル上限突破を発見し他の世界に精神体を飛ばすことでレベル200を手に入れる。そして人や魔物を取り入れその人のレベルを取り込むことで更に上限を突破した。

 ここまで調べあげるのにかなりの時間を要したけど君は賢くて運が良いようでかなり悪い」

「なにが言いたいアダーラ!!」


 苛立つブラス王を見て可愛くふふふっと笑うアダーラ。


「君のいた2つの世界を担当していたのがたまたまスピカだったこと。そして救世主の条件を満たしたのが魔物であったこととスピカの機転でレベル上限突破を6人が果たしてしまったこと」

「え? 私?? 機転?」


 突然名前を呼ばれ慌てるスピカを無視して話は続けられる。



「つまりブラス、君さ。シシャモ、ペンネ、燕、紅葉、バト、ポム達が正義の味方じゃなくて悪として生きる道を選んだことでもう積んでるんだよ」

「積む? 意味が分からないな」

「ぶれない正義と悪は表裏一体さ。1つの信念を貫くには矛盾を抱える必要がある。それを正義のために行うと矛盾の摩擦が起きる。

 でもさ、悪として魔王として貫くなら?」


 ブラス王が笑う。


「とても神の発言とは思えないな。だがわたしを倒すことは出来ない。その為に精神体を分離させアースに送ったのだからな」

「ふ~ん、それってあっちも一緒に倒さなきゃいけないってことだよね」


 不敵に笑うアダーラが指を鳴らす。


「スピカ、やるよ! それでシシャモ分担は?」

「あたしがここに残るにゃ、残り5人とポムの精霊を使って決行にゃ」

「おっけーー! んじゃあいくわよ!」


 スピカが錫杖を振りペンネたち5人を雷で包むと転移を行う。そして3つの落雷をシシャモの横に落とすとそこにはルイとビアシンケン、グラープが立っていた。


「なんだ? 今更そんな奴等相手になると思うか。それにさっきの転移はあっちのわたしを倒すとでも言うのか?」

「まあそういうことにゃ」


 シシャモとブラス王が向き合うとお互いが突っ込み拳をぶつける。

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