その12 オペレーションメテオにゃ!

 窓際は下水道の奥に作ったラボで作業を行う。パソコンの画面を見ながらキーボードを叩くその姿は髪はボサボサ髭は伸び、羽織っている白衣にもシミがあり決して清潔感のある姿だとはいえない。


「コーヒー飲みます?」


 窓際とは真逆で綺麗な白衣を羽織メイクもバッチリな麻帆はコーヒーを飲みながらもう1つ手に持ったコップを差し出す。


「ありがとう」

「ふ~む、同時攻撃をしたとして上手く誘導出来ますかね?」


 コーヒーを飲む窓際のパソコンの画面を麻帆が眠そうな目で見つめる。


「アースの魔王さんとやらの精神体はこのネットワークの世界で生きている。つまりそれはある種のプログラム又は電気信号の生命体として仮定すれば住む世界を狭めていけば閉じ込めれるってことさ」


 窓際の説明を聞きながら画面をスクロールしていく麻帆の目が少しだけ開く。


「ふ~ん、このアースの魔王って間抜けでしょ」

「気付いた? スピカさんが説明してくれた話から行方不明になった人間の合計人数とその時期のグラフとアースの魔王のエネルギー反応と思われる物の大きさを合わせると」


 行方不明者の合計を示す右肩上がりのグラフに比例して、アースの魔王のエネルギー反応が徐々に大きくなっていくのが分かるグラフが画面に表示される。


「これだけの容量を受け入れる場所なんて限られているでしょ」

「つまり破壊する場所は限られてくるという訳ですね。レベルとやらを上げることに執着して住むお家が限られる程肥大。お陰で潜伏場所も予測がつきやすくなるってアホですね」


 ニヤリと微笑む窓際と麻帆の後ろに雷が舞い散る。


「さて、主役の方々が来たし始めようか。今からこのジャパンの主要施設と軍事施設を潰してもらわないといけないから、悪いことするから変な言い方だけど頑張ってね」

「みんなで最悪な悪事を行う時が来ましたね。紅葉さん、悪の首領らしくビシッと決めてくださいよ」


 目の前にいる5人に窓際たちが作戦の説明を行う。



 ***



 星空の綺麗な夜。深夜遅くジャパンに降り注ぐ6つの炎。

 そのうち軍事施設に落ちる炎が落下途中で黒い炎を噴出し始めると大きな黒い炎を生み出し施設に落ちる。


 その炎を中心に起きる大爆発で施設にあった車両やヘリ、建物が吹き飛び黒い業火が燃え盛る。

 黒い炎の中をペンネが優雅に歩きながら赤く光る目を周囲に集まってくるロボットや自警隊に向ける。


「始めましょうかアースの魔王さん」



 ***



 フクオの軍事施設に落ちた炎から現れるバトは両手のガトリングガンで銃弾をまき両肩のビーム砲を放つ。周囲にはチェイスが舞いビームの嵐を起こす。


 バトに似た白い機体のロボットたちが現れバトに攻撃を開始する。


「新型か嫌じゃのぉ。ざんじ新型出すんじゃのうて1つのものを愛して欲しいの」


 バトがボヤキながら激しいビームの攻撃をビームごと切り裂き次々と新型を沈めていく。

 その他の場所でも燕、紅葉、ポムと精霊達が基地や研究施設を次々に破壊していく。



 ***



「われがここの魔王だな。さっさと終わらせるき覚悟しとーせ」


 バトの前に大きなモニターが降りてくると大きな目が映る。


「お前はバトといったか。わたしのことはもう知っているようだな」

「知っちゅーよ。アースの魔王はあんまり強うないのもね」

「ぬはは、言ってくれるな。そこでどうだ。お前はこっちの世界の出身、わたしと組む気はないか?」


 アースの魔王の提案に肩を震わせるバト。


「アースの魔王は面白いことをいうね。お笑いトリオに紹介しちゃりたいや。

 うちはシシャモをサポートするために作られた。やけんど今は違う仲間や、うちにとって大切な仲間なんやよ」


 その台詞が終わるや否や襲いかかるロボの集団と様々な武器を持った大量のアーム。

 それらを両手を伸ばしながらブレードで切り裂き、ビームで焼き切る。銃弾をばらまき穴を空ける。


「やはり強いな……だがわたしを倒すことは出来んぞ」

「われらそればっかりだ。色々試しちゃるき倒されろや」


 バトの体に赤い稲妻が走り始める。肩にビーム砲両手にガトリングとミサイルランチャー。腰からも肩より2回りほど小さいビーム砲、腹部からもキャノン砲がせり出し両足にもミサイルランチャーを装備し周囲には4本のチェイスが敵の方を向く。

 全ての装備の一斉に射撃。撃ち終わった部位は次の武装へと変換され攻撃の嵐は続く。


『超必殺 バト・フルバースト』


 ビームとミサイル、弾丸が全てのものを破壊し動くものが誰もいなくなる。

 ただ1つモニター付近から黒いエネルギーのようなものが途切れた配線を伝いながらどこかへ移動していく。


 ガッ──


 バトに通信が入る。


〈バト、そこからの魔王と思われるエネルギーの移動確認したよ。ポイント移動して〉


「成功したみたいのぉ。他も上手うやっちゅーやろうし、うちも予定のポイントまで移動や」


 バトは窓際からの通信を受けて基地の外へ出ると丁度紅葉がアースの魔王を討伐したタイミングで宣言している姿が夜空やビルのビジョンに写し出されている。


 ──なははははははは! 人間どもめ!! 我ら悪の紅葉団の恐ろしさを思い知ったか!! 今家から出てくると危ないからじっとしてるんだな! 

 そしてこの国の政治家よ! この我らが作戦その名も『オペレーションメテオ』によりお前らの軍事力はガタガタなわけだ! 我らを倒したければ最強の兵器でも持ってくるんだな。

 あればだけどな、お前たちも家でじっとしているがいい! ぬははははははは──ブツッ


「紅葉はああいうの好きだね。さて急ぐか、最強兵器とやらを倒しに行かんとね」

「はーいバトちゃん迎えに来たわよ!」

「ご苦労様や。悪いけど次に行くか」


 スピカが現れるとすぐにバトと共に消える。

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