その13 正義の味方にゃ!

 トキョーの夜空を裂くような雷が落ちる。


「紅葉ちゃんで最後でーす!」

「あいたた、スピカさんもうちょっと優しくできない?」

「無理!」


 スピカに連れられ紅葉がやってくると5人が集まる。


「アースの魔王が潜伏している場所は全部叩いたからこの施設に全部集まって1つになってるはずよ」

「それでここにあるジャパンが保有する最強と謳われるロボット兵器が眠っちゅー。そいつに移してネットワークから切り離せればOKじゃのぉ」

「というわけだから急ごう。シシャモのことも心配だし」


 ペンネが歩き出すがすぐに止まる。目の前に立つ1人の少女が右手にベルトを持つと腰に巻く。


「ここから先には行かせない。よくもみんなを殺してくれたね。そして今このジャパンを混乱に落とし入れ悪事を働くお前たちを私は許さない!」

「てめえ確かエリーとか言ったな。仕留めそこなったか」


 ポムが悔しそうにするのをチラッと見たエリーはフロッピーディスクを6枚手に持つと次々に差し込んでいく。


レナ喜び

メル

ヴェール

ルイ戦士

ロッソ

リヒト


 エリーを含む6人の戦士の名前が読み上げられベルトのレバーを引く


「変身!!」


 エリーが目映い光に包まれ現れる仮面の戦士は6種類の色が斑に混ざっており決して綺麗なものではないが強い意思と気迫を感じる。


「ペンネたちは先に行け。こいつはあたいが相手する」


 ポムが銃を両手に持つとペンネが頷く。


「行こうみんな。ポムさん気を付けて」

「おうよ」


 エリーを無視して走り出す4人を止めようとするエリーに発砲された弾丸からイフリートの腕が出てエリーを掴む、そこに銃弾に風を纏わせエリーに撃ち込む。


「ポムでしたっけ……」

「お前とは何かと縁があるな。ここらで決着つけようぜ!」


 飛び交う銃弾を弾きながらエリーは進むとポムに拳を叩きつけるとポムは周囲の建物を破壊しながら吹き飛んでいく。

 瓦礫から銃弾が飛んで地面で弾かれると吹雪が舞いフェンリルが刃を振るう。

 エリーが剣を取りだし受け止めるとフェンリルに回し蹴りを放ち吹き飛ばすと上からくるシルフィードを銃で撃ち落とす。


 瓦礫を吹き飛ばしながらイフリートを宿したポムが拳を振るうとエリーも対抗して打ち合う。


「てめえ、レベル一緒か!? 前と全然違うじゃねえか」

「レベルなんかしらない! お前ら全員倒すんだ!」


 お互いが同時に殴って吹き飛ぶ。そのエリーの上空に水の槍を構えたウンディーネが槍を次々と投てきしてくる。

 槍を弾くエリーにイフリートが拳を振り下ろし地面に叩きつける。

 地面でバウンドするエリーに向かってフェンリルを宿すポムが地面を滑りながら両手の氷の剣で連続で斬りつける。

 攻撃から逃げるエリーにシルフィードが鋭い竜巻を放ち切り裂く。


 回転しながら吹き飛ぶエリーは空中で体制を立て直し地面に足がつくと地面を割りながらウンディーネに突っ込むと思いっきり蹴り上げて上空へと打ち上げ拳で殴り壁に叩きつける。

 背後から拳を振るうイフリートの太い腕に絡み付くようにして避けると両足でイフリートの首を挟みそのまま地面へと倒す。


 すぐに立ち上がりポムにビームの銃弾を浴びせるとその銃弾をポムは氷の剣で弾きながら進んでくる。

 エリーも剣を持ち今度は斬り合いが始まるが背後からシルフィードが風の刃で斬りつけてエリーが体制を崩すとポムが連続で斬りエリーが吹き飛ぶ。そこへ怒りに体から火を吹き上げ突っ込んでくるイフリートが強烈なストレートをエリーに叩き込むと体が火に包まれながら壁に叩きつけられ派手に爆発する。


 その爆風を切り裂き燃える火を全て消しながら突っ込むウンディーネがエリーの首を掴むと地面に叩きつけ蹴り飛ばす。


 地面を転がるエリーを追撃するウンディーネが水で作った武器を次々と変えながらエリーを斬り、叩き、刺すを連続で繰り出していく。


「さっきの痛かった。かなり痛かったんですけどぉ」


 目の座ったウンディーネの追撃は収まることを知らずエリーを襲い続ける。


「なあ、あいつあんな感じだったっけ?」

「ウンディーネ怒ると怖い……」


 ポムの影に隠れながらフェンリルが答える。シルフィードは建物の影に隠れイフリートは怒りの炎を消し少し引き気味に見ている。


「ちいっ! このままだとっ!!」


 エリーが反撃に出ようとウンディーネの腕を蹴りると腹部に拳を向けるがそれを受け止められる。


「そうなんども喰ってたまるかっての!」


 ウンディーネが拳を振り上げるとエリーを連続で殴り最後に強烈な一撃を与えエリーは地面を転がっていく。


「がはっ、くそーこいつらやっぱり強い。でも負けるわけにはいかない……みんなの仇のためにも負けるわけにはいかないんだああぁぁぁぁ!!」


 エリーが叫びながら立ち上がる。


「へえ、根性あるじゃん。あたいも全力でいかなきゃな」


 ポムが両手を広げると4人がそれぞれの光る玉になりポムと重なると4精霊合体を行い銃弾を撃ちながら突っ込むと拳を振るう。負けじとエリーも拳を振るいお互いが殴り合う。


「いいね、この感じ! 戦ってるって感じがしないか」

「悪魔め! お前らなんか私が全員倒してやるんだから!」


 エリーがベルトのボタンを叩き足に力を込めるとポムに蹴りを入れる。

 ポムはガードをするがそのまま吹き飛ばされてしまう。


「やるな、でもなあたいも負ける気はないぜ!」


 空中で羽を広げると銃弾を放つ。エリーを横切るその銃弾は青く光り破裂すると共にウンディーネが水を巻き上げエリーを宙に上げると緑の弾丸が弾けシルフィードが現れ竜巻を起こすと今度は地面に叩きつける。

 赤い弾丸はイフリートを呼び出し竜巻に炎を付与し炎の渦を生み出す。

 焼かれるエリーに滑りながら氷の剣を投てきし手足を貫き壁に縫い付ける。

 ポムが構える銃に4人が光る玉になり集まると4色の渦が銃口に集まり始める。


「これで終わりだな」


 仮面の中でポムが向ける銃口を薄れ行く意識の中エリーは死を覚悟しながら涙を流す。


「ごめんみんな……」


 そしてゆっくりと意識を手放し目を閉じる。

 ポムが引き金を引こうとした瞬間盾が現れポムの攻撃を妨害する。


「んだぁ? 邪魔するのか紅葉」

「違う違う、ポム興奮しすぎだって。この子はこっちの世界で使えるから止めは待って」


 紅葉に続きバトもやってくる。


「なんだお前ら。魔王倒しに行ったんじゃねえのかよ」

「ペンネに頼んで戻って来たんや。まあこれを見てみてや」


 バトが空中に小さなモニターを展開するとそこに写し出されるシシャモを始めとする6人がエリーと戦いやられていく姿。

 最後は全員倒れぼろぼろになりながらもエリーが立っている。


「これはなんだ?」

「以前の画像とポムが戦った最後の戦闘を録画した物を合成してボクたちがこの子にやられた動画。

 まあこれでどうなるって訳でもないけどこの戦いが終わってアースの人々が悪の首領紅葉の驚異はもう無いんだってこの動画を見て安心してくれるかなって」


 ポムが合体を解き銃をしまい指を鳴らすとエリーに刺さっていた氷の剣が弾け砕ける。

 倒れて変身が解けたエリーの頭をピコピコハンマーで1発叩くとペンネたちの向かった方へ歩き出す。


「早く行こうぜ、ペンネたちもう魔王倒してるかもしれないしのり遅れちまう」

「そりゃあ早ういかんとね」


 紅葉は倒れているエリーを見て語りかける。


「ごめんね。こんなことで許されるとは思ってないけどそれでもみんなが安心出来るかもって思ったんだ。しかも君に全て後を押し付けちゃうし最低だね。

 ボクはもうこっちにはいられない。本当に勝手だけど後の事は任せたよ」


 そこまで言うと紅葉はエリーに軽くお辞儀をして先を行くポムとバトを追いかける。


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