その14 アースの魔王にゃ!

 ブラス王に宿る元神ブラスの精神体である アースの魔王は各地に散らしていた精神体を1つの場所に集めた。いやペンネ達によって精神体をが存在出来るスペースを追われていく。

 本人も分かっていたがこの体は攻撃に乏しく対抗する手段が無いこともありジャパン有数の軍事研究機関に向かって電子の海を泳ぎ進む。


 レベル上限突破の条件は1人の人間又は魔物を取り入れること。これにより取り入れた相手のレベル、強さ関係なく上限が「1」だけ上がる。

 当初ジガンテスカ王国の人間や魔界大陸の魔物を取り入れたり周辺の国と戦争を起こし取り入れたりもしたが、あっちの世界の人間達は強く抵抗が激しいこと、王という立場が都合が良いため大きな動きが出来なかったこと。


 この2つを打開するため精神体を分裂させ生命のいる世界を求める。そして辿り着いたアース。この世界は人間が沢山いてしかも弱い。

 大量に取り込んでも魔力もなにも持たない人間がアースの魔王の存在に気付くことも出来ない。

 そして素晴らしい事に戦争を起こすと一気に人が死んでしまう。しかも一瞬でだ。


 貪るように人間を取り込み気が付けばレベルは「791」まで上がっていた。このレベルはブラス王とリンクし互いのレベルを共有する。

 レベルだけでも無敵それにアースの魔王とブラスには絶対負けない秘策があった。


 これで2世界を支配しつつ天界への復讐を目論む完璧なプラン。何千年かけて準備してきた。だが今アースの魔王は少し焦りを感じている。


「まさかアースとあっちの世界を担当する神が同じとは……しかも転移の力を持つスピカだとは。あいつはいつレベル上限突破に気付いた。しかも人間の王として生きることで攻めにくい立ち位置にいたのに魔物を救世主にするとは……新しい女神故にノーマークだった。あんなに優秀な女神を育成するとはアダーラめ」


 愚痴を溢しながら研究所に完備されてあった人型ロボット型番『Enemy Annihiiation殲滅 Arm兵器 E・A・Aー35 OROCHIオロチ』に乗り移る。追い込まれているとしてもそれが1番の選択であると理解した上で。


 研究施設に黒い水が流れると煙を上げながら腐食していく。その水が大きく渦を巻くと建物を内側から溶かし粉砕する。

 その黒い水を絡め神速の抜刀が全ての機材を切り裂く。そして起こる黒い爆炎で周囲は全て消し飛ぶ。


「これでその体に乗り移るしかないわけですよね」


 地面から僅かに浮くペンネがオロチに向かって声をかける。オロチは体長が3メートル程のロボットアニメに出てきそうな正義の合体ロボットの姿をしている。手には正義のブレードが光り輝いている。ただ黒を基調としたカラーリングは少し正義のロボットから離れている。


「この体であればお前らなぞに負けぬ!」

「それはどうだろうか」


 燕の振り下ろす刀を巨体に似合わぬ動きで受け止めると燕を弾き返す。

 その隙にペンネの矢が飛んでくるのを体に格納していた小さな銃口を展開するとビームを放ち打ち緒としていく。


 アースの魔王が空中にバトのチェイスの小型版を展開すると一斉にビームを放ち始める。

 それらを無数の盾が受け止め間を縫ってバトのチェイスが飛びビームを放つ。


「パクリは嫌いや」


 更に盾が消えたところでバトがフルバースートを放ちアースの魔王にヒットさせると弾丸が描く魔方陣から出てくる精霊達が連続で殴る、切るの攻撃を放つと燕が追撃しペンネが黒い業火を放つ。


 黒い炎に包まれるアースの魔王が剣で炎を払いのけるその姿は無傷に見える。


「効かぬ! お前らの攻撃などこの程度か」


 アースの魔王が笑いながら剣を構える。


「でどう? 本当に効いてない?」


 ペンネが青い目の光を細め凝視するバトに訪ねる。バトはバト専用スキル『分析』を使用し観察中である。これは敵のレベル、HPと1度見た技の分析対策を行えるスキルであり弱点等は分からない。


「いやあ、ダメージはちゃんと通っちゅーよ。レベル791とかふざけちゅーのも気になるけど大きな問題はもうひとつの可能性や」

「ああブラス王とリンクしてる場合ってやつね。だとしたらめんどくさいなあ」

「あっちのブラス王を倒したときに立ち上がったことから可能性は高そうだがな」


 紅葉と燕の後ろでマガジンを入れ換えるポムが不適に笑う。


「一回倒してみれば良いんだろ。考えるよりやってみりゃあいい」

「まあそれしかないよね」


 ペンネが弓を構え暴風吹き荒れる矢を放ち再びペンネ達とアースの魔王の激しい攻防が始まる。


 銃弾とビーム、斬撃と衝撃が目まぐるしくぶつかり合い周囲の地形をも変えていく。


「くっ!」


 ペンネが吹き飛ばされ地面にクレーターをくるが衝撃で舞い上がった煙を切り裂きながら矢が飛んでくる。

 その矢を弾くアースの魔王に以前麻帆に貰った魔法をビーム状にする筒で腕を切りつけると4精霊合体のポムが拳で腹部を連打する。

 アースの魔王の放つミサイルを盾が破壊されながらも防ぐと燕が斬撃を連続で放つ。


「いける! もう一押しや!」


 バトの合図で紅葉以外4人が赤い稲妻を纏うと一斉に超必殺攻撃を放つ。

 その凄まじい衝撃波は基地だけでなく周囲の工場地帯を巻き込み破壊する。


 アースの魔王が地響きをたて倒れる。ペンネたちが見守るなか魔王の背中から黒い光の玉が浮かび上がると強く輝いて魔王の体に戻っていくとアースの魔王の指がピクリと動き立ち上がる。


「ああ、起きちゃった。これは多分決定だね」


 ポムにピコピコハンマーで頭を叩かれながら傷だらけの紅葉が残念そうに呟くとペンネもため息をつく。


「同時討伐……一先ずアースの魔王をネットワークから切り離し討伐可能な状態には出来たんだし1人戻ってシシャモに伝えましょう」

「それならうちが戻ろう。映像も踏まえて説明もしやすいし、もうスピカ呼んどるし」


 バトが名乗り出ると同時にスピカが現れるがどこか焦った表情で杖をブンブン振り回している。


「急いで急いで! シシャモも3人もボロボロだから」


 慌てるスピカに急かされバトが転移する。




 ────────────────────────────────────────


『聞いてよスピカちゃん』


「ちょっと聞いてもらえる? アースの魔王がさ女神スピカ凄い! とか私のこと誉めてるけど。あれ私知らないから。

 シシャモが救世主に選ばれたのも偶々だし、魔物にしたのも魔物にも救世主になる権限を平等にって会議で決まってあの森の谷にそれっぽい伝承残して来るはずのない救世主を待ってた訳なのよ。

 世界を跨いだのも2世界同時に魔王が出てきちゃってヤベーってシシャモを飛ばしただけ。まさかレベルが上限突破するとか知らないし。勝手なことしやがって! って上からメチャクチャ怒られたんだから。

 はあ~嫌になるわ~。このコーナー最後っぽいけど最後愚痴で終わるんだこれ。いいのか私!?」

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