エピローグ

魔王シシャモと仲間は今日もまた……

 魔王シシャモ城の庭園に落雷が落ちると可愛い女神スピカは走る。


「ったく女神だから王の間に直で転移したいのに壊すからダメとかネコミミ魔王は器が小さいったらありゃしない」


 庭園に着いて直ぐに風が吹き荒れスピカの髪が激しくなびく。


「魔物って戦闘狂よね」


 呆れるスピカの視線の先には燕とポムが刀と銃弾をぶつけながら戦っている。


「ポム殿攻撃が真っ直ぐ過ぎる。もう少し強弱をつけると幅が広がるぞ」

「ん~そんなものか? 銃で強弱ってムズいな」


 銃を見つめるポムの背後から飛び出す2つの影。


「隙ありです~」「もらった……」


 ウンディーネとフェンリルが燕に飛びかかるが鞘を振られ吹き飛ばされ飛んでいく。そのまま燕がアイテムボックスから出す峰に銃口のある刀からビームが放たれる。


「峰撃ち」

「なあーーおいらばれてる」

「もーー!?」


 空に放たれたビームでシルフィードが落ちてきて背後に忍び寄るイフリートがビームに焦がされる。


「ああ!! おまえら上手くやれって言ったのに!! こうなったらやっぱあたいが」

「くるがいい」


 刀と銃を構える燕とポムを置いてスピカは城へ向かって歩くと前からバトとルイが歩いてくる。


「あ、性悪女神なのだ!」

「スピカやないか久しぶり。慌ててどうしたが?」


 ルイの言葉は無視してバトと会話を始めるスピカに「やはり性悪なのだ」の言葉は聞こえない。


「ええ、ちょっとシシャモにお願いがあってね」

「なんとのう察したけどあんまり長いこと留守にしたくないがやけんどね。これからルイのとこに繋ぐ橋の計画立てたいんやけど」

「だ、大丈夫! サクッと終わるわよ」


 バトの言葉にキョドりつつ答えるスピカに女神の威厳は感じられない。バトに別れを告げると逃げるように城へと入るスピカに声がかかる。


「スピカさん、お久しぶり」

「ああ久しぶりね紅葉ちゃん」


 挨拶が終わって早々に廊下を勢いよく走って来てマオカが紅葉に飛び付く。


「紅葉様! 今日は約束通り町へ買い物付き合ってもらいますよ! って性悪女神のスピカ様お久しぶりです!」

「え……えぇ久しぶり」


 ルイと違ってマオカの悪意の無い「性悪」に戸惑うスピカ。最終戦で名乗って以来「性悪」が定着してしまい。そう呼ばれることが多くなった。

 そして神々の会議でもそれでいいんじゃね? みたいな流れになってきているのは事実である。


「シシャモに会うの? 上にいると思うけど今日はペンネがいるからどうだろう? 会わせてもらえるかな? スピカさんが来たってことはあれでしょ?」

「ぐぅ……ペンネちゃんがいるのか。まずは了承を得なければ……」


 紅葉を急かすマオカが袖をぐいぐい引っ張っている。


「じゃあ頑張ってみて下さい。どうせ後でボク等も呼ばれるんだろうしまた後で」


 紅葉が手を振って去って行くのを手を振り返し見送ると重い足取りで階段を上がる。

 魔王の間と呼ばれる最上階まで階段を昇り廊下を歩いていると感じる殺気。前からペンネが優雅に歩いてくるのを見てスピカは気合いを入れるように自分の頬をパチパチと叩く。


「え~とペンネさんちょっと宜しいかしら?」

「スピカさんなんの用事でしょうか?」


 目の笑ってない笑顔で訪ねてくるペンネに必死に笑顔で返すスピカ。


「えっとね、お願いがあって……」

「お断りします」


 殺気のこもった笑顔で威圧するペンネにたじろぐが必死に繕った笑顔を見せスピカは立ち向かう。


「そのまずはペンネさんに許可をもらおうと思って来たんだけどダメかな? ほら、やっぱり主であるシシャモに直接話す前にこうなんだ、パートナーのペンネさんに話を通すのが筋じゃない?」


 ペンネの雰囲気が少し和らぐのを感じスピカは畳み掛ける。


「最近ペンネさん綺麗になりましたよね。やっぱりシシャモとこうね、過ごした時間が長いからですかねぇ。それでここいらでちょっと刺激的な日常をどうかなーって。ほら例えば冒険とか……ねっ?」


 ペンネが腕を組み考えていると魔王の間の大きな扉が開く。


「なんにゃ、スピカ声が大きいにゃ。お陰で目が覚めたにゃ」


 目を擦りながらパジャマ姿で大きな枕を引きずりながら現れるシシャモに魔王の威厳は一切感じられない。


「あ~シシャモ。スピカがね、またどっかの世界に行けって言ってるんだけどどうしよう?」


 眠そうなシシャモの首に腕を絡め甘えた声を出すペンネの姿にスピカは目眩がするが踏ん張って立てていたのはお仕事の為故だろうか。


「まあスピカが来たらどっかへ行って魔王とか倒してーって言うに決まってるにゃ。あれからもう2世界跨いだせいであたし達6人は既にレベル400にゃ」


 シシャモは大きなあくびをして目に涙を溜め話を続ける。


「お陰であたしらはここを含む4世界で極悪非道な魔王にゃ。まあ正攻法で攻めるより侵略してやるーって突っ込んで向かってくるもの全て蹴散らし目標を殲滅した方が早いって考えた結果ではあるんだけどにゃ」

「え、ええ魔王らしい考えで、しかも何気に被害が少ないのよねそのやり方。神サイドしてはちょっと複雑だけどね……」


 大きく延びをしたシシャモが今だ引っ付ペンネに告げる。


「ペンネ。燕、紅葉、バト、ポムを呼ぶにゃ。あと、留守にするからルイとビアシンケン、グラープに連絡してほしいにゃ」

「任せて♪」


 ペンネが城の上空に向かって飛んで行く。


「それじゃあ、行ってくれるの?」

「とっと終わらしてくるにゃ。ところで次の世界はどんなとこにゃ?」

「えーとねなんか巨大合体ロボットが一般家庭にも普及した世界だって」

「にゃんにゃそれ? バトと窓際が喜びそうな世界にゃ」


 2人が話していると町のあちこちで花火が上がり始める。シシャモ島では魔王シシャモが異世界に行くと決まったらお祭り騒ぎになる風習が出来上がっていた。


「それじゃあみんな集まったら転移頼むにゃ。鼻血出すにゃよ、また死にかけるにゃ」

「うっ、古傷抉るわね。流石魔王鬼畜ネコ。昼寝しすぎで性格まで腐ったんじゃない」


「にゃにー!」

「なによー!」


 魔王と女神の喧嘩は今日も仲良く行われ、これからも魔王シシャモの世界を救う? 異世界転移は続いていくのだった。




【完にゃ!】









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