その16 魔王シシャモによる魔王討伐にゃ!

「話は終わったかな?」


 ブラス王がスピカの宣言を受け楽しそうな表情で両手に光る白と黒の光を輝かせ構える。


「あいつちゃんと待ってくれるなんて良い魔王にゃ」


 シシャモがブラス王を見て感心するように頷いている。


「じゃあいくにゃ! スピカ、まずはバトを連れて燕とポムにゃ!」

「えっ! はい? はいはい」


 突然のことに慌てるスピカがバトの手を握ると稲妻と共に消える。

 転移先で戦うペンネ達に合流するとバトが参戦。バトがペンネに説明すると燕とポムがやってくる。


「スピカさん! こっちの障壁が出来たら紅葉さんを送ります。燕さんを戻して」

「え? あ、はい」


 燕とポムを送る。ポムによりシシャモが回復される。その間燕が連続で攻撃を繰り出しブラス王を押さえている。


「回復終了っとじゃあいくぜえ!」


 ポムが銃弾をばらまき精霊を呼び出す。


「いやちょっと待ってこれ以上人員増やさないで!」


 スピカの意見は通らない。


「スピカ燕とシルフィードをあっちに、紅葉をここへ連れてくるにゃ!」

「はい、えーと燕とシルフィードね」


 スピカが稲妻を散らし消え2人を送る。


「紅葉さんをお願いします。そしてポムさんを戻して」

「は、はい!」


 紅葉をシシャモの元へ、ポムをペンネの元へ。


「バトにゃ! HPが知りたいにゃ」

「紅葉さん戻して」


「フェンリルと燕交代にゃ」

「ポムさん戻してそれとイフリートも」


「紅葉にゃ!」

「ウンディーネ! ポム!」


「さっきなんていったけにゃ?」

「あれ? ウンディーネと……」


「イフリートにゃ!」

「燕!」


「違うにゃー!」

「バトです!」


「ペンネにゃ!」

「シシャモ!」


「ちょっと急ぐにゃ!」

「ポムさんまだです?」


「あ、あの……シシャモちょっと休んでいい? なんか鼻血出てきちゃったんだけど……」

「鼻血なんか気にしないにゃ! HPの調整が難しいからもうちょっと頑張れにゃ!」

「うん頑張る」


 スピカは鼻血を垂らしたまま転移を続ける。


「シシャモ! 窓際から連絡あったぜよ。スピカを寄越して取りに行って欲しいがよ」

「了解にゃ! スピカ窓際のところに行ってアイテム受け取って欲しいにゃ!」

「は、はひ」


 シシャモの指示でスピカは窓際の元へと飛ぶ。


「す、すいません、シシャモに頼まれてやって来たんですけど」

「ああ、はいはいってずいぶんと疲れていますね。あ~あ鼻血出てますよ」


 出迎えてくれた麻帆が肩で息をするスピカを見てお茶を持ってきてくれる。


「あ、お気遣いどうもです。あぁ鼻まで拭いてくれるなんてなんていい人なんですか……うっうう」


 麻帆に鼻血を拭いてもらいその優しさに泣き出すスピカ。


「ああ、スピカさんこれみんなに届けてくれる。6人分作るのに時間かかってしまってね。ん? なにかあったの?」


 泣いているスピカを見て窓際が不思議そうにする。


「辛いことあったんでしょうけど頑張ってください」

「う、うん頑張る」


 麻帆に背中を擦られさめざめと泣きながら立ち上がるとに鼻にティシュを詰めてもらいスピカは窓際から大きな箱を受けとると雷を放ち消える。


「神様も大変なんだね」

「ええ、どこの業界も大変なんですよ」


 スピカの消えた後を眺めしみじみと語る2人。



 ***



「し、シシャモこれ……」

「ご苦労様にゃ。これで止めさせるにゃ」


 スピカが差し出す箱からベルトを取り出すとシシャモが腰に巻く。


「ほうこれがベルトか」

「おお、悪の首領が変身するとかムネアツだね」


 燕と紅葉がベルトを巻く。その間にアースにいったスピカからベルトを渡されたペンネ達。


「シシャモとお揃い♪」

「ロボが変身とか燃えるわー」

「スゲーなこれ、ここ引っ張るのか?」


 ペンネ、バト、ポムが腰にベルトを巻く。そして全員が一斉にフロッピーディスクを差し込む。


「変身にゃ!」

「変身♪」

「変身」

「へんしーん!」

「変身や」

「変身だぜ!」


 目映い光を放ち6人が変身する。


「全員同じ色かにゃ……」


 そこには3人、3人の合計6人の赤い仮面の戦士達が立っていた。


「う~ん、シシャモはネコミミ、燕は額から小さな角が出てるのと刀を装備していると。ボクは眼帯あっちはどうなんだろ?」


 紅葉が説明している頃ペンネ達も色かぶりに困惑していた。


「バトはツインテール、ポムさんは口元にギザギザの歯のペイント、私は背中の羽となぜか縦ロールの毛が左右仮面から生えているんだね」

「でも全員赤とはな見分けつけにくいな」

「うちらはそうでもあっちには関係ないぜよ。ペンネこっちは調整に入ってギリギリを狙う。いけたらうちがあっちに行くき」


 バトの言葉でペンネ、ポムとフェンリル、シルフィードが動く。

 ペンネの黒い炎がアースの魔王ごと周囲を焼くとシルフィードが風を送り黒炎を渦にして舞いあげる。

 渦に巻かれ落ちてきたアースの魔王にポムとフェンリルの合体技がヒットし地面を激しく抉って落ちる。


「くははははは、効かぬお前達レベル200の攻撃など効かぬ。姿を変えた所で何が変わる」


 笑うアースの魔王の尻目にペンネ達にアダーラから声が届く。


「準備オッケー、3分間だよ。それ以上はこっちの事情で無理だからさ。じゃあいくよ!」


 6人に全員に発動するスキル変身限界突破。これにより6人が3分間レベル800になる。


 ポムとバトの拳がアースの魔王にめり込む。


「効いてんじゃあねえか」

「いける! ペンネ任せたぜよ」


 ペンネがアースの魔王を黒い稲妻の鳥籠に閉じ込め中を炎と風で満たし追加でダメージを与えながら動きを封じる。

 一方のシシャモ達は上限突破したことで紅葉の攻撃がブラス王を苦しめ始める。


「なんだこれは! 避けることが出来んだと! 先程までダメージがなかったのにこれはいったい」


 ブラス王に次々と刺さる剣や斧がHPを大きく削っていく。


「ふはははは! ボク最強!!」


 楽しそうに武器を投げる紅葉の横を燕が走り抜けると神速の抜刀を放つ。避けようとするブラス王の背後に壁が現れると退路を塞がれたブラス王を刀の峰が襲い壁との間に挟まれる。


「どうせ切れんのなら峰打でよかろう!」


 そのとき雷が落ちるとバトが叫ぶ。


「いけるシシャモ! いまや!!」


 シシャモが赤い稲妻を纏い全力で走り地面を抉り跳ねると蹴りの体制を取ると壁に挟まれたブラス王に突っ込み蹴りを体に食い込ませる。


「今にゃ! スピカ!!」

「あっとえーと、はい!」


 落雷が2人を包むと蹴られたままのブラス王とシシャモが一緒にアースに転移する。


「来たぞ! ペンネ」

「まかせて!!」


 ペンネが雷の鳥籠を収縮させシシャモの軌道上に投げる。雷が弾け中から現れたアースの魔王も巻き込んでシシャモの蹴りが炸裂する。


「ぐおおおおぉぉぉぉぉ──」


 叫ぶ2人の魔王。


「にゃ、もう一押しにゃ!!」


 シシャモの叫びに落雷が次々と落ち燕とバトが刺し、ペンネ、紅葉、ポムが全力で撃つ。


「ぬうううぅぅぅ、まだだああぁぁ」

「いい加減にしろにゃ! アダーラ! 全部のせにゃ!!」

「はいはーい!」


 アダーラの軽い返事と共に全員のスキルが一気に発動する。

 攻撃や防御、サポート関係なく発動するその様はスキルの嵐と呼ぶにふさわしい。そして6人は騒がしい。


「なんにゃ!? 天気予報とか混ざってるにゃ」

「可愛さが上がってる!?」

「中二病付与ってなにさ?」

「わらび餅回復アップ?」

「合体(予定)か見たかったや」

「丁寧語付与ってなんです?」


 窓際のパワードスーツとスキルによって引き起こされるレベル800が放つ暴力的な力と他のスキル発動の嵐に加え皆の持つ理不尽なまでの科学の粋を集約した最新鋭の武器。

 全てを破壊するその力によってブラス王とアースの魔王はまとめて宇宙空間まで飛ばされ小さな超新星爆発を起こす。


「終わったにゃーーーー!!!!」


 変身が解けた6人が地面に仰向けに倒れる。これが2世界を跨いだ魔王が討伐された瞬間であった。


「鼻血が……止まんない」


 スピカは静かに倒れる。

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