その8 鍛えた甲斐があったってもんにゃよルイ!

 勢いよくドラゴニュート達が攻めてきて次々と兵士たちがやられていく。

 魔界大陸でも奥の方で勢力を持っていたドラゴニュート族は平均レベルが80。強さも然ることながら連携も素晴らしく攻守共に隙がない。


 そんな劣勢をひっくり返そうと現れた血異闍薬DXを飲んだロルフ。

 雷を身に纏い振られる剣を槌が受け止める。


「なんだガキんちょ! 俺を誰か知っているのか」

「知るわけないのだ」


 お互いの武器を振り抜き距離を取る。


「生意気なガキだ。俺はジガンテスカ王国 騎士団総括 ロルフ・バルトロッツィ 『閃雷のロルフ』と呼ばれている」

「おお! お前が大将か。余は孤高の魔王 ルイーサ・ヒューブナーなのだ!」


 ロルフがルイを見てバカにしたように笑う。


「お前が魔王? なんだ魔王って誰でもなれんのかよ」

「そうなのだ。誰でも名乗れるのだ。お前のような間抜け面でも名乗って大丈夫なのだ」

「あぁん?」


 その言い方にキレるロルフにルイは槌を向け挑発する。


「魔王を名乗ってからが大変なのだ。間抜けな魔王どもを討伐し攻め来る者を蹴散らさねばならないのだ。お前にそれが出来るとは思えないのだ」

「クソガキがぁ!!」


 剣と槌が激しくぶつかり合い電撃を散らしていく。

 ロルフの放つ剣を正面から受けることなく槌で軽く払い流れを反らしたりして受け流す。

 ルイの反撃を軽々と受け止めるロルフだが今のこの状況が面白くない。


「なんだお前、俺はレベル140だぞ。レベル差は相当あるはずだ。それに何で剣を受けたときに起こる雷撃追加ダメージが入らねえ」

「余のレベルは100なのだ。雷撃が効かぬのは秘密なのだ」

「くそっ面白くねえ」


 ロルフの振るう剣を避け槌を顔面に向け振るうが受け止められる。

 ロルフが余裕の表情を見せようとしたとき槌から手を離していたルイの蹴りが顔面にヒットする。

 その隙を逃さずルイ地面に落ちていく槌をキャッチし下から上に振り上げる。


『必殺 龍神雲りゅうじんうん


 顎を捉えた槌の攻撃に宙に吹き飛ばされるロルフ。


「お前はレベル140といっても弱いのだ。姉上達による修行に比べればなんてことないのだ」


 地面に転がったロルフが素早く立ち上がると口を切って出た血を拭う。

 レベル差があるので大きなダメージは受けていないが蓄積されていけばバカにはならない。


「お前は知っておるか、姉上たちの地獄の修行を! 出掛けていた紅葉様以外の5人と戦う恐怖を!?」


 ルイが何かを思い出したのか身震いをする。


「知るかよそんなの!」


 ロルフが振り下ろす剣は常人では捉えられないがルイは先に動き出し難なく避けてみせるとそのまま槌を振り打撃を与えロルフとの距離をとる。


「見えない刀を避けさせられ鉄の弾が飛び、全属性の魔法が襲いその隙間をビームとかが舞い、どんな防御も砕く蹴りと突きに襲われた事があるのか? 死ぬのだ! 何度も死が見えたのだ!」


 ブルブル震え始めるルイにドラゴニュート達が集まり励ましの言葉をかける。


「なんだこのふざけた野郎は」


 ロッソは剣を構え力を溜める。剣に雷が集まり始まるとニヤリとロルフが笑う。


「俺の最強の技で死ねよ!」


 そんなロルフの前に5人のドラゴニュートが横一列に並び同時に槍を突き出す。それを構えたまま後ろに飛んで避けたところを矢が飛んでくる。

 更に魔法も四方から放たれロルフにヒットしダメージこそほとんど無いが技の集中を妨害する。


 ルイが飛び上がると槌を振りかぶって空中で体を反らし勢いをつけ槌を振り下ろすとぐるぐる回りながら突っ込んでくる。


『必殺 龍輪転りゅうりんてん


 勢いのついた回転する槌は何度もロルフにヒットし最後に槌を全力で振り下ろす。

 流石にロルフの技の構えは解かれてしまい後ろによろける。


「余は『孤高』を名乗っておるが決して『孤独』ではないのだ! 孤高の志を持ち生きる余と仲間を差す言葉なのだ!」


 ドラゴニュート達がそれぞれの得意武器で次々と攻撃を繰り出してはルイが大きい一撃を放っていく。


「流石に固いけどもう限界が近そうなのだ」


『必殺 姉上直伝キックなのだ』


 ルイが槌を振りかぶって投げる。回転しながら飛ぶ槌がロルフにヒットした時には既にルイが蹴りの体勢で迫り槌の柄を蹴って槌を更に押し込む。


「まだまだなのだ!」


 ルイが柄を両足で挟むと体をひねり槌と一緒に高速で回転を始める。

 ドリルのようになったその回転を受けダメージが蓄積していくロルフは焦る。


「なんとかしねえとこのままじゃあ」


 焦るロルフに対し勢いを増すルイは回転を止め槌を握ると時計回りに回って槌を振る。

 一撃加え反動で返ってきたところを間髪入れず再び槌を打ち込む。

 何度も何度も打ち込まれる槌に一方的にやられるロルフ。


「お前はただのレベル140なのだ。ただ数字が大きいだけで余を倒せると思わないことなのだ!」


 ルイが大きく振りかぶる槌の横側が4分割され一回り大きく開くと前方から円状のビームのリングが現れ後方からは推進用のジェット噴射口がリング状に展開される。


「姉上から譲り受けたこの化学兵器とやらを受けてみるがいいのだ!」


『必殺 ドラゴンリングインパクト』


 槌による打撃とビームによる斬撃を同時に行いかつジェット噴射による威力の増加による攻撃はロルフを大きく円上に切り裂き粉砕する。

 窓際の開発したビームハンマーという名前の武器はルイによって「つっちー」と呼ばれ愛用されている。


「ふははははははは(棒読み) 余の勝ちなのだ!!」


 ルイの雄叫びが戦場にこだまする。

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